読解能力向上と日本理解を促進するための中上級教材の開発と実践

読解能力向上と日本理解を促進するための中上級教材の開発と実践
〜異文化間リテラシーの育成をめざして〜
Development and Practice: Intermediate-Advanced Reading Materials to Improve
Reading Skills and to Enhance the Understanding of Japan ~Advancing Cross-cultural
Literacy ~
石川 智 ( ボストン大学) SATORU ISHIKAWA (BOSTON UNIVERSITY)
初級レベルでの外国語学習の中心は会話能力の向上に向けられることが多いが、中上級レベルに進むに従い、学習内容の中心は
会話から読解に移行する。読解能力を養うためには、読解のストラテジーの指導を含んだ精読、速読、多読などの多岐に渡る指
導が望ましいと考えられるが(梅村 2003、上村 2009)、実際には授業時間の制約などにより、授業では教科書などの読み物を
使用した精読による読解指導が中心となり、速読や多読などの指導を積極的に取り入れる状況にないというのが現状であろう。
また一方で、最近の外国語教育は Contents Based Instruction など、授業で扱う内容がこれまで以上に重要視されるようになり、
学習者の知的興味を刺激しつつ外国語の習得を目指すアプローチが注目を浴びている(渡辺 2011)。更に、ACTFL のガイドライ
ンでも言語能力が高くなるにつれ、幅広い分野(学術・文芸関係など)の話題について理解及び発話できる能力が求められてお
り、それらの語彙やコンテンツを教える必要性も示唆されている(筒井 2015)。また、これらの知識は異文化間リテラシー1を
育成するためには必要であるとも考えられる。けれども教科書内の読み物だけでは、幅広い分野を網羅することは難しく、また
現在コンテツを重視しつつ精読・速読・多読用など様々な読み方に使用できる教材も数少ないという現状がある。
今回の報告では、これらの読解指導の問題点の踏まえた上で行った上級レベルでの、1)コンテンツを重視した日本の様々な分
野及び歴史上の著名・有名人を扱った読解教材の開発、2)読解能力の向上と自律学習を促すために学習者に負担にならない形
で行った継続的な読解指導について報告する。