微分積分学II 第5回目レポート課題解答例

微分積分学 II 第 5 回目レポート課題 解答例
2015 年 11 月 9 日 出題
5-1
(a) 関数 f の y に関する偏導関数は
∂f
(x, y) = −2x2 cos y sin y − 2 cos(2y)
∂y
であり,点 (1, 0) を代入することで
∂f
(1, 0) = −2 ̸= 0
∂y
を得る.よって,陰関数定理より,1 を含む開区間で定義された関数 y = φ(x) が存在して,φ(1) = 0
かつ f (x, φ(x)) = 0 を満たす.
具体的な形を求めるためには,
f (x, y) = x2 cos2 y − sin(2y) − 1 = 0
を y について解けばよい.式変形をすることで
1 + sin(2y)
cos2 y
1
sin y
=
+2
cos2 y
cos y
x2 =
= 1 + 2 tan y + tan2 y = (1 + tan y)
2
を得る.これより
1 + tan y = ±x
となるが,y = 0 のときに x = 1 となるのは正の符号の方である.よって,求める陰関数 φ(x) と
して以下を得る.
y = φ(x) = tan−1 (x − 1)
∗ tan−1 は tan の逆関数.逆数ではない.
(b) 関数 f の x に関する偏導関数の (1, 0) における値は,
!
∂f
!
(1, 0) = 2x cos2 y !
=2
∂x
(x,y)=(1,0)
である.一方,y に関する偏導関数の (1, 0) における値は (a) で既に求めている.以上より,
∂f
(1, 0)
2
φ′ (1) = − ∂x
=−
= 1
∂f
−2
(1, 0)
∂y
を得る.なお,具体的な φ の形に基づいて計算すれば,逆関数の微分法より
!
dφ
!
(1) = cos2 (tan−1 (x − 1))!
= cos2 (0) = 1
dx
x=1
となり,当然一致する.
1
5-2
(a) 不等式 (∗) に (x, y) = (1, 0) を代入すると,
a≥0
を得る.(1, 0) は (0, 0) ではないため,等式が成り立ってはいけない.よって,A が正定行列であ
れば,a > 0 でなければならない.
!
(b) (∗′ ) 式の左辺を平方完成すれば
b
c
b
b2
b2
c
x2 + 2 xy + y 2 = x2 + 2 xy + 2 y 2 − 2 y 2 + y 2
a
a
a
a
a
a
!
"2
b
ac − b2 2
= x+ y +
y
a
a2
となる.今,(∗′ ) 式が成り立ち,等号成立は (x, y) = (0, 0) に限られると仮定する.任意に選んだ
y ̸= 0 に対して x = −by/a とすると,平方完成の式より
ac − b2 2
y > 0 ⇐⇒ ac − b2 > 0
a2
を得る.逆に ac − b2 > 0 を仮定すると,平方完成の式より,(∗′ ) 式が成り立ち,等号成立は
b
x=− y
a
かつ
y=0
の場合に限られることが分かる.つまり,等号成立のためには (x, y) = (0, 0) でなければならな
い.以上より,a > 0 のもとで,(∗′ ) が成り立ち,等号成立が (x, y) = (0, 0) に限られるための必
要十分条件は,ac − b2 > 0 となることである.
!
(c) 行列 A が負定行列となる必要十分条件は,−A が正定行列となる必要十分条件と等しい.行
列 −A に Sylvester の判定条件を適用すると
−a > 0,
(−a)(−c) − (−b)(−b) = ac − b2 > 0
を得る.つまり,以下が成り立つ.
A が負定行列 ⇐⇒ a < 0 かつ ac − b2 > 0
なお,A が準正定行列でも準負定行列でもない場合,
%
&% &
#
$ a b
x
= ax2 + 2bxy + cy 2
x y
b c
y
の値は (x, y) の値によって正になったり負になったりする.そのような行列は,符号が定まらない
と言う意味で不定であると言う.例えば,a = 1, b = 0, c = −1 とすれば,(x, y) = (1, 0) に対して
ax2 + 2bxy + cy 2 = 1 > 0 であり,(x, y) = (0, 1) に対して,ax2 + 2bxy + cy 2 = −1 < 0 となる.
2