C−36 不溶性陽極を用いる 硫酸銅めっきプロセスの開発 機械金属部金属表面処理系 ○森河 西村 務、中出卓男、左藤眞市、 崇、横井昌幸 1.はじめに 酸 性 硫 酸 銅 め っ き で は 、め っ き 液 中 に 1 価 の 銅 イ オ ン が 含 ま れ る と 、め っ き 皮 膜 の 析 出 に 悪 影 響 を 及 ぼ す と と も に 陽 極 上 で の 塩 化 銅( Ⅰ )形 成 に よ る 不 動 態 化 を 引 き 起 こ す 。こ れ を 防 止 す る た め に 、ラ イ ン で は 陽 極 と し て 含 リ ン 銅 を 用 い る とともに空気攪拌が行われている。このような状況では、銅陽極の溶解効率は 100% を 越 え 、液 中 の 銅 イ オ ン 濃 度 は 高 く な る の で 、定 期 的 に め っ き 廃 浴 が 生 成 す る 。ま た 、含 リ ン 銅 陽 極 の 残 査 な ど の 一 部 は 、め っ き 液 中 を 浮 遊 し 、 「ピット」 や「 ざ ら 」な ど の め っ き 欠 陥 の 原 因 に な っ た り 、ろ 過 フ ィ ル タ ー や ア ノ ー ド バ ッ クの目詰まりを生じさせるなどの問題も発生させている。 本 研 究 で は 、上 記 の 問 題 点 を 改 善 す る た め に 、硫 酸 銅 め っ き に イ オ ン 交 換 膜 プ ロ セ ス を 適 用 し 、可 溶 性 銅 陽 極 を 使 用 し な い め っ き シ ス テ ム を 開 発 し た の で 、こ れ を 紹 介 す る 。イ オ ン 交 換 膜 を 導 入 し た 銅 め っ き プ ロ セ ス と 従 来 の プ ロ セ ス と の 相違は、1)イオン交換膜付陽極室を導入してめっき液と陽極を分離すること、 2 )陽 極 に 酸 化 イ リ ジ ウ ム 系 の 不 溶 性 電 極 を 採 用 す る こ と 、3 )め っ き 液 へ の 銅 補給源としては酸化銅(Ⅱ)を使用することなどである。 2 .実 験 方 法 め っ き 液 組 成 は 硫 酸 銅 228g/L、硫 酸 58g/L、塩 化 物 イ オ ン 濃 度 60ppm、添 加 剤 適 量 と し 、液 量 2 L で 行 っ た 。め っ き 装 置 は 、陽 極 室 と 陰 極 室 か ら な る 2 槽 構 造 の も の を 用 い た 。ア ノ ー ド 液 は 5% 硫 酸 と し た 。め っ き 素 地 と し て は 真 鍮 板( 10 ×6cm 2 ) を 用 い 、 電 流 密 度 は 10A/dm 2 と し た 。 ま た 、 め っ き 液 濃 度 を 管 理 す る た め に 、電 解 時 間 4 時 間 毎 に 基 板 を 取 り 替 え 、め っ き 付 着 量 に 応 じ た 酸 化 銅 を 適 宜 補 充 す る と と も に 、 め っ き 液 中 の 硫 酸 銅 濃 度 を EDTA 滴 定 法 で 硫 酸 濃 度 を 中 和 滴 定で、それぞれ定量した。 本 プ ロ セ ス で は 、め っ き 液 へ の 銅 補 給 源 と し て 酸 化 銅 を 使 用 す る た め 、酸 化 銅 中 の 不 純 物 の め っ き 液 中 へ の 蓄 積 が 起 こ る 。酸 化 銅 中 に は 塩 素 が 微 量 含 ま れ て い るため、その影響を把握する 必要がある。塩化物イオンの 酸化銅供給装置 めっき皮膜への影響としては、 − + ② 塩 化 物 イ オ ン 濃 度 10 ∼ 電源 2,000ppm に 調 整 し た め っ き 液 酸化銅溶解槽 を用い、めっき外観と硬さへ ①:陽極室 の影響を評価した。 ②:不溶性陽極 ろ過器 実用化実験としては、図1 ③ ③:イオン交換膜 ④ に示すめっきシステムを実め ④:被めっき物 ポンプ っきラインに導入して検討し ① た。実機試験条件としては、 図 1 新規銅めっきシステム模式図 め っ き 液 量 1,000L、液 温 40℃ で 、約 1 時 間 間 隔 で 銅 め っ き 品 物( 電 流 密 度 15A/dm 2 ) が連続して製造されるラインで行っ た。 300 250 濃度(g/L) 濃度(g/L) 3 .結 果 と 考 察 200 硫酸銅 イオン交換膜プロセスを用いて連 150 硫酸 100 続めっき実験した場合の液組成の経 50 時 変 化 を 図 2 に 示 す 。図 に 示 す よ う に 、 0 めっき析出量に応じた酸化銅の補給 0 10 20 30 40 50 を 行 う こ と に よ っ て 、め っ き 液 中 の 硫 経過時間(hrs) 酸銅ならびに硫酸濃度を一定に保つ こ と が で き た 。な お 、補 給 用 酸 化 銅 は 図 2 めっき液 組 成 経 時 変 化 撹拌中に投入すると1分間以内に溶 表 1 塩 化 物 イオンの影 響 試 験 結 果 解できた。 表1にめっき液中の塩化物イオン めっき外観 めっき硬さ(Hv) Cl 濃度 濃度によるめっき外観ならびに硬さ 10 こぶ状ピット・無光沢 測定不能 30 こぶ状ピット・光沢 120∼220 へ の 影 響 を 示 す 。塩 化 物 濃 度 30ppm 以 40∼1,000 良好(ザラツキ・ピットなし) 200 下 お よ び 1,200ppm 以 上 で は 、 め っ き 1200 無光沢 185 外 観 に 悪 影 響 が 見 ら れ た が 、 40 ∼ 2000 無光沢 180 1,000ppm の 広 い 濃 度 範 囲 で 良 好 な め っ き が 得 ら れ る こ と が わ か っ た 。通 常 300 の硫酸銅めっき浴においては高い塩 250 化 物 イ オ ン 濃 度 は 、可 溶 性 銅 陽 極 の 不 200 動 態 化 を 起 こ す が 、イ オ ン 交 換 膜 プ ロ 硫酸銅 150 セ ス で は 、こ の よ う な 現 象 は な く 、塩 硫酸 100 化物イオン濃度の管理幅を大幅に緩 50 和できることもわかった。 実機におけるめっき液組成の経時 0 3800 4000 4200 4400 4600 4800 変 化 を 図 3 に 示 す 。濃 度 の 経 時 変 化 に 経過時間(hrs) は 、多 少 の ば ら つ き が 見 ら れ る も の の 図 3 実 機 めっき液 組 成 経 時 変 化 液 組 成 は ほ ぼ 一 定 と な り 、本 プ ロ セ ス が実機レベルで問題ないことが確認できた。 4 .ま と め イ オ ン 交 換 膜 プ ロ セ ス を 硫 酸 銅 め っ き に 適 用 す る と 、ろ 過 フ ィ ル タ ー の 交 換 間 隔が長くなること、可溶性含リン銅陽極に見られたスマットが生成しないこと、 め っ き 皮 膜 の 外 観 や 硬 さ が 安 定 し た こ と 、め っ き の つ き ま わ り が 改 善 さ れ た こ と 、 補 給 用 添 加 剤 が 約 10% 削 減 で き た こ と な ど の メ リ ッ ト を 見 出 し た 。 本 プ ロ セ ス は 、め っ き 液 濃 度 の 安 定 化 、め っ き 皮 膜 品 質 の 向 上 、浴 管 理 の 軽 減 、ス ラ ッ ジ 減 量方法として有効であり、今後の展開が期待される。 謝 辞 : 本 件 研 究 は 、 平 成 15 年 度 大 阪 府 中 核 的 研 究 「 め っ き プ ロ セ ス の 高 度 化 に 関 す る 研 究 」の 一 部 で あ る 。研 究 に ご 協 力 頂 い た 関 係 企 業 各 位 に 感 謝 い た し ま す 。プ ロ セ ス 実 証 開 発 グ ル ー プ;大 阪 府 立 産 業 技 術 総 合 研 究 所 、 ( 有 )ウ ィ ン グ 、 ㈱ダイソー
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