原 子 力 防 災 ・ 危 機 管 理 部 門 原子力防災・リスク評価 シビアアクシデント解析 ・福島第一事故評価 ・プラント応答解析 【教員】 吉田 至孝 ・災害進展予測技術開発 ・原子力リスク評価 原子力プラントの安全性向上 1.研究概要、目指すところ 福島第一原子力発電所事故のプラント挙動に対する理解を深め、原子力災害時の事故進展予測技術・確率論 的リスク評価技術の研究を推進します。シビアアクシデント解析コードMAAPを用いて福島第一原子力発電所事 故のプラント応答を理解し、原子力プラントの安全性向上に貢献できるプロを育てます。 2.これまでの研究成果 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 0.7 0.8 格納容器ベント開始 0 20 40 60 80 TIME[hour] 0.6 0.5 100 0.4 0.3 RCIC停止 0.2 CV漏洩開始 (DW漏洩ケース) (WW漏洩ケース) DWスプ レイ開始 DWスプ レイ停止 0 120 福島第一1号機再現解析 CV破損 海水流入開始 (海水流入ケース) 0.1 原子炉容器破損 原子炉容器破損 DW圧力測定値 WW漏洩ケース SRV開放 DW漏洩ケース 海水流入ケース 0.7 ドライウェル圧力(MPa) D/W圧力観測値 S/C圧力観測値 解析結果(冷却材漏洩無) 解析結果(冷却材漏洩有) CVドライウェル圧力[MPa] 格納容器圧力[MPa-gage] 「原子力プラントのシビアアクシデント解析・リスク評価」 福島第一原子力発電所は全電源を喪失し、1号機から3号機が炉心溶融(メルトダウン) を起こしました。電源の喪失により観測計器類が機能せず、現場は決して人が立ち入るこ とができない高放射線区域になっていますので、事故進展には多くの未解明な点が残さ れています。福島第一原子力発電所1~3号機がシビアアクシデントに至り、大量の放射 性物質放出に至ったプロセスを解明するためには、限られた観測データを用いてプラント 挙動を総合的に推定・解析し、可能性のあるシナリオを見出しておき、今後、現場の状況 が確認されるに従い、絞り込んでいく必要があります。 シビアアクシデント解析は、原子力発電所の災害進展プロセスを紐解くツールとして有益 な情報を提供してくれます。米国EPRIで開発されたModular Accident Analysis Program (MAAP)は、シビアアクシデントのリスクを評価する確率論的リスク評価(Probabilistic Risk Assessment:PRA)のプラント挙動解析ツールとして開発され、過酷事故管理手段(アクシ デントマネジメント)の整備のために改良が加えられてきました。現在は、福島第一原子力 発電所事故を踏まえ、わが国の資金で更なる改良が加えられています。 福島第一原子力発電所事故のようなシビアアクシデントの再発防止と原子力技術の安 全性を一層向上させ、わが国の原子力発電プラントの安全性を世界最高水準に高めてい くには、PRAを通して原子力リスクを正しく理解することが求められています。 このような背景のもとに、次の研究を推進します。 「東京電力福島第一原子力発電所の再現解析と考察」 最新MAAPコードを用いて東京電力福島第一原子力発電所事故の再現解析を行い、 事故進展を推定・考察します。(以下、旧バージョンMAAPコードを用いた再現解析) 0 20 40 60 80 100 120 MAAP5(PWR) SRV開放 冷却材小漏洩発生 (小漏洩ケース) 0.6 CVベントライン開放 スプレイ作動 0.5 0.4 0.3 0.2 スプレイ停止 LOCA発生 (口径150cm2) 0.1 0 0 20 経過時間[h] 福島第一2号機再現解析 MAAP5(BWR) ドライウェル圧力 成層化ケース 小漏洩ケース 40 60 経過時間(hr) 80 100 福島第一3号機再現解析 MAAP5炉心溶融計算 3.研究のアピール点、今後の展望 原子力事故を解明する研究 ・福島第一原発事故の解析 ・事故進展の推定・考察 ・教訓の抽出と反映 原子力リスクを理解する研究 ・確率論的リスク評価 ・人的過誤の影響解析 ・アクシデントマネジメント評価 災害影響を予測する研究 ・シビアアクシデント挙動解析 ・放射性物質放出挙動解析 ・広域環境影響・海洋影響解析 志望学生へのメッセージ 東京電力福島第一原子力発電所事故は原子力産業に多大な影響を与えました。原子力技術の安全性を 一層向上させていくには、事故の状況を正しく理解し、原子力発電プラントの安全性を世界最高水準に高 めていく必要があります。リスクを正しく認識し、社会の発展に貢献できる技術者の育成を目指します。
© Copyright 2024 ExpyDoc