強育論について - Miyamoto Mathematics

強育論1
「どうすれば子どもが賢くなるのか?」をずっと考え続けて来ました。
「問題が解ければ賢くなるのか?」
いいえ。それで賢くなるのなら,解けて当たり前の易しい問題だけ与えればいいことに
なります。そんな問題をいくら解いても賢くなるはずがありません。スポンジのダンベル
で筋トレをしても筋肉はつきません。それと同じです。
「説明が理解できれば賢くなるのか?」
いいえ。それで賢くなるのなら,こんな楽な仕事はありません。この仕事を2年くらい
真面目にやれば,どんな難しい問題でもわかりやすく説明できるようになります。懇切丁
寧な説明を受ければ,子どもたちはわかった気になるだけで,あとで自力で解こうとして
もほとんどの場合は解けません。また,解法を暗記して,答えを出せるようになっても,
それは学力にはなりません。時間がかかっても納得しながら前に進むことがとても大切な
のです。
「どうすれば子どもが賢くなるのか?」
2010年頃,結論を得ました。
「考え続けるから賢くなる。」
問題が解けても,解けなくてもどっちでもいいのです。
説明が理解できても,理解できなくてもどっちでもいいのです。
そのために必要なものは,いくら考えても飽きない面白い問題です。
算数の問題は4種類あります。易しくてつまらない問題,易しくて面白い問題,難しく
てつまらない問題,難しくて面白い問題。私は面白い問題しか作りませんし,面白い問題
しか子どもに与えません。問題が面白ければ子どもたちはいくらでも考え続けることがで
きます。
強育論2
「どこで学力差がつくのか?」
駆け出しの頃は家庭学習で学力差がつくと思っていました。同じ授業を受け,同じ教材
を渡しているのだから,授業中に差がつくわけがない。この頃,私は大きな声で一所懸命
に説明していました。
子どもを見守る余裕が生まれると,授業中に大きな差がついていることに気付きました
。全力で問題と格闘する子もいれば,何もせずにぼんやりしている子もいます。授業中に
集中しない子が家庭学習で集中するはずがありません。
でも,本当に差がついているのは,授業中ではありませんでした。
「どこで学力差がつくのか?」
2009年に結論を得ました。
「学力差は睡眠中につく。」
人間の脳には意識の領域と無意識の領域があり,無意識の領域の方が圧倒的に大きく,
意識の領域は氷山の一角に乗っかっている雪玉くらいしかないと言われています。起きて
いる間は無意識の領域にアクセスすることはできず,雪玉くらいの意識の領域でしか作業
ができません。起きている時間だけどんなに頑張っても大きな仕事を成し遂げることはで
きません。2009年に「賢くなる算数」全96冊を作り始めました。1冊目の文章題は
簡単に作れましたが,2冊目の数の性質で大きくつまずきました。このとき,教室に丸4
日間籠もりましたが,1文字も書けませんでした。諦めて自宅に帰り,思い切り寝ました
。翌日,教室に行って作業を再開すると,前日までの大苦戦がうそのように問題も解説も
すらすらと出て来たのです。このときに確信しました。「寝る間を惜しんで悩むのではな
く,悩む間を惜しんで寝るのが正解だ!」これはすべての問題に当てはまることではあり
ませんが,算数の学習に関しては間違いなく当てはまります。算数の学習に必要な知識は
たし算,ひき算,かけ算,わり算,整数,分数,小数だけです。あとは組み合わせ方を考
えるだけで,この考える部分を人に教わっても無意味です。算数が得意な子は例外なく算
数が大好きです。彼らは眠っている間に無意識の領域で,全力で算数の問題と戦っていま
す。算数が得意な子になってほしければ,面白い問題だけを与えて,気長に見守るしかあ
りません。