微生物学から見たおむすび

微生物学から見たおむすび
朝、誰かにおむすびを握ってもらったり、握ったり…そ
んなおむすびを昼ご飯に美味しくいただきたい!!でも、
おむすびを美味しくいただけなくなる原因があるんです。
それは、私たちの最も身近に存在する人とは切っても切
れないお友達の微生物さんです。なので、今回私は微生
物から嫌われるおむすびの握り方や保存性の向上方法に
ついて書きたいと思います。
まず、微生物が増殖するために必要な条件を大まかに
あげると、
・温度
・湿度
・栄養成分
・時間
・おむすびに微生物が付着した量
が大きく関係してきます。それらの条件を踏まえておむ
すびを見直すと、栄養、温度、湿度共に揃った微生物に
とってはまさに最高の生活場所に他ならないのです。し
かし、それでは困るので、微生物に嫌われるおむすびを
作っていきましょう。
微生物に嫌われよう!微生物のいないおむすびメイキング♪
まず人間の手には、1 cm2当たりの
面積に4万個以上も微生物が付着して
います。付着している微生物すべて
がおむすびに対して害があるわけで
はなく、人間にとって必要な微生物
も存在しているのですが、それらの
中には大腸菌や黄色ブドウ球菌と
いった人間に害をなす微生物も存在
しています。これらの害をなす微生
物が増殖しやすい温度は約35℃付近
であるため、おむすびを握る時は炊
き立ての熱いご飯が良いでしょう。
しかし、その温度で微生物が全て死
滅するわけではなく、握った後に温
度が下がってしまうと、生き残って
いる微生物が増殖してしまいます。
なので、おむすびへの微生物の付
着を防ぐために、直接手で握るの
もやめた方が良いでしょう。ポリ
手袋等をはめておむすびを握るこ
とにより、手の微生物とご飯の接
触を防ぐことができます。しかし、
熱いご飯を、手袋をはめて握って
も、空気中に存在する微生物がお
むすびへ付着することを防ぐこと
は非常に困難です。そのため、付
着した微生物の増殖を防ぐために、
おむすびの具として抗菌力の高い
梅干しや、酢飯を利用する。また、
おむすびと空気の接触を最小限に
するために、なるべく強い力でお
むすびを握る必要があります。
これらの条件を満たしても、もう一
つ課題があります。おむすびは握っ
たその場ですぐに食べるよりも、屋
外や出先といったおむすびを握った
あと、ある程度時間が経過してから
食べる場合が多いです 。そのため
握ったおむすびを包装して外気との
接触をなるべく防がなければなりま
せん。包装する場合はおむすびを
握った直後が一番効果的であると思
います。その理由としては、ごはん
が熱いうちにおむすびをラップで包
装すると、ラップの内側はおむすび
の熱によってある程度殺菌されるた
め殺菌空間を作ることができます。
しかしそれでは持ち運んでいるとき
の振動や衝撃でラップがはがれたり、
隙間が出来てしまう可能性があるた
め、ラップで二重に包装したほうが
いいでしょう。
以上の事より、微生物に嫌われる
おむすびを握るためには、炊飯直後
のご飯に酢を混ぜ込んだものを、手
袋をして強い力で握り、握った直後
にラップで二重に包装するのが一番
だと思われます。
しかしそれだけでは安心できない
人もたくさんいると思われます。な
ので、コスト度外視で更に保存性の
高いおむすびを握る場合も考える必
要があるでしょう。まず、おむすび
を握る前日から、おむすびを握る場
所である無菌室への入室準備を始め
なければなりません。無菌室に入室
するためには前日に薬浴、当日には
滅菌シャワーによる全身の洗浄が徹
底されています 。お米の炊飯には
オートクレーブ(121℃2気圧)を使
用することが必要です。そしてその
炊飯した米を無菌室もしくは無菌状
態の作業場所で握ることが必須条件
になります。もちろん無塵ガウン、
手袋、マスク、専用靴の着用は必須
です。その条件をクリアできたら今
度はおむすびの具や握り方を検討し
ましょう。
まず、おむすびの具として
は食用有機酸の中で最も抗菌
性の高い酢酸を使った酢飯で
おむすびを握ると、酢飯では
ないおむすびよりも上昇しま
す。具には抗菌作用の強いク
エン酸を多く含む梅干し、も
しくはからし油を含むワサビ
が適当ではないかと思われま
す。おむすびを握る際には空
気との接触面積を最小限にす
るため、全力で一分の隙間も
ないぐらいの強い力で握る必
要があります。もちろんおむ
すびですので無菌室外での飲
食を想定しなければなりませ
ん。外部へと持ち運ぶ際はま
ず、おむすびの外部を包装す
る必要があります。この包装
にはレトルトパウチによる真
空包装と加圧加熱殺菌を組み
合わせるのが理想だと思われ
ます。しかし、たとえ無菌室
であっても完全に微生物が除
去・殺滅されているわけでは
なく、規定されている基準値
以下の割合で微生物の存在が
確認されています。そのため
完全に無菌であるとは言えま
せん。そのため、更にコスト
度外視で、宇宙空間でおむす
びを握りましょう。宇宙空間
では現在のところ定義上の微
生物は確認されていないため、
確実に微生物に嫌われるおむ
すびを握ることができるで
しょう。
無菌のおむすびを作るには、
ここまでのことをしないと
いけないなんて・・・!
微生物の生命力って
すごい!
本記事の担当:テイラー(九州大学 )