醤油多糖類SPSの抗アレルギー作用

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醤油多糖類SPSの抗アレルギー作用
ヒガシマル醤油株式会社 研究所 醸造開発課 副課長
博士
(農学)
松
下
1.はじめに
裕
昭
2.アレルギーと免疫
発酵食品に欠かせない「麹」
,この
アレルギーは発症機構により,即時
麹を使った調味料「塩麹」が今,美容
型アレルギー(Ⅰ型)から遅延型アレ
と健康に関心の高い人たちの間でブー
ルギー(Ⅳ型)
まで分類されているが,
ムになっている。塩麹を利用した様々
花粉症に代表されるⅠ型アレルギーの
なレシピが書籍や料理教室で公開さ
症例が急増している。このようなアレ
れ,福井県ではゆるキャラ「塩野コー
ルギー疾患の背景には遺伝的要因の他
ジ君」も考案されるなど,話題が尽き
に,密室型住宅の普及につれて増加し
ない。塩麹は,麹と塩と水を合わせて
たチリやダニなどのハウスダスト,戦
発酵熟成させたもので,その大きな魅力は麹の持つ
後大量に植林されたスギによるスギ花粉,工場や自
酵素の力である。麹の持つ1
0
0種以上もの酵素が,
動車からの大気汚染物質が急激に増えたことが挙げ
素材の旨味や甘味を生みだすため,塩の代わりに利
られる。また,1
9
8
9年Strachanに よ っ て 生 活 水 準
用するだけでコクやまろやかさといった美味しさが
や,衛生環境の向上による幼児期の感染症の減少が
付与され,塩分控えめに調理できる。加えて,塩麹
アレルギー疾患増加の原因ではないかとする衛生仮
に豊富に含まれるビタミンや乳酸菌といった美容と
説(hygiene hypothesis)が提唱されている6)。
Ⅰ型アレルギーの発症機構においては,花粉症に
健康に役立つ成分がブームに花を添えているよう
おける花粉や通年性アレルギーにおけるハウスダス
だ。
発酵食品の健康機能性に関する研究は数多く行わ
トのような抗原が体内に入ると,マクロファージや
れているが,中でも,
国民病ともいわれるアレルギー
樹状細胞はこれを貪食し,T細胞に抗原提示を行
疾患に対する研究が熱い。今や日本人の3人に1人
い,抗原特異的なTh2細胞が分化形成される(図
は何らかのアレルギー症状を発症しているといわ
1)
。Th2細胞はIL−4と呼ばれるサイトカインを産
れ,低年齢化も進む。アレルギーに対しては様々な
生し,これによってB細胞から抗原特異的なIgE抗
アプローチが試みられているが,治療が長期にわた
体が産生される。その後,IgE抗体はマスト細胞表
ることや,医薬品が抱える副作用が問題視されてい
面のレセプターに接着,マスト細胞上のIgE抗体に
る。そこで,日常摂取している食品中にアレルギー
抗原が接着すると,マスト細胞内から炎症性のヒス
に効果的な成分を見つけ出そうとする研究が広く行
タミン,ロイコトルエン等のメディエーターが放出
われ,とりわけ発酵食品に関する報告が多い。例を
される。これらのメディエーターは炎症反応を引き
1)
2)
3)
あげると,清酒 やしょうゆ諸味 ,すぐき漬 ,発
起こし,アレルギーが発症する。1
9
8
6年に,マウス
酵乳4,5)より単離された乳酸菌の細胞壁成分や菌体外
のT細胞がその産生するサイトカインの違いによっ
に産生する多糖類(Exopolysaccharide: EPS)に免
て2つのサブセット,Th1とTh2に分けられること
疫調節機能や抗アレルギー活性が報告されている。
が報告され,Th1細胞群は主にIFN-γ,TNF-βなど
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