宇宙で食べるおむすび 〜宇宙でおむすびを食べるには〜 「おむすび」これは、日本人なら誰しも幼いころから口にし ている日本食です。宇宙空間で活躍している日本人の宇宙飛 行士も、宇宙で「おむすび」が食べたいと思っているはず! みなさんが思う「宇宙食」は、パンやフリーズドライのもの が多いかもしれません。しかし、現代の宇宙食は、より普段 の味に近く・より美味しいものへと進化しています。それで は、宇宙ではどんなおむすびが食べられているのでしょう? 国際宇宙ステーションに滞在している宇宙飛行士は、宇宙 食と呼ばれる食べ物を食べて生活しています。彼らが食べて いるのは、レトルト食品や、水を加えて食べる加水食品 (スープ、ごはんなどのフリーズドライ食品)、半乾燥食品 (乾燥フルーツ、乾燥牛肉)、自然形態食(ナッツ、クッ キー)、生鮮食品(果物、野菜)など、200種類を超えてい ます。果物や野菜は、補給船が着いてすぐに食べなければな らず、宇宙用に作られた特殊な食事が主なものとなっていま す。「ごはん」が加水食品の中に入っていますが、ここに 「おむすび」も含まれています。これらは、ごはん(お米) を食べる日本人宇宙飛行士のために考えられた宇宙食で、 「宇宙日本食」と呼ばれています。そしてこれらはもちろん、 日本のメーカーが作っているのです。 加水食品の中でも、スープなどの液体は水やお湯を加えれ ば確かにスープになりそう…とイメージできるでしょう。け れど、お米に水を加えて食べるってどういうこと!?と思っ た人もいるかもしれません。ここに、宇宙で食べるおむすび のヒントが隠されています。宇宙に柔らかいままのお米を 持っていくことは衛生上難しく、そこで考えられたのが「ア ルファ米」というお米です。どんなお米なの?どう違うの? 「アルファ」というと、とてつもなく人の手によって改良さ れていそうなお米の名前なのですが、アルファ米という米の 品種ではなく、普段食べているお米を加工したお米のことを 指します。わたしたちは、普段生米を炊いてごはんやおむす びとして食べています。この時に食べているお米が服につい たり、お茶碗に残ったりした時、かぴかぴに乾燥しているの を見たことがあるでしょう。実は、アルファ米とはあのよう に炊いたお米を乾燥させたお米なのです。しかし、あのまま ではお米の成分である「でんぷん」の形が変わってしまうの で、炊いた状態の「でんぷん」を保ったまま乾燥させたもの が「アルファ米」として作られています。 このアルファ米を食べるには、水やお湯を加えて「乾燥状態」 から脱してあげればよいだけ!このお米を開発したのは日本の 企業で、宇宙食だけでなく災害時にも活躍しています。 アルファ米であるのと同時にもう1つ、宇宙用のお米には 「低アミロース米」という種類のお米が使われています。私た ちが普段食べているのは「うるち米」と分類されるお米で、コ シヒカリ、あきたこまちなどお馴染みの品種がこれに当たりま す。もう1つ私たちに身近なお米の分類に「もち米」というも のがあります。その名の通り、お餅を作る時に使うお米で粘り 気が強いのが特徴です。この「もち米」と「うるち米」の中間 にあたるのが、宇宙日本食で使われているお米「低アミロース 米」なのです。宇宙空間では味覚に変化が生じると言われてお り、うるち米よりも粘り気のあるお米を使うことで 、より 「米」の味や食感を味わえるようにと、このお米が使われてい ます。 さまざまな工夫が 成されている! 宇宙食おむすび 低アミロースで、かつアルファ米を使ったおむすびが、写真 の”Rice ball with salmon”=「鮭のおむすび」です。アルファ米 を使うと、お湯を加えて30分で宇宙でも暖かいおむすびが食べ られるのです。宇宙では、様々な国の宇宙飛行士が働いています が、彼らの食事を選ぶ際にもいくつかの基準があります。まず何 より大切なのが、「安全であること」。食中毒なんて起きたら大 変ですし、火事やガスが発生したり怪我をしたりしないよう配慮 されています。次に大切なのが、「美味しいこと」。初期の宇宙 飛行士は、とても美味しいとは言えない食事を取っていました。 現在の宇宙食には、より地上と同じような食事を、そして何より 美味しい食事を、ということが求められています。 もし宇宙に行くことがあったら…みなさんは宇宙で何を食べた いですか?日本に思いを馳せながら食べるおむすびは、一体どん な味がするのでしょう。 本記事の担当:にしゆか(九州大学)
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