5 パウリの原理 とフント則 パウリの原理とは 二つの電子があったときに、その両者が全く同じ量子数を んもつ波動関数で表されることがないと言う原理である。あるいは、2 つの電 子は全く同じ量子数を持つことはできない原理である。とても重要な原理で有 り、決して忘れてはいけない原理の一つである。 1s 軌道には、スピンを同じ にして二つの電子がいることができないと言い換えることもできる。 また、1s 軌道にはスピンを逆にして最大 2 つしか入ることができない。と言う ことにもなる。 5.1. 電子が区別できない。 He の中には電子が2個存在する。この2個の電子に A,B という色を付けるこ とができないのが、量子論の特徴である。すなわち、A は 1/2 のスピン B は-1/2 のスピンをもっているとはいえないのである。これを粒子の同等性をいう。二 つの電子があったときに、その電子は区別できない。その時に二つの粒子のそ れぞれの場所にある確率を r1, r 2 2 とし、2つの電子の波動関数を (r1, r 2) と おく。 区別できないと言うことは、交換しても確率は変わらないから、 (r1, r 2) 2 (r 2, r1) 2 となる。したがって、 (r1, r 2) (r 2, r1) ( 5.1-1) +を粒子の交換に対して、対称であり、-を反対称という。陽子、中性子、電子 は反対称である。 さて、二つの粒子が独立であるとしよう。確率はそれぞれの波動関数の積にな るから、 すると (r1, r 2) A r1 B r 2 となる。 このときに、 (r 2, r1) A r 2 B r1 も解である。そこで、この二つを組み合わ せ、反対称性をあらわすように、 1 (r1, r 2) A r1 B r 2 A r 2 B r1 2 ( 5.1-2) と書くことができる。(本当は2つの電子は独立ではないから、単純な積では かけないが、近似としてはかなりよいものになる。) さて、2つの電子は同じ状態(波動関数)を取ることができないと言った。こ れは、もし、両方の電子が A (r ) をとると、( 5.1-2)は 0 となり、存在しないこ とになる。すなわち、Pauli の原理は、電子が区別できず、その電子を交換する と波動関数が反対称になることに起因している。 5.2. 周期律 さて、電子を下からだんだん詰めていったものが原子の中の電子である。n=1 から次第に詰まっていく。1つの電子のエネルギーは、大きくは n によって決 まるが、若干ではあるものの、l によってもきまる。 すなわち、l の小さい方がよい。 1s 2s,2p 3s.3p.3d 4s,4p,4d,4f である。しかし、l が大きくなると、その上の s よりも不安定になることがあり、 3d,4s が逆転する。 したがって、 1s、2s,2p, 3s,3p, 4s,3d,4p, 5s,4d,5p,6s, 4f,5d,6p,7s,5f,6d となる。 s、p、d、fにはそれぞれ、2,6,10,14(2(2l+1))個はい る。すなわち、 1s には、2個 2s にも 2個 2p には、6 個 3s 2個 3p 6 4s に 2個 3d 10 という具合に、周期的に s やpが出現する。すなわち、電子の波動関数の形が 周期的に現れることを意味している。 n,l が同じで1つの電子のエネルギーが同じところではどういう風に詰まるので あろうか? 5.3. フントの規則 電子がどういうつまり方をするかを決める規則を Hund(フント)の規則と呼 ぶ。 波動関数の持つエネルギーが等しいときには、 (a) スピンの和が最大になる。 (b) 上の条件が満たされるときに、磁気量子数の和が最大になる。 この規則は電子間の相互作用により出てくる。 たとえば、B,C,N,O について考えてみよう。 このときに、n や l は同じである。Bは磁気量子数 1,スピン量子数 1/2 にはいる であろう。C では、スピンを逆向きにして、スピンの合計が 0 になるよりも、 磁気量子数のことなるところに入って、スピン量子数の合計が1になったほう がよい。さらに N でも同じスピンの向きではいる。この時,磁気量子数の合計 は 0 になる。O では、スピンが逆向きではいり、スピンの数が減っていく。 スピンが向きをそろえようとすることは記憶しておくと便利である。 このようにして、外側の電子がもつ波動関数は周期的にある現れることになる。 これが、周期律が生じる理由である。 図 5.3-1 周期表
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