展望台 ケビン メア 日本企業の戦略的な決断に期待 2014年4月に日本の従来の武器輸出三原 則が根本的に変更されて防衛装備移転三原 則になりました。新しい三原則の基本的な 概念は、もし平和貢献・国際協力の積極的な 推進に資して、日本の安全保障に資する場 合は防衛装備・技術の海外移転は認め得る ということです。日本の防衛産業にとって 大きな新しいビジネスチャンスになります。 これからの日本の防衛装備と技術の国際 貢献は、米国も含めて海外で高く期待され ています。日本の商品は品質、信頼性、技術 において非常に優れているという評価を受 けています。日本の防衛産業がこれから挑 戦しなければならないことは、この商業的 成功をどのように防衛産業へつないでいく かということです。どのように海外の期待 に答えられるのか? どのようにこのチャ ンスをうまく利用するのか? 2 防衛技術ジャーナル February 2016 防衛装備庁は、日本の防衛産業と技術の 発展を促進させることを含めて、さまざま 大切なのは、企業のリーダー達の戦略的決 断力です。 な任務があります。しかし最優先の任務は 自衛隊に優れた装備品と技術を効率よく提 国際市場に関して近い将来、一番成功する 供することです。これは必ずしも国産品を 可能性のあるところは部品等を作る二次・ 購入するということではありません。従っ 三次サプライヤーであるとよく思われてい て国際市場に進出するには、主に日本の防 ます。一般的にいえばそうであると思いま 衛産業自身がこれを遂行しなければなりま す。しかし豪州の潜水艦の機種選択で日本の せん。 メーカーが成功したらこの概念は急に変わ ります。日本の防衛装備輸出の将来は新しい 先ず防衛産業に携わる企業は物の見方、 次元になります。能力、品質、信頼性、生産 考え方を変えなければなりません。これま 能力の移転、そして防衛戦略の面から見れ では、ほとんど自衛隊や防衛省からの要請 ばもちろん、豪州は日本の潜水艦を選ぶべ を受けてからそれに対応してきました。あ きです。日本の防衛装備の輸出政策にとっ る程度、補助金も期待していました。国内市 て、これは戦略的な節目になっていますの 場が小さいので規模の経済性は低く、国際 で、是非成功させて欲しいと思います。 市場では価格競争が厳しい状況です。 さらに、防衛産業に携わる企業は、将来の これからの企業は、国際市場に対して独 ための研究開発に集中する必要があります。 自の戦略を築き、それと同時に価格競争力 例えば、長期的な話ですが第6世代の戦闘 を向上する必要があります。大手会社は一 機の共同開発が考えられます。繰り返しで 般商品に関しては国際市場で大変成功して すが、このような場合には企業幹部が企業 います。その商業上の教訓を防衛産業に生 の将来の方向を戦略的に決断し、それと同 かしていかなければなりません。会社幹部 時にそれを達成するために充分な投資の決 は、充分、防衛産業の面に投資する覚悟を示 断も不可欠であり、これからの企業のご努 す必要もあります。もう防衛省が会社の優 力に期待します。 先順位を決めるのを待つことも望ましくあ りません。 米国人、駐日米国大使館科学技術担当公使、 安全保障部長、在沖縄総領事、国務省日本部 防衛装備・技術市場は大変厳しい状況で 長を歴任、現在 NMV コンサルティング上 すので、日本の防衛産業ではある程度整理 級顧問。主な著書 「 : 決断できない日本」 (文 合併する必要があるかもしれません。一番 春新書) 3
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