2016年度大学入試センター試験(本試験)分析詳細

2016年度大学入試センター試験(本試験)分析詳細
■ベネッセ・駿台共催/データネット実行委員会
生物基礎
1.総評
【2016年度センター試験の特徴】
教科書に記載のない実験やグラフを題材とした考察問題が出題された。難易は昨年並
昨年同様、生物基礎の全範囲から幅広く出題され、各分野の正確な知識と理解が問われた。教科書に記載のない
実験やグラフを題材とした内容が、問題文で説明をしたうえで考察問題として出題されたが、基本的な知識問題
も出題されており、全体の難易は昨年並。
2.全体概況
【大問数・解答数】
大問数3は、昨年から変更なし。昨年16個であった解答数は17個に増加した。
【出題形式】
語句選択問題、組合せ選択問題を中心に出題された。昨年2設問出題された
「過不足なく含むもの」を選ぶ問題が、今年は第1問で1設問出題された。
【出題分野】
昨年同様、特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
【問題量】
昨年並。
【難易】
昨年並。
3.大問構成
大問
出題分野・大問名
配点
難易
備考(使用素材・テーマなど)
第1問
「生物の特徴および遺伝子とそ
のはたらき」
19点
標準
第2問
「生物の体内環境の維持」
16点
やや難
A 肝臓と腎臓のはたらき、尿生成
B 体液と恒常性
第3問
「生態と環境」
15点
やや難
A 世界のバイオーム
B 生態系とその保全
A 細胞小器官、原核生物の代謝
B 遺伝情報とタンパク質の合成
4.大問別分析
第1問「生物の特徴および遺伝子とそのはたらき」
●第1問では、「生物と遺伝子」の分野から、知識問題と考察問題が出題された。設問間の難易の差が大きく、
標準的な難易の問題が少なかったため、受験生間で大きな得点差はつきにくかったと考えられる。
●Aでは、生物の体内で起こる化学反応についての正確な知識と思考力を問う問題と、物質の構成成分について
の基本的な知識を問う問題が出題された。
●問1は、ミトコンドリアの構造とはたらきについて、正確な知識が求められる問題であった。正解となる選択
肢は比較的平易な内容であったが、誤りの選択肢の判断には、ミトコンドリアの内部の構造や代謝に関する
やや細かな知識が求められた。
●問2は、原核生物の遺伝子と酵素についての実験考察問題で、問題文を丁寧に読み取る必要があった。一遺伝
子一酵素説の内容が扱われており、生物基礎では取り扱わない内容を、問題文で与えられた情報をもとに考
察させる問題である。生物基礎のみを学んでいる受験生には見慣れない問題であったと考えられ、難しい。
●問3は、ATP、DNA、RNAのうち、リンを構成元素としてもつ物質を選択する問題であった。「過不足なく含む
もの」を選択する問題で、すべての物質を選択することに戸惑った受験生もいたであろう。
●Bは、遺伝情報とタンパク質の合成について、基本的な知識を問う問題であった。
●問4は、DNAとRNAの構造の違いについて基本的な知識を問う問題であった。
●問5は、遺伝情報の発現の過程について、転写および翻訳という基本的な用語を問う問題であり、平易であ
る。
●問6は、タンパク質とその合成に関する知識問題であった。タンパク質や遺伝情報の発現について正確に理解
したうえで、それぞれの選択肢を吟味する必要があった。
第2問「生物の体内環境の維持」
●第2問では、「生物の体内環境の維持」の分野から、知識問題や計算問題が出題された。問4の選択肢に「白
血球」がみられたほかは、免疫分野からの出題はなかった。
●Aは、肝臓と腎臓のはたらきについての正確な知識と計算力を問う問題であった。
●問1は、体液とその組成について正確な知識を問う問題であった。それぞれの選択肢を検討する際、「海水」
に戸惑った受験生もいたかもしれない。
●問2は、新課程でより詳しく扱われるようになった肝臓のはたらきについて、基本的な知識を問う問題であっ
た。
●問3では、ろ過や再吸収といった尿生成の過程についての知識と、尿素の濃縮率を求める計算力を問う問題が
出題された。尿素の濃縮率については、尿中の尿素の濃度が与えられていないため、算出方法を誤る受験生
が多くいたと推測される。ただ、タンパク質は原尿中にろ過されないがグルコースはろ過されるという知識
があれば、正答を選択肢3か4の2択に絞り込むことができた。
●Bは、体液と恒常性について幅広く知識を問う問題であった。
●問4は、血液循環、自律神経およびホルモンについて正確な知識が必要な問題であった。
●問5は、フィードバック調節のしくみを問う問題であり、正確な知識が求められるため差がついたと考えられ
る。また、選択肢一つひとつを吟味する必要があったため、解答に時間を要したであろう。
第3問「生態と環境」
●第3問は、「生物の多様性と生態系」の分野から知識問題と考察問題が出題された。
●Aでは、世界のバイオームの特徴についての知識が問われた。
●問1では、降水量や気温と成立するバイオームの関係について、基本的な知識と理解が問われた。
●問2は、チークを題材に雨緑樹林の特徴を問う問題であった。雨緑樹林が乾季に落葉するという特徴をおさえ
ているかで差がついたであろう。
●問3では、気候と成立するバイオームに関する理解と、各バイオームでみられる植物の名称についての細かい
知識が問われた。教科書によっては記載のない「アカシア」が正答になっており、消去法によって判断した
受験生も多くいたであろう。
●Bは、生態系とその保全についての問題であった。問4、問5ともに、選択肢一つひとつを丁寧に読んで内容を
吟味する必要があり、解答に時間を要した受験生が多くいたと考えられる。
●問4は、ヤチネズミの個体数の変動を示したグラフを題材に、生態系の変動について考察させる問題であっ
た。個体数が一定に保たれる条件として適当でないものを論理的に判断することが求められた。
●問5は、人間の活動が生態系に与える影響に関する問題であった。正確な理解と判断が必要とされ、選択肢を
丁寧に読む必要があった。
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度
2015
2014
2013
2012
2011
平均点
26.66
―
―
―
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6.センター試験攻略のポイント
●各分野の知識が幅広く問われており、2017年度もこの傾向が続くことが予想される。生物基礎の全範囲から
まんべんなく出題されるため、対策としては教科書を中心とした正しい知識を細部までしっかりと身につけ
ることが有効である。教科書の本文中にある用語だけでなく、図やグラフまで丁寧に理解しておきたい。
●2016年度は、考察問題や、選択肢一つひとつを吟味する必要のある問題が多く出題された。教科書に記載さ
れている用語を覚えるだけでなく、ほかの用語や分野全体の内容と関連づけて理解することが求められる。
教科書の内容を理解した後は、問題集や模擬試験などを用いて理解をさらに深めることが効果的である。
●第1問問2や第3問問4のように、今後も、教科書で扱われていない実験などを題材とした考察問題が出題され
る可能性がある。初見の題材が出題されても対応できるよう、模擬試験や参考書を活用した問題演習に取り
組み、問題で与えられた情報を整理し考察する力を身につけておきたい。