Kobe University Repository : Kernel

 Kobe
University Repository : Kernel
Title
野球における進塁時間短縮方法に関する研究
Author(s)
大岡, 昌平 / 藤村, 美歌 / 前田, 正登
Citation
体育・スポーツ科学, 22: 41-48
Issue date
2013-06
Resource Type
Journal Article / 学術雑誌論文
Resource Version
publisher
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/90002691
Create Date: 2015-04-16
体育・スポーツ科学 2
2:4
1-4
8,2
0
1
3
(研究資料〉
野球における進塁時間短縮方法に関する研究
大 岡 昌 平 1 ) 藤 村 美 歌 1) 前 田 正 登 2)
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キーワード:野球,ベースランニング,走塁経路,疾走速度
I.緒言
野球の走塁について,羽鳥(19
7
7
) は「野球では走塁の
時刻に刺激が発現するかで自動的に決まり,自分では決め
られない.野球の試合においては
アウトカウントや打球
巧拙が得点能力に大きな影響を及ぼす.攻撃力を十分に生
位置なと状況に応じた走塁経路の選択が必要となるた
かすためには優れた走塁が必要であり,走塁技術に優れて
め
, どちらの足でベースを踏むかよりも, どのような走塁
いれば多くの得点機会を作ることができる」と述べてい
経路であるかに着目する必要があるものと考えられるが,
る.このことから,走塁は少ないチャンスを得点に繋げる
これまでに走塁経路に着目した研究は見られない.
重要な役割を果たしていると考えられる.特に,相手チー
1
9
7
7
) は本塁から二塁まで
野球の走塁に関して,羽鳥 (
ムとの力が桔抗している場合には走塁の良し悪しで勝敗が
の走塁を分析し 50m走における疾走タイムと本塁から
0
1
1
) また,水野 (
2
0
0
9
)
決まることも少なくない(鈴木, 2
二塁までの疾走タイムとの聞に,有意な正の相関関係があ
は「攻撃的な走塁を積み重ねていくことで,それが目に見ノ
ることを報告している.しかし野球の走塁では,触塁し
えない力となって試合の流れを変え,最終的に得点へと繋
ながら走方向を変更する必要があり,直線走における疾走
がっていく」と述べており,得点の有無にかかわらず,走
能力だけでなく,走方向を変更する技術も必要で、ある(鈴
塁の質によって試合中における相手チームへ与えるプレッ
0
0
8
)
. したがって,直線走の疾走能力に劣る
木と榎本, 2
シャーも大きく変わってくることが考えられるー
選手であっても,走塁経路を工夫し方向変更を素早く行う
これまでにも走塁に着目した研究が,いくつかなされて
ことによって,走塁時聞を短縮させている可能性も考えら
いる.その中で,ベースランニングの際の触塁について,
れ,直線走の疾走能力に優れる選手の走塁との違いを明ら
9
91)とするものと,
右足による触塁が望ましい(市丸, 1
かにすることは重要で、あると考えられる
左足による触塁が望ましい(水野, 2
0
0
9
) とするものがあ
1
9
7
7,1
9
7
8
) の研究では,本塁から二塁ま
また,羽鳥 (
2
0
0
4
) による
り,その見解は一定ではない.また,大築 (
でを対象としていたが,本塁から二塁までの走塁と,二塁
と,方向変更のための第 l歩がオープンステップになる
から本塁までの走塁では目的が異なる
か.クロスステップになるかは,走行の lサイクルのどの
の走塁については,本塁への帰還が得点を意味することか
1)神戸大学大学院人間発達環境学研究科
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1 兵庫県神戸市灘区鶴甲 3
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1
2) 神戸大学
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1 兵庫県神戸市灘区鶴甲 3
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二塁から本塁まで
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42
(大岡・藤村・前回)
ら,更なる進塁の可能性を考慮する必要がない.実際の試
グラウンド整備を行った
合において,特に二死二塁の場面では,一般的に打球判断
を行う必要性が低いとされており,他の場面と比べて,三
塁走者は本塁に早く到達することを重要視している
この
X~
ことから,三塁から本塁までの走塁について検討を行う必
要があると考えられる.
本研究では,二塁から本塁までの走塁経路を分析し進
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塁時間短縮のための走塁方法を検討する.
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法
2
. 1 被験者
被験者は大学の硬式野球部および準硬式野球部に所属
0
し,普段からベースランニングの練習を行っている選手 1
名とした (TableU. なお,被験者には,本実験の趣旨,
内容についてあらかじめ説明し,同意を得た上で実験を
行った.
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被験者
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被験者の特性
体重
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日
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歳)
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1 BRにおける実験構成
野球経験
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1
2 STにおける実験構成
2
. 2 実験方法
被験者には,試合時と同様にスパイクを着用させた上
で,二塁を出発点とし三塁を経由する本塁へのベースラン
2
. 3 撮影方法
実験試技の撮影は,
4
台のビデオカメラ(撮影速度
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),および直線走 (
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) を行わせた (
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.
11,
ニング (
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秒)により行い,カウンター (
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12
).いずれの試技条件においても,被験者はベース
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rPH-1540,DKH社)を用いて完全に同期した.
(BR条件では二塁, ST条件では本塁から三塁の延長線上
2台 の ビ デ オ カ メ ラ (DXC-200
,
A SONY社 製 ) で 二 塁
4
.
8
6
4
m地点に設置したベース)に左足で触塁した状態
、
で5
か ら 三 塁 ま で の 疾 走 動 作 を 撮 影 し も う 2台のビデオカメ
で構え,験者の合図で疾走を開始し,三塁に触塁,本塁に
XC-009,SONY社製)で三塁から本塁までの疾走動
ラ (
到達するまでを可能な限り早く行うように指示した
実験
作を掲影した本研究で用いた座標系は,本塁から三塁に
被
向かう方向を x軸の正方向,二塁から三塁に向かう方向
試技は BRを 3本 お よ び STを 1本 の 合 計 4本とした
験者の疲労を考慮して,試技聞には十分な休憩時間を設け
を y軸の正方向,鉛直方向の上向きを
た実験試技は土のグラウンドで、行ったため,繰り返し行
るように定義した
Z 軸の正方向とな
われる実験試技により,グラウンドコンディションが変化
していくことが予想される.そこで本研究では,試技を行
う被験者の順番をランダムに設定し,また,各試技聞には
2
. 4 キャリプレーション
本研究では,二塁と三塁, および三塁と本塁とを結ぶ,
43
野球における進塁時間短縮方法に関する研究
疾走方向に 1
6か所,疾走方向に対して左右の方向に 4か
て 身 体 特 徴 点2
3点の三次元座標を算出し,阿江(19
9
6
)
所,および Z 朝l
方向に 5か所の合計3
2
0点のキャリプレー
の身体部分慣性係数を用いて身体重心位置を求め,分析
ションポイントを用いて行二った.キャリプレーションの市古
区間における身体重心の位置座標の時間変化を得た
. Yおよび Z軸方向について,
果,本測定による誤差は. X
これを身体重心位置の移動経路とし,被験者の疾走経路
BR条件の二塁と三塁との聞においてそれぞれ. 0
.
0
1
8
m
.
を評価した.なお,算出した位置座標データは平滑化
0
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. であり,三塁と本塁との聞にお
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mであった.また,
行った.
ST条件の二塁と三塁との聞においてそれぞ、れ. 0
.
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④
目
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mであり
三塁と本塁との聞におい
L34max および D 23m日 •
D34max
三塁ベースの本塁側の
辺を通り. Y軸に平行な線を二塁・三塁最短経路線,三塁
て. 0
.
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mであった.
ベースの二塁側の辺を通り. x軸に平行な線を三塁・本塁
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疾走経路を評価するにあたって
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.2に示すような
最短経路線として. F
び D23max.
D 出町田を算出した
Lぉm
a
x
. L34m
阻およ
出は,二塁・三塁間にお
L23m
ける,二塁・三塁最短経路線と身体重心とがなす距離の最
一塁・三塁間
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三塁・本塁間
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1
6
二塁側の辺と身体重心との y座標の差としたー同様に,
三塁・三塁間
0
.
0
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0
.
0
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1
4
出は三塁・本塁聞における,三塁・本塁最短経路線と
L34m
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(
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)
(
B
R
)
(
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T
)
三塁・本塁間
(
S
T
)
大値とし •
D 23m
出は L23m目出現時における,三塁ベースの
身体重心とがなす距離の最大値とし •
D34maxは L34max出現
時における,三塁ベースの本塁側の辺と身体重心との x
座標の差とした
2
. 5 分析方法
(1)分析区間
被験者の左足の腫が二塁を離れた瞬間,および本塁に触
一疾走経路
塁する瞬間を収録した映像より判断し,被験者の左足の躍
T-T走方向変換区間
が二塁から離れた瞬間の 1
0コマ前から本塁に触塁する瞬
間の 1
0コマ後までを分析対象とした
また,左足の躍が
口 里 担I
二塁を離地した瞬間から三塁に触塁するまでを二塁・三塁
間,三塁に触塁した瞬間から本塁に触塁するまでを三塁・
本塁間とし分析に用いた.
h
L田 mo<
(
2
) 算出項目
①ベースランニングタイム
BR条件において,被験者の左足の腫が二塁を離れる瞬
間,および本塁に触塁する瞬間を映像より判断しその聞
に要した時間をベースランニングタイム(以下. BRタイ
ム)とした.なお. BRについては. 3本の中で最も BR
タイムが短かった試技について,各項目を算出した
F
i
g
.
2
剖および走方向変更区間
L23max. L34max と D23max,D34m
②直線走タイム
ST条件において,被験者の左足の腫がスタート位置に
設置したベースを離地する瞬間,および本塁に触塁する瞬
⑤疾走移動距離
身体重心位置の時間変化より
各コマの移動距離の総和
間を映像より判断しその聞に要した時間を直線走タイム
を疾走移動距離とした
(以下. STタイム)とした
⑥疾走速度および最大疾走速度出現地点
③身体重Jレ位置の移動経路
分析区間における疾走移動距離を時間微分することによ
撮影した映像をパーソナルコンピュータに取り込み,
り,疾走速度を算出した.疾走速度については • Lぉm日出
三次元動作解析ソフトウェア (Frame-DIAS1
1V33
D
.
現時の疾走速度(以下. Vt). 三塁触塁時の疾走速度(以
D K H杜 ) を 用 い て 分 析 を 行 っ た 三 次 元 D L T法を用い
下. V 2 ) および L34m目出現時の疾走速度(以下 • V3) に加
44
(大同・藤村・前回)
え,三塁触塁時を基準として,その前後 3歩の疾走速度の
T
a
b
l
e
4に,全被験者の最大疾走速度およびその出現位
これらの値について,疾走速
置を示す.最大疾走速度が出現する地点が, STにおいて
V1を減じ
0名中 6名が三塁触塁以降, BRにおいては 1
0名全員が
は1
た値を f
'
.Vl-2,V3から V1を減じた値をム Vl-3,三塁触塁前
三塁触塁以前であり, STと BRでは,最大疾走速度の出
i
n
o
u
tと
の疾走速度から触塁後の疾走速度を減じた値をム V
現位置が異なる傾向にあった
平均値をそれぞれ算出した
度および各時点聞の疾走速度差(以下,むから
する)と BRタイムとの関係について検討・した
また,疾
F
i
g
.
4に三塁触塁前後の疾走速度の関係を示す. STにお
走速度の最大値が出現した時点における疾走移動距離か
0名中 9名が三塁触塁後に疾走速度は増
いては,被験者 1
ら,三塁触塁時における疾走移動距離を減じた値を最大疾
0名中 9名におい
加していたが, BRにおいては,被験者 1
走速度出現位置として算出した
て三塁触塁後に疾走速度が低下していたまた, STおよ
び BRのいずれにおいても
三塁触塁前と触塁後の疾走速
ST:r
=
0
.
7
2
1,
度との聞に有意な相関関係が認められた (
(
3
) 統計処理
各分析項目聞の関係性を検討するため,
ピアソンの積率
p
<
0
.
0
5, BR:r
=
0
.
6
8
5, p
<
0
.
0
5
)
.
F
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g
.
5
1お よ び F
i
g
.
5
2に STタイムと各区間の BRにお
相関係数を用いた.なお,有意水準は 5 %未満とした.
STタイムと二塁・三
ける疾走移動距離との関係を示す
i
l
l
.
士土
r
=
塁間の疾走移動距離との聞には有意な負の相関関係 (
果
ド
ロ
<
0
.
0
5
) が認められた一方, STタイムと三塁・
0
.
6
4
8,p
3
. 1 STと BRの関係
本塁間の疾走移動距離との聞には有意な相関関係は認めら
T
a
b
l
e
3に 全 被 験 者 の STタ イ ム お よ び BRタイムを,
れなかった
F
i
g
.
3
に STタイムと BRタイムの関係を示す. STタイム
r
と BRタイムの聞には有意な正の相関関係が認められ (
=0
.
9
5
4,p
<
O
.
Ol
)
, STタ イ ム が 短 い 被 験 者 は BRタイム
ABCDEFGHIJ
も短い傾向にあった.
Table3 STタイムおよび BRタイム
STタイム
BRタイム
被験者
A
B
C
D
E
F
G
H
10
4
¥
E
)恒例 刷 協 巡 附 謹 附 川
odau
(
s
)
7
.
4
7
7
.
3
0
7
.
7
7
8.
45
7
.
8
2
7
.
9
0
7
.
3
7
8
.
0
2
8
.
3
2
7
.
9
2
7
.
8
3
.
38
0
(的
J
Mean
S
.
D
.
(
s
)
6
.
8
8
6
.
8
8
7
.
4
2
8
.
12
7
.
25
7
.
6
0
6
.
9
3
.
32
7
8
.
0
2
7
.
4
2
7
.
3
8
0
.
4
4
T
a
b
l
e
4 BRおよび STにおける最大疾走速度およびその出現位置
m
/
s
) 最大疾走速度出現位置 (
m
)
最大疾走速度 (
被験者
BR
ST
BR
ST
9
.
5
2
9
.臼
0
.
6
5
0
.
8
1
1
.
19
0
.
9
7
9
.
5
8
9
.
8
9
8
.
9
7
8
.
9
8
0
.
9
7
3
.
8
5
.
27
9
.
0
0
2.
2
2
1
.
14
8
.
10
9
.
5
0
0
.
9
2
l
.3
3
9
8
.
6
2
9
.
0
9
2
.
0
7
1
.
15
9
.
6
0
9
.
8
9
5.
21
0
.
9
6
.
2
2
0
.
6
2
0
.
7
6
8
.
7
1
9
15
8
.
9
8
8
.
7
7
0
.
3
4
0.
8
.
6
1
9
.
3
3
1
.
6
5
0
.
9
1
9
.
0
,
J
,
,,
H
ハハ U
quRU
(︿
50
13
2p
+
'
XRU
Fr
的同
04
,
7.
5
,
7
.
0
,
7
.
0
6
.
5
,
7
.
5
,〆
• •
,
,
田
,
,,
,
,
江
•
RU
、
"8.0
O、
LE
・
/
-
•
・
.
-
(
J
)
4
,
,
,
,
8
.
5
﹃J
y=0.830x+1.703
r=0.954,p<0.01
7
8
10
三塁触塁前疾走速度 (
m
/
s
)
Tおよび B
Rにおける三塁触塁前後の疾走速度の関保
F
i
g.
4S
8
.
0
ST
タイム (
s
)
F
i
g
.
3 STタイムと BRタイムの関{系
8
.
5
45
野球における進塁時間短縮方法に関する研究
2
8
.
0
O
﹄つ﹄
7, ︽
ζ
n
b
y~-0 .4 36x+30.251
r~-0.648.
pく0
.05
QU7'
nUR
¥E)恒例市制桜山町会得リて県富山相
﹂
(
的
ζ
/
•s ••
• •
• •
民u
﹃,/,
内
〆
フ
(
E
)糧出フ
国語能川哨様GE附川・附川時台勾リE
M
U
10
。
O
-
8
G
V,
:y~ ー 1.1605x+16.574
r~-0.942. p
く0
.
0
1
2
6
.
0
6
6.
5
7
.
0
7
.
5
8
.
0
8
.
5
7
.
5
7
ST
ヲイム (
5
)
F
i
g
.
5
1
V:
,y~ ー 1.6916x+21.352
r~-0 .8 86. p
く0
.
0
1
8
.
5
B
STタイムと二塁・三塁聞の疾走移動距離の関係
F
i
g
.
6
1 BRタイムと各時点における疾走速度の関係
2
8
.
5
2
O
• tN;_
ム
。V'.2
糧
1
1
1
里 27.0
i
9
庄
- •
•。。• 。•• ••
。。
O
O
O
G
。
7
.
0
7
.
5
8
.
0
7
8
.
5
S
Tタイムと三塁・本塁聞の疾走移動距離の関係
3.2 BRにおける疾走速度
G
O
B
9
BRタイム(5)
ST
宝イム (
5
)
F
i
g
.
5
2
O
主4
田
2
6
.
5
6
.
5
。
附
o
2
7
.
5
附
特
。
+
l
'
!
桜
Q
O ムV1.3
O
nu
•• •
•
• •
•• •
a
! 28口
語
総
司﹄
¥
E
)制悩岡市制峰山町主将は岡山眠相
(
凶
E
~
9
BR
タイム (
5
)
F
i
g
.
6
2 BRタイムと各時点、間の疾走速度差の関係
3.3 走方向変更区間における疾走
F
i
g
.
6
1に BRタイムと各時点における疾走速度との関
F
i
g
.
7
1に L23max と D23maxの関係を, F
i
g
.
7
2に L34m担と
係を示す. BRタイムと各時点における疾走速度との聞
日と D23maxの聞には有意な相関
D34maxの関係を示す. L23m
ニ0
.
8
2
3,
に は 有 意 な 負 の 相 関 関 係 が 認 め ら れ た (V1 :r
関係が認められなかったが,Lぉmax と D34maxの間には有意
pく0
.
0
1, V2 :r
=
0
.
8
8
6, pく0
.
01
. V3 :r=0.942. p<O.Ol).ま
な正の相関関係 (
r
=
0
.
7
5
1,p
<
0
.
0
5
) が認められた
た,全被験者に共通して V2よりもれの方が小さな値を示
F
i
g
.
8に
,
した
示す
F
i
g
.
6
2に BRタイムとム VI-2, ムVI-3および 1
'
1V
i
n
o
u
tとの
関係を示す
いずれの時点聞における疾走速度差におい
ても, BRタイムとの聞には有意な相関関係は認められな
かった.
Lぉmax と二塁・三塁聞における疾走移動距離を
I
引 n
a
x と三塁・三塁聞における疾走移動距離の聞に
r
=
0
.
6
6
5
.p
<
0
.
0
5
) が認められ
は,有意な正の相関関係 (
た.
46
(大岡・藤村・前回)
N. 考
14
•
1
2
、
;
;
"
~ 1
0
Q
i
.
B
6
1
.5
4. 1 STと BRの関係
(
1
) STタイムと BRタイムとの関係
••
• •• • •
E
察
7
7,1
9
7
8
) や原田と植屋 (
1
9
6
9
) は,野球の
羽鳥(19
攻撃においては走者を得点圏に進めることが重要である
としスタンデイングスタートによる本塁から二塁まで
のベースランニングについて検討している.それらにおい
.
1
1
6秒(羽
て,野球選手のベースランニングの平均値は 8
9
7
7
),8.
11
9
秒(羽鳥, 1
9
7
8
),および8
.
0
4
秒(原田と
鳥
, 1
9
6
9
) であったことが報告されている.これらの先
植屋, 1
2
.
0
2
.
5
3
.
0
3
.
5
4
.
0
4
.
5
L
2
3 (
m
)
1l似
F
i
g
.
7
1
行研究においては,被験者は本塁から二塁へのベースラン
ニングを行っており,本研究で行った二塁から本塁への
ベースランニングとは設定した状況は異なるものの,疾走
L23max と D23maxの関係
距離およびベースの位置関係はほぼ同じであると考えられ
る
14
Table2のように,本研究における被験者の BRタイム
.
8
3:
t0
.
3
8
秒であったことから,先行研究と比
の平均値は 7
べて比較的 BRタイムが短い被験者であったと言える.
y~1.992x+3.871
1
2
• ••
•.
•
..
• •
•
r~0.751.
。
8
pく0
.
0
5
F
i
g
.
3に示されるように, STタイムが短い被験者は,
BRタイムもヂ互いことカf明らかとなった
と本塁から三塁までの疾走タイムとの聞に有意な正の相関
関係が認められたことを報告しており,本研究はこれらの
先行研究を支持する結果となった
能力に優れていることは
2
.
0
m吋と
6
3
.
5
4
.
0
このことから,直線走
ベースランニングにおける進塁
時間短縮のためには,重要なことの一つであると考えられ
る
係
m
聞
の
出
lL
F
i
g
.
7
2
hD
2
.
5
羽鳥(19
7
7
)お
1
9
6
9
)は
, 50m走における疾走タイム
よび原田と植屋 (
(
2
) STと BRにおける疾走速度の変化
STと BRの最大疾走速度の出現位置および本塁到達ま
E
での疾走速度に着目すると, STにおいては,三塁触塁後
28
事
吉
田i
1
0名中 6
に最大疾走速度が出現する被験者が比較的多く (
D鵠
諸
色
白
e
!
l
o
字
一
“
剛
1
1
1
附
y~0.31
"
'
•
今、
将
!
l 26.5
江
田
達していた (
T
a
b
l
e
3
)
. STにおいて,被験者 1
0名中 9名
が三塁触塁後の疾走速度が増加していた一方で, BRにお
3x+26.067
p
く0
.
0
5
r~0.665 ,
27
名
)
, BRでは三塁触塁前に全被験者が最大疾走速度に到
•・ •
••
•
t
f
.
!27.5
域
0名中 9名が三塁触塁後に疾走速度が低下
いては,被験者 1
F
i
g
.
4
) 篠原ら (
2
0
1
2
) は,野球を含む球技系
していた (
スポーツ選手の 50m走における最大疾走速度は, スター
トからおよそ 30m地点付近に出現することを報告してい
る.篠原ら (
2
0
1
2
) の報告は触塁を伴わない直線走を対象
26
1
.5
2
2
.
5
3
3
.
5
4
4
.
5
L23~.(m)
F
i
g
.
8 L23maxとBRにおけるこ塁・三塁の疾走移動距離の関係
としているが,本研究においても STの最大疾走速度の出
2
7
.
4
3
2
m以降)であった被験者が多
現地点は三塁触塁後 (
く,概ね同様の結果となったつまり,直線走において三
塁に触塁することはその後の疾走速度の推移には影響を及
ぼさない可能性が考えられる.他方 BRにおいては,三塁
触塁後の疾走速度が三塁触塁前より低下しており,全被験
者において最大疾走速度が三塁触塁前に出現していた
つ
47
野球における進塁時間短縮方法に関する研究
まり,走方向を変更しながら触塁することは,疾走速度の
踏まえると,より短い距離で大きな疾走速度を得ることが
低下を招き,さらに,触塁後の疾走速度の増加も困難にな
二塁・三塁間の進塁時間短縮に有効であると考えられた
る可能性が考えられる
(
3
) 三塁・本塁間の走塁経路
4.2 BRの各区間にあ、ける走塁
(
l
)B
Rタイムと各時点における疾走速度
BRタイムと各時点における疾走速度との聞には,強い
が,三塁・本塁聞の走塁経路は疾走能力に影響されるもの
負の相関関係が認められた (
F
i
g
.
6
-1
).つまり,各時点に
とは認められなかった (
F
i
g
.
5
2
).一方で, L2
2
3
m
a
x
日と D
3
m
おいて高い疾走速度で走塁を行うことは,本塁に早く到
との聞には有意な相関関係は認められなかった (
F
i
g
.
7
-1
)
達するためには重要であると言える.その一方で!'1Vl-2,
が
, L
3
4
m
a
xと D
3
4
m
a
xとの聞には有意な正の相関関係が認め
BRタイムとの聞に相関関係は
られ (
F
i
g
.
7
2
),三塁触塁後の走塁経路の膨らみ方には規
i
n
o
u
tは
,
!
'
1Vl-3および !
'
1V
二塁・三塁間の走塁と同様に,三塁・本塁聞の走塁にお
いても走塁経路を選択することは可能であるはずである
および
F
i
g
.
6
2
).その中でも,ム Vl-2
認められなかった (
則性が存在していた
:
0
.
5
8
:
!
:0
.
5
8
m
/
s,
!
'
1Vi
!
'
1Vl-2
n叫にはばらつきが見られた (
らずいずれの被験者も同様の割合で膨らむ経路であったと
!
'
1V
i
n
o
u
t
: -0
.
4
9土 0
.
2
9
m
/
s
) が,それらを含む区間の疾走
考えられ,三塁・本塁聞において進塁時聞を短縮するため
速度差である!'1Vl-3は,被験者間における疾走速度差のば
の走塁経路は,直線走の能力によらないものであると考え
.
0
6
:
!
:0.
23
m
/
s
)
. これらのこ
らつきがやや小さかった (-0
られる.
とから,走方向変更区間全体では疾走速度の変化に個人
差が表れにくく,
BRタイムを短縮させるためには, L
2
3
m
a
x
つまり,三塁触塁後は疾走速度によ
以上のことから,二塁・三塁間とは対照的に,三塁・本
塁間では疾走能力により走塁経路に特徴的な傾向が認めら
出現時に高い疾走速度を獲得して,走方向を変更する区間
れることはなかった.つまり三塁・本塁聞においては,疾
で、の疾走へと円滑に移行していくことが重要で、あると考え
走能力に応じた走塁経路の調節はさほど必要ではなく,可
られる.
能な限り大きな疾走速度での走塁が進塁時間の短縮に大き
く貢献しうる区間であると推察される.
(
2
) 二塁・三塁間の走塁経路
F
i
g
.
5
1のように, STタイムが短い被験者ほど二塁・
三塁聞における疾走移動距離は長いことが明らかとなっ
4.3 三塁触塁前後の疾走
J
i
n
d
r
i
c
he
ta
.
l(
2
0
0
6
) は,走方向変更時の方向変更角
た 他 方 で L2
3
m
a
xが大きい被験者は,三塁・三塁間にお
度を大きくするためには
F
i
g
.
8
) これらのことか
ける疾走移動距離は長かった (
が重要であると述べている. しかし本研究においては,
身体重心速度を減少させること
,
ら STタイムが短く直線走が速い被験者は L
2
3
m
a
xを大き
!
'
1Vl-2
F
i
g
.
6
2
),
の値が正の値であった被験者が多く (
くすることで疾走移動距離を長くしていたと考えられる.
被験者は速度を増加させながら三塁触塁を行っていた
L
e
t
z
e
l
t
e
r(
2
0
0
6
) は,陸上の短距離選手において,最大
BRにおいては,三塁触塁後の疾走速度は触塁前と比べて
疾走速度が大きな選手は最大疾走速度に到達する距離も長
F
i
g
.
4
),また,三塁触塁前より
低下した被験者が多く (
くなる傾向にあると述べている.本研究では,いずれの被
験者においても
BRにおける最大疾走速度は三塁触塁前に
も大きな疾走速度を触塁後に獲得することは困難である
(
T
a
b
l
e
3
).これらのことから,三塁触塁時においては,
出現しており,選手は三塁触塁前までに大きな疾走速度を
疾走速度を低下させて走方向変更角度を大きくするより
獲得する必要があることを認識してベースランニングを
も,高い疾走速度のままで触塁を行う方が進塁時間の短縮
行っている可能性がある
STタイムが短く直線走が速い
に貢献し得るものと推察される.
被験者は,三塁触塁時までに最大疾走速度に到達するため
三塁触塁後の走塁経路は被験者間で同様 (
F
i
g
.
7
2
)で
に L2
出を大きくすることで,長い加速距離を獲得してい
3
m
あり,かつ, ムVl-3は被験者間であまり大きな差は見られ
たものと推察される.
F
i
g
.
6
2
).このことから被験者は,三塁触塁後
なかった (
このように,本研究の被験者は二塁・三塁間において
の疾走速度が過度に低下しない範囲で,走方向の変更を
各々の直線走の能力に応じて走塁経路を調節しており,主
行っていたと考えられる.進塁時間をさらに短縮するため
に走塁経路の左右方向の膨らみの大きさを変化させること
には,より大きな疾走速度で同じ走塁経路を疾走する,も
つまり,二
しくは同じ疾走速度でより急激に走方向の変更を行うこと
によりその調節を行っていたと考えられる
塁・三塁聞は,個々人の直線走の能力に合わせた走塁経路
で疾走することで,三塁触塁時までに大きな疾走速度を獲
得する区間となっているものと推察される.以上のことを
ができるようになることが有効であると考えられる.
48
(大同・藤村・前回)
r
u
n
n
i
n
gt
u
r
n
s
.]
.Biomech39:1
6
1
1
1
6
2
0
.
v
.総 括
.(
2
0
0
6
) Thedevelopmento
fv
e
l
o
c
i
t
yand
L
e
t
z
e
l
t
e
r,S
本研究では,二塁から本塁までの走塁経路を分析し進
a
c
c
e
l巴r
a
t
i
o
ni
ns
p
r
i
n
t
s, A comparisono
fe
l
i
t
eand
j
u
v
e
n
i
l
ef
e
m
a
l
es
p
r
i
n
t
e
r
s
. NewS
t
u
d
i
e
si
nA
t
h
l
e
t
i
c
s,3
:
塁時間短縮のための走塁方法を検討した
大学の硬式野球部および準硬式野球部に所属する 1
0名
を被験者として,二塁から三塁を経由した本塁への走塁
(
B
R
) と,同距離での中間地点で触塁を必要とする直線走
(
S
T
) を行う様子を 4台のビデオカメラで撮影した
1
5
2
2
水野雅章 (
2
0
0
9
) 野球の中での走り,状況に応じた走り
方. T
r
a
i
n
i
n
g]
o
u
r
n
a
lN
O
.
3
5
3:1
9
2
4
.
得ら
内藤法永・桜井伸二 (
2
0
0
5
)S
t
a
n
d
i
n
gP
o
s
i
t
i
o
nからの横方
れた映像を用いて三次元 DLT法により身体重心位置を算
向への各種スタート動作についての力学的評価.中京大
出しその時間変化について分析を行った.
学体育学論, 4
6(
2
) :5
9
7
0
.
大築立志・梁瀬素子・青木恵子(19
8
6
) 球技における走方
結果は以下の通りである.
l目STタイムと BRタイムの聞には有意な正の相関関係
が認められ, STタイムが短い被験者は BRタイムも
向変更の素早さとフットワーク.第8回日本バイオメカ
ニクス学会大会論集:1
3
0
1
3
4
大築立志 (
2
0
0
4
) 方向変更の運動調節,バイオメカニクス
短い傾向であった.
2,三塁から三塁までの区間では, STタイムによって
走塁経路に一定の傾向が見られたこと,また, BRで
一身体運動の科学的基礎
.杏林書院:p
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1
0
3
1
0
7
.
篠原康男・曽谷英之・前田正登 (
2
0
1
2
) 疾走速度曲線から
は全被験者において最大疾走速度が三塁触塁前に出現
みた球技系スポーツ選手の加速局面に関する研究. ト
していたことから,個人の疾走能力に合わせた走塁経
レーニング科学, 2
4(
2
) :1
5
1
1
6
0
.
路で疾走することで,三塁触塁時までに大きな疾走速
鈴木康夫 (
2
0
1
1
) 野球心得書. 日刊スポーツ出版社.東京
度を獲得しようとしていたと考えられた.
鈴木雄太・榎本靖士 (
2
0
0
8
) サイドステップおよびクロス
3
. 三塁から本塁までの区間は
個人によって走塁経路
の選択にあまり差が見られず,大きな疾走速度での走
以上のことから,進塁時間の短縮のためには,短い加速
距離で大きな疾走速度を獲得できるようにすることが有効
また,二塁・三塁間で獲得した疾走
速度を可能な限り維持したまま
三塁・本塁聞を疾走する
ことが望ましいと考えられる.
文献
阿江通良 (
1
9
9
6
) 日本人幼少およびアスリートの身体部分
慣性係数. ]
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5
5
1
6
2
原田康明・植屋春見(19
6
9
) 野球におけるベースランニン
グの一考察.体育皐研究 1
3(
5
) :2
3
6
.
羽鳥好夫 (
1
9
7
7
) 野球における走塁に関する研究(第 l
報)
-熟練者の本塁 .
2塁間の走塁について一.東京学芸大
学紀要5
部門 2
9・1
7
3
1
7
8
.
羽烏好夫(19
7
8
) 野球における走塁に関する研究(第2
報)
-初心者と熟練者の本塁 .
2塁聞の走塁について一
東
京学芸大学紀要5
部門 3
0:2
4
5
2
5
1
林裕幸 (
2
0
0
3
) レベルアップ野球.西東杜
都体育学研究, 2
4
:1
1
2
鈴木雄太・阿江通良・榎本靖士 (
2
0
1
0
) サイドステップお
塁が特に必要となる区間であると考えられた.
であると考えられる
ステップにおける身体重心速度と地面反力との関係.京
東京.
市丸直人(19
91)ベースランニングの右足触塁と左足触塁
はどちらが有利か. 日本体育学会大会号4
2(
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5
6
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よびクロスステップによる走方向変換動作のキネマテイ
クス的研究.体育学研究, 5
5・8
1
9
5
.