SD法データの分析(1) 因子分析や3相因子分析によ る分析の問題点を整理する 狩野裕+原田章(行動工学講座) 多群データと3相データ -- Multiple Group and Multi-Mode data -群1 群G 変量 変量 個 …… 個 体 体 2 多群データと3相データ -- Multiple Group and Multi-Mode data -条件1 条件m 変量 変量 個 体 …… 個 体 刺激1 刺激m(繰り返し) 時刻1 時刻m(横断的データ) 3 多群データと3相データ -- Multiple Group and Multi-Mode data -条件1 条件 2 変量 個 条件 3 変量 体 個 変量 体 個 条件m 変量 体 個 体 4 よく知られた 平均値の差の検定との対応 多群 3相 ↓ ↓ 対応なし 対応あり 5 Dylis(当講座4年生)の 化粧品CM印象評価データ データの内容 • 日本の化粧品CM(雑誌広告)の印象評価を 日本と香港で実施 • 回答者数...総数212 • 日本... 女性:71人 男性:34人 • 香港... 女性:67人 男性:40人 • 用いたCM(刺激)は5種類 • Chanel, Kanebo, Kose, Maxfactor, Shiseido • 20対の形容詞でSD法により印象評価 6 形容詞対と プロフィール 平均は,CMごとに かなり異なるようで ある 7 8 データの構造 3 相 日 本 多 (男女) 群 香 港 (男女) 条件1 Chanel 条件2 Kanebo 変 量 変 量 条件3 条件4 条件5 Kose Maxfactor Shiseido 変 量 変 量 変 量 個 個 個 個 個 体 体 体 体 体 変 量 変 量 変 量 変 量 変 量 個 個 個 個 個 体 体 体 体 体 9 SD法データの因子分析 --- 「条件」を無視する手順 --- プロフィールの分析 形容詞 X1 (相間の平均値の比較) 探索的因子分析 (n=212*5=1060) 因子抽出 論理的・感性的評価 (Evaluation) 力量・潜在力 (Potency) 活動性(Activity) など 因子スコアまたは尺度 値を条件ごとに比較 被験者 被験者 条件 1 1 … 条件 5 条件 1 2 … 条件 5 … 条件 1 被験者 212 … 条件 5 X20 S D 法 デ ー タ 10 「条件」を無視する手順の問題点 条件の違いを独立な繰返しと解釈する分析法 は,以下の2点においてまずいことがある. (1) 条件間での平均のばらつきの問題:プロフィールを 分析するということは,条件間で平均が異なる可能性 を認めている.異なる平均を調整せずにデータを併合 して因子分析するのはまずい. (2) 条件間での等分散性等共分散性の問題:条件が変 わっても分散行列や相間行列が(近似的にでも)等し いと仮定できるか. (3) 従属性(対応のあるデータ)の問題:プロフィールの 分析で平均値を条件間で比較するときは,「対応のあ る平均値の差の分析」を行っているはずである.これ 11 と同様,従属性を考慮した分析を行なう必要がある. その理由 A2 併合後 A2 r=0 条件1 r = 0.5 条件2 r = -0.5 A1 (1) 平均が異なる場合 A1 (2) 相間が異なる場合 12 その理由(続):従属性の問題 標本数の問題 • 条件に関わらず全く同じ反 応をするならば N=212 • 被験者要因が働かず,独 立な標本として扱えるなら ばN=212*5=1060 • 独立でないときN=1060 と すると,適合度検定,AIC 等が上手く働かない その他にももっと重要な問 題が…. 形容詞 X1 条件 1 被験者 1 … 条件 5 条件 1 被験者 2 … 条件 5 … 条件 1 被験者 212 … 条件 5 X20 S D 法 デ ー タ 13 AICの問題の補足 AICはモデル選択の指標であり , AIC最小のモデルが選択さ れる . AIC 2対数尤度 2 ×パラ メ ータ 数 n log| '| log| S| 2 ×パラ メ ータ 数 n が(本当は小さいのに) 不当に大きいと,対数尤度 の影響が勝ってしまい convex にならない. 因子分析には普通のAIC はうまく働かないという経 験則がある(赤池氏). AIC Not good good 1 2 3 4 5 因子数 14 「条件」を無視する手順が 正当化されるための条件 (i) 平均(プロフィール)が条件間で揃っている. (ii) 相関構造が条件間で揃っている (iii) 条件間の相間が無視できる程度小さいか, 特殊な構造を持っている. あまり現実的ではないと思われる 15 簡便方法 平均の違い (i) のみが問題のとき 平均を条件間で等しくなるように調整し,条件 を無視する手順(N=212×5)で因子分析する. その他も [(i)-(iii)]問題になるとき 各被験者ごとに条件間で平均し,N=212 のデ ータを因子分析. 16 化粧品CMのデータでは? 条件によって相関構造は変化するか? 条件間の相関構造と条件内の相関構造との関係は? A1 明るさ MaxFactor A2 力強さ A3 親近感 A1 明るさ Kose A2 力強さ A3 親近感 MaxFactor 明るさ 力強さ 親近感 1.000 0.801 0.642 0.801 1.000 0.580 0.642 0.580 1.000 0.139 0.081 0.227 0.040 0.065 0.142 0.008 -0.022 0.000 明るさ 0.139 0.081 0.227 1.000 0.382 0.225 Kose 力強さ 0.040 0.065 0.142 0.382 1.000 0.266 親近感 0.008 -0.022 0.000 0.225 0.266 1.000 N=212: 香港・日本,男女をプール 17 データのまとめと今後の方向 まとめ 条件(CM)によって相関 構造はかなり異なるよう である. 条件間の相関は小さいよ うである. 平均(プロフィール)は条 件ごと,群(国・性別)ごと でかなり異なる. 方向 群(国・性別)ごとに平均 を調整し,群間の平均 を揃える.今回は群の 違いを解析に入れず, 独立な繰返しとみなし, n=212 として解析する. 18 3相因子分析的アプローチ 条件(CM)ごとに探索的因子分析 x1 1 f1 u1, , x5 5 f5 u5 項目(形容詞)を選択して検証的因子分析 x1 (1) f1 u1, , x5 (5) f5 u5 3相(検証的)因子分析(PARAFAC) x1 ()W1 f u1, , x5 ()W5 f u5 PARAFAC+因子平均 x1 ()W1( f 1) u1, , x5 ()W5( f 5) u5 19 特徴 検証的因子分析をベースにしたPARAFAC モデル 分散共分散は条件ごとに異なり以下のようになる: Var( xi ) ()Wi Wi ()'i 条件間の共分散は以下のようになる: Cov( xi , x j ) ()Wi Wj ()' 因子分析後の因子得点を比較するのではなく,因 子平均を推定し条件間で比較する.より具体的に は,以下の検定を行なう: H0:1 5 20 MTMM アプローチ (検証的因子分析モデル) 各形容詞と各条件の 潜在変数をさらに因 子分析する.(2次因 子分析) 直積モデルのアプロ ーチもある 平均構造は考えにく い 21
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