サッカーにおけるプレッシャー状況下でのシュート動作について

サッカーにおけるプレッシャー状況下でのシュート動作について
前田
誠一(競技スポーツ学科 スポーツ情報戦略コース)
指導教員
高橋 佳三
キーワード:プレッシャーの有無,シュート動作の違い,三次元画像分析
1.緒言
日本サッカー界は得点力不足がしばしば問われ
に様々な変化のパターンがみられた.
4.考察とまとめ
長年の課題となっている.では,得点力不足を解
シュート動作時にプレッシャーに対応した動作
消するためには何が必要であるのか.私は風間八
を全被験者が行っていたが,多くの変化が必ずし
宏氏の理論である「個の力」を持った選手が必要
もシュートの成功に関係するわけではなかった.
であるということから,プレッシャーの影響があ
しかし,本実験の結果でプレッシャーの有無に関
る中でもシュートを決めることの出来る選手が求
わらず最もシュートを成功させた被験者 F は変化
められると考え,シュート動作におけるプレッシ
パターンにおいては同様の動きをみせるが重心位
ャーの有無による影響及び変化をバイオメカニク
置と速度の変化は減少し,股関節外転及び体幹の
ス的に分析することを本研究の目的とした.
捻りにおける角速度の増大がみられた.これは,
2.研究方法
被験者 F のみに大きくみられた変化であった.こ
被験者は本学男子サッカー部 8 名であった.試
のことから,プレッシャー状況下にあってもシュ
技は,ゴール正面から 15m の地点に 4×6m のシ
ートを成功させる為には安定したフォームで素早
ュート範囲を地面にテープを張って設け,被験者
い動作を行うことがそのままプレッシャーを半減
はその範囲内でシュートできるようにパスされた
させ,ゴールを決めるポイントになると考えられ
ボールをコントロールしてシュートを行わせた.
る.
プレッシャー無し,プレッシャー有り 2 通りの試
参考・引用文献
技を出来る限り同様の条件下(相手の距離,スピー
ドなど)で行えるようにし,それぞれの動作を三次
風間八宏(2007):サッカー・ワールドサッカー4
大スターの技術,ベースボール・マガジン社
元画像分析した.算出項目は実験試技における成
600
心位置,重心速度であった.
400
3.結果
200
図 1 は被験者 F の右股関節外転角速度を示した
ものである.被験者 F は試技においてプレッシャ
ーの有無に関わらずシュートを成功させた.また,
そのパターンは他の被験者と異なる変化を示し,
角速度(deg/sec)
績と股関節,体軸,上下胴の角度,角速度及び重
被験者F
外
0
-200
内
-400
-600
特に DF 有りの試技において内転から外転,外転
から内転と小刻みに大きな変化がみられた.
2 通りの試技において個人ごとにプレッシャー
時間(sec)
プレッシャー無し
プレッシャー有り
の影響に対応する動きは違っていた.実験全体と
いうより,個人の動作の変化に着目すると各部位
図 1 右股関節内転・外転角速度