水中姿勢と倒立姿勢による類似性の検証

水中姿勢と倒立姿勢による類似性の検証
渥美友那 (生涯スポーツ学科 学校スポーツコース)
指導教員 森川みえこ
キーワード:水泳,けのび,倒立,姿勢
1.緒言
水泳不得意者は,水中姿勢に腰の反りや脚沈
みなどの特徴が見られる.この特徴により,水
の抵抗を受け,
効率のいい泳ぎができていない.
このことから,水中姿勢の改善が,水の抵抗の
図 1 被験者 B 倒立姿勢の変化
軽減に繋がると考える.そこで,器械運動のマ
ット運動における倒立時の姿勢に着目し,けの
び姿勢に倒立姿勢が類似しているのではないか
と考えた.
本研究では,水中姿勢と倒立姿勢との間の類
似性を検証し,水泳不得意者に向けた,水中で
の姿勢改善及び泳力向上を目指した,陸上での
運動及び練習方法を提案する.また,学校現場
において,活用することができる教材を提案す
図 2 被験者 B けのび姿勢の変化
4.まとめ
本研究では,水泳不得意者に向けた,水中で
ることを目的とする.
の姿勢改善及び泳力向上を目指し,陸上での運
2.研究方法
動及び練習方法を提案することを目的とした.
本研究は,B 大学の「水中運動法」において
そこで,
水中姿勢と倒立姿勢の類似性に着目し,
50m クロールの完泳ができない,または 50 秒以
「倒立」の効果を検証した.その結果,陸上で
上かかる男子学生 2 名(被験者 A・B)
,女子学
倒立練習を行うことで,3 点の効果が表れた.
生 1 名(被験者 C)
.B 大学水泳部(競泳)の男
①泳いでいる際の,
「お腹をへこませる」という
子学生 2 名(被験者 D・E)
,女子学生 1 名(被
意識の獲得.②けのび姿勢の保持.③25m パフ
験者 F)の計 6 名を対象とした.
ォーマンステストにおけるタイムの短縮.この
実験内容は,①けのび姿勢の水中撮影,②25m
ように,特に水泳不得意者への効果が顕著に表
パフォーマンステスト(タイム測定及び水中撮
れたことから,水中姿勢と倒立姿勢において,
影)
,③倒立練習,④インタビュー調査の 4 つで
体幹への意識及び「腹横筋」を使うことが一致
ある.
していると考えられる.これらの結果から,水
3.結果と考察
泳不得意者に向けた,水中での姿勢改善及び泳
結果を図 1,図 2 に示した.
力向上を目指した,陸上での運動及び練習方法
被験者 B は,けのび姿勢において,pre に比
として,
「倒立」
は効果的であると言える.
また,
べて post では,姿勢の保持,脚沈みや下半身の
本研究で得た「倒立」の有効性が,今後,水泳
沈みの軽減が見られた.これは,倒立練習によ
の授業において,泳力向上のための運動や練習
って,腹圧の高め方,身体をまっすぐにすると
として活かされることを提案したい.
いう感覚を身に付けることができたためである
引用・参考文献
と考えられる. こうした効果が,不得意者の 3
1) 三輪千子・本間三和子(2010)学年期に身
名に顕著に表れ,熟練者においても同様の効果
につけておくべき水中での基本動作の達成
が見られた.
度と陸上での運動遊びとの関係.体育科教
育学研究,26(1)
:1-13.