日本基準トピックス 企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する 会計基準の適用指針」の改正 2015年3月31日 第280号 ■主旨 2015年3月26日、企業会計基準員会(ASBJ)は、企業会計基準適用指針第25号 「退職給付に関する会計基準の適用指針」の改正(以下、本適用指針)を公表しました。 厚生年金基金および確定給付企業年金の財務諸表の表示方法は、関連する改正により 一部変更が行われています。これに伴い、複数事業主制度につき確定拠出制度に準じ た会計処理および開示を行うときに求められる「直近の積立状況等」の注記において、 実質的に従来と同じ内容の注記が当該変更後も行われるよう、改正を行うものです。 また、企業が簡便法による退職給付債務の計算を採用しており、年金財政計算上の 数理債務の額を用いる場合に、この厚生年金基金および確定給付企業年金の財務 諸表の表示方法の一部変更による影響に留意することも示されています。 公表日以後最初に終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用されます。 ・原文については、ASBJのウェブサイトをご覧ください。 https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/taikyu2015/ ------------------------------------------------------------------------- 1.経緯 複数事業主制度を採用している場合において確定拠出制度に準じた会計処理および開示 を行う場合、改正前の「退職給付に関する会計基準の適用指針」では、「直近の積立状況等」 の一部として「年金財政計算上の給付債務の額」を開示することとされていました。 一方、2012 年 1 月 31 日に厚生労働省から発出された厚生労働省通知(厚生労働省通知)(注) により、厚生年金基金および確定給付企業年金の財務諸表の表示方法が以下のように変更 されました。 ① 厚生年金基金: 従来、「数理債務」と「最低責任準備金(継続基準)」の合計額として貸借対照表に 表示されていた「給付債務」が表示されなくなりました。 「数理債務」や「未償却過去勤務債務残高」は貸借対照表の欄外に注記されるのみ となり、貸借対照表本体には、「数理債務」から「未償却過去勤務債務残高」を控除 した純額が「責任準備金(プラスアルファ部分)」として表示されることとなりました。 (注) 「厚生年金基金の財政運営について等の一部改正及び特例的扱いについて」、「「確定給付企業年金の 規約の承認及び認可の基準等について」、「厚生年金基金から確定給付企業年金に移行(代行返上)する 際の手続及び物納に係る要件・手続等について」の一部改正について」 1 ② 確定給付企業年金: 従来、貸借対照表に表示されていた「数理債務」や「未償却過去勤務債務残高」 は貸借対照表の欄外における注記のみとなりました。 貸借対照表本体には、「数理債務」から「未償却過去勤務債務残高」を控除した 純額が「責任準備金」として表示されることとなりました。 本適用指針では、上記の変更後も、実質的に従来と同じ内容の注記が行われるよう、注記 すべき事項の表現の改正を行っています。 以下のイメージ図は、「厚生年金基金及び確定給付企業年金の財務諸表の表示方法」を 示しています。 <厚生年金基金の改正イメージ図> <確定給付企業年金の改正イメージ図> 2 2.改正の内容 改正前は、複数事業主制度を採用している場合において、確定拠出制度に準じた会計処理 および開示を行う場合に、「直近の積立状況等」の注記の一部として、「年金財政計算上の 給付債務の額」の記載が要求されていました。本適用指針では、これに代えて、「年金財政 計算上の数理債務の額と最低責任準備金の額との合計額」という名称を付して、当該合計額 を開示することとしています。この改正により、改正前と実質的に同じ内容の注記を求めること となります。なお、確定給付企業年金の場合には、代行部分の給付がないことにより、開示の 対象が年金財政計算上の数理債務の額のみとなるため、「年金財政計算上の数理債務の額」 との名称を付して開示することが認められています。 また、企業が高い水準の信頼性をもって数理計算上の見積りを行うことが困難である等の 理由で簡便法による退職給付債務の計算を採用しており、年金財政計算上の数理債務の額 を用いる場合には、厚生年金基金及び確定給付企業年金の貸借対照表の欄外に注記 されている「数理債務」の額(厚生年金基金の場合は当該「数理債務」の額と貸借対照表に 表示されている「最低責任準備金」(負債)の額の合計額)を勘案して退職給付債務を計算 することに留意する必要があるとされています。 なお、2014 年 12 月 24 日に公表された公開草案の内容から大きな変更はありません。 3.適用時期等 本適用指針は、公表日以後最初に終了する事業年度の年度末(3 月決算企業については、 2015 年 3 月 31 日に終了する事業年度の年度末)に係る財務諸表から適用されます。 あらた監査法人 東京都中央区銀座8丁目21番1号 住友不動産汐留浜離宮ビル (〒104-0061) お問い合わせ: [email protected] 本資料は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナル からのアドバイスを受けることなく、本資料の情報を基に判断し行動されないようお願いします。本資料に含まれる情報は正確性または完全性を、 (明示的にも暗示的にも)表明あるいは保証するものではありません。また、本資料に含まれる情報に基づき、意思決定し何らかの行動を起こされたり、 起こされなかったことによって発生した結果について、あらた監査法人、およびメンバーファーム、職員、代理人は、法律によって認められる範囲に おいていかなる賠償責任、責任、義務も負いません。 © 2015 PricewaterhouseCoopers Aarata. All rights reserved. PwC refers to the PwC Network member firms in Japan and/or their specified subsidiaries, and may sometimes refer to the PwC Network. Each member firm is a separate legal entity. Please see www.pwc.com/structure for further details. This content is for general information purposes only, and should not be used as a substitute for consultation with professional advisors. 3
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