No.2015-035 2015年3月25日 ≪藤井英彦の 藤井英彦の視点≫ 視点≫ http://www.jri.co.jp ロシア変調 ~ 雇用・住宅増 ~ (1)ロシア経済に変調の兆し。まず鉱工業生産が昨年12月をピークに本年入り後、2ヵ月連続の 大幅減(図表1)。輸出入金額や実質輸入は昨年8月以降、ハイペースで減少。小売売上高も 本年に入り2ヵ月連続の大幅減(図表2)。ルーブル安を受けインフレ進行。前年比でみると、 消費者物価は昨年12月11.4%と2桁台に乗り、本年1月15.0%から2月16.7%。卸売物価は昨年 12月の5.8%、本年1月6.7%から2月9.5%と2桁台目前。今後をどのようにみるべきか。 (2)雇用情勢をみると、失業率が昨年3月の5.05%を底にほぼ月を追って上昇(図表3)。本年 2月5.37%。2013年12月来の水準。しかし雇用者数は、季節調整に伴う月次変動があるものの、 昨年半ば以降、ほぼ月を追って増勢加速。失業率の上昇は、非労働力人口から労働力人口へ シフトする動きが拡がった結果。就業意欲の高まりや雇用環境に対する期待の強まりを示唆。 むしろ前向きな動き。世帯当たり家計所得は本年2月、一段と増加して既往最多(図表2)。 加えて昨年12月、小売売上高は、とりわけ非食料品を中心に大幅増。自動車販売台数も昨年 11、12月に大幅増の後、本年入り後、大幅減。本年1、2月の生産減は、主要業種別にみると、 輸送機械が際立って大幅減。これらを総じてみれば昨年12月、物価上昇を見越した駆け込み 消費が盛り上がり、本年入り後反動減。加えて本年1月は土日を挟み11連休で昨年比休日増。 連休に備えて昨年12月、消費増。2月も休日増。休日増が稼働日数減を通じて生産減に作用。 (3)原油など資源価格低下で輸出金額は減ったものの、実質輸出は昨年10月から増勢(図表1)。 人口の都市圏流入が続く一方、インフレが進行するなか、モスクワをはじめ住宅需要が本年 入り後、大幅増(図表4)。実効為替相場は本年2月反転上昇。従来の推移に照らせば今後、 数ヵ月でインフレ一巡の可能性。金融・株式市場も次第に安定。ウクライナ情勢をはじめ、 流動化リスクは依然残るものの、同国経済は最悪期を脱し今後持ち直しに向かう展開が視野。 (図表1)ロシアの鉱工業生産と輸出入(季調済) 115 鉱工業生産(右目盛) 実質輸入(左目盛) 輸入金額(左目盛) (2013年=100) 実質輸出(左目盛) 輸出金額(左目盛) (2013年=100) (図表2)小売売上高と世帯当たり家計所得(季調済) (2013年=100) (2013年=100) 小売売上高(左目盛) 小売売上高(食料品、〃) 小売売上高(非食料品、〃) 世帯当たり家計所得(右目盛) 102 108 100 116 103 112 112 108 101 104 104 100 85 100 100 99 70 98 55 97 0 2013 14 96 96 92 15 92 2013 14 15 (出所) FSSS (出所) FSSS など (年/月) (図表3)労働力人口と雇用・失業者数、失業率(季調済) 16 (年/月) (図表4)住宅建設床面積と固定資本投資、建設工事金額 5.7 116 (10万人) (%) 雇用者数(左目盛) 労働力人口(左目盛) 失業者数(左目盛) 失業率(右目盛) 12 200 (2013年=100) (2013年=100) 住宅建設床面積(右目盛) 固定資本投資(左目盛) 建設工事金額(左目盛) 5.6 112 175 5.5 8 108 150 104 125 100 100 96 75 5.4 4 5.3 0 5.2 ▲4 5.1 ▲8 5.0 2013 (出所) FSSS 14 (注) 失業率以外は対2012年1月差。 92 50 0 2012 15 (年/月) 13 (出所) FSSS (注) 季調済。 14 15 (年/月) 【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373) ≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。
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