解答解説

2015 年度 慶應義塾大学 文学部(世界史) 解答解説
Ⅰ
歴史遺産の保存の歴史
解答
A-ムセイオン
E-ブルネレスキ
B-エラトステネス
C-(聖)ベネディクトゥス
F-コジモ=デ=メディチ
I-国家(国民)社会主義ドイツ労働者党
D-唯名論(名目論)
G-(憲法制定)国民議会
H-バイエルン
J-世界遺産
解説
全体的には標準レベルの知識を問う問題が大部分だが、細かい語句を求める問題も少数配合された記述問題。
空欄補充型なので、ヒントとなるリード文はきちんと精読し、ケアレスミスは絶対に避けるよう心がけたいとこ
ろ。なお、標準的もしくは平易な問題に関する解説は省略する。
( C )
“ザンクト・ガレン修道院”という細かい名称は気にせず、
「祈り、かつ働け」を標語としたというヒ
ントから素直に考えればよい。
( F )コジモ=デ=メディチは教科書での記載例はほとんどなく(新課程では0)、これを記述問題で求めて
いるため難問である。入試問題としては求める知識が細かい。
( G )
“美術品の一般公開の決議”の知識は入試レベルではないので、受験生としてはフランス革命下の1791
年という年代から考えることになる。だがこの年は国民議会から立法議会への転換の年であり、どちらの議会な
のか区別することは困難。難問である。
( H )ルートヴィヒ1世の人名やグリュプトテークの知識は入試レベルではないので、ミュンヘンというヒ
ントからバイエルンと想起しなければならない。本学部は昨年度もバイエルンを出題しているので要注意。
( J )
“デジタル・メディアによるアーカイヴのヴァーチャル化”といった文脈から考えさせる問題。テレビ
番組の影響で注目度が高まった世界遺産の語だが、慶應の志望者であれば正答してもらいたいところ。
Ⅱ
イギリスと合衆国の議会演説
解答
設問(1) 大憲章(マグナ=カルタ)
設問(2) ジョン王
設問(4) インノケンティウス3世
設問(5) 権利の宣言
設問(7) メアリ2世・ウィリアム3世
設問(9) ヴェルサイユ体制
設問(14) アル=カーイダ
設問(6) ジェームズ2世
設問(8) ウィルソン大統領
設問(10) 宣教師外交
設問(12) ブッシュ(子)大統領
設問(3) 1215
設問(11) 新しい自由
設問(13) 同時多発テロ事件(9・11テロ事件)
設問(15) 1941
解説
史料文の内容を理解することが重要だが、問題文自体がヒントになっている場合もある。全体的には、ヒント
を正しく捉えれば解ける標準的な問題がほとんどである。なお、平易な問題に関する解説は省略する。
設問(1) 史料文1での“25人の諸侯”などから、少数の名門貴族が国王の行動を制約→大憲章(マグナ=カルタ)
の内容ではないか、と見ることはできる。しかし設問(4)の問題文にこの王が“カンタベリ大司教の選任をめぐ
り教皇から破門”とあるので、ジョン王→大憲章、と見抜くことは容易。
設問(5) 史料文2を精読すれば、いわゆる「王権に対する議会の優越」を述べた内容と判断できるため、
『権利
の宣言』と『権利の章典』の2つが想起され迷うところ。しかし設問(7)で“この文書を承認して即位”とある
ので、
『権利の宣言』が正解となる。
設問(6) 問題文での“王位を空位に”という細かい部分は気にしないこと。
『権利の章典』の直前に議会無視の
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統治をした国王と考えればよい。
設問(8)・(10) 史料文3を精読し“勢力均衡”・“組織された共通の平和”という部分から,ウィーン体制以
来の勢力均衡による安全保障が失敗し、初めて集団安全保障体制が導入されたことを読み取って、第一次世界大
戦後のヴェルサイユ体制を導き、さらに設問(9)~(11)の問題文も加味して考えれば、ウィルソン大統領の演説
だと判断できるはず。その上で、(10)の宣教師外交はやや細かいが、慶応の志望者であれば押さえておきたい語
句である。
設問(12)~(14) 史料文4の精読が重要。
“穏やかな朝に巨大都市の中心で犠牲者”と言う部分からイメージは沸
きやすいが、さらに“過去136年間、戦争は外国で”→合衆国の内戦は南北戦争(1861~65)のみ→この演説の年代
は1865+136=2001年、と特定できる。こちらも有効なヒント。
設問(15) 太平洋戦争の開始となった日本の真珠湾攻撃は、米国領のハワイに対してのもの。また“奇襲攻撃”
という表現も有効なヒントである。
Ⅲ
中国史における人物たち
解答
A-墨家
設問(1) ウ
B-王安石
C-阿倍仲麻呂
設問(2) イ
D-王維
設問(3) イ
E-周敦頤
設問(4) ア
設問(5) 福建
解説
空欄補充の記述問題では、リード文中のヒントが細かい内容のため正答が難しい問題が目立つ。その一方で、
選択問題の中には消去法で攻略すると正答できる問題が含まれる。なお、設問(5)は実質的な地図問題と見てよ
いだろう。一般的もしくは平易な問題の解説は省略する。
( A )諸子百家の中でリード文にない学派を考えると、墨家と兵家の2つが候補となる。だが『漢書』では
十家の中に兵家を含めていないため、正解は墨家である。しかし『漢書』のこうした細かい内容は入試レベルの
ものではなく、受験生としては特定が困難。難問である。
( C )阿倍仲麻呂は世界史の教科書でも記載例が多く、細かい知識ではない。また新課程での日本と諸外国
とのつながりを重視する方針から考えても、今後とも要注意の人名である。
( D )これは正答が難しい。阿倍仲麻呂は玄宗時代の人物であり、当時の文人とも親交が厚かったのだが、
リード文の詩の一節は知られているものではなくヒントにならない。受験生としては、玄宗時代の李白以外の詩
人として杜甫・王維を候補とするだろうが、それ以上の特定は困難である。
設問(1) 荀子は儒家に属するので、それに該当するものを選べばよい。アは道家・エは兵家の内容であり、イ
は判断が難しいが、ウは仁の重要さを述べているので儒家の内容である。
設問(4) アの内容は細かい知識のため判断できないが、イは“弥勒下生”から白蓮教関連、ウは“黄色い頭巾”
から黄巾の乱、エは明らかに陳勝の言葉である。消去法でアを残せばよい。
設問(5) 地図自体を用いていないが、地理的なイメージを求める問題。陝西省・河北省の位置はやや細かい知
識だが、福建省は中国分割の際に日本が不割譲条約を清に結ばせ勢力圏とした地域であり、台湾の対岸あたり。
一般的な地図問題でも必要な知識だが、これを押さえていれば(a)~(d)のいずれにも該当しないと判断できる
だろう。
Ⅳ
19世紀~現在までのベトナム・タイ・ミャンマー
解答
A-西山
B-ユエ(フエ)
C-天津
E-ラタナコーシン(チャクリ、バンコク)
H-アラウンパヤー
設問(1) マカートニー
I-タキン党
D-ドイモイ(刷新)
F-ボーリング
G-トゥングー(タウングー)
J-スー=チー
設問(2) 南ベトナム解放民族戦線
設問(3) アジア通貨危機
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設問(4) ビルマ
設問(5) タイ
解説
東南アジアのインドシナ半島の代表的3地域を扱った近現代史の大問。問題文の表現やヒントが少しひねられ
ている問題が含まれるので、冷静に対処したいところ。他の大問と比較すると難問は含まれていないので、ミス
なく高得点をとりたい。なお、一般的もしくは平易な記述問題の解説は省略する。
( F )ラーマ4世は欧米諸国と進んで国交を開き、彼らが望む通商を認めることで圧迫を回避したことは重
要ポイント。ラーマ5世(チュラロンコン)の前段階として押さえておこう。その中で、イギリスと結び通商を開
いた不平等条約がボーリング条約だが、これはやや細かい知識であり教科書での記載例は少ない。しかし慶應の
志望者であれば押さえておきたい語句である。
( H )近年では入試問題の中で「コンバウン朝」の名称が定着し「アラウンパヤー朝」の別名を目にする機
会が少ないため、戸惑った受験生も意外に多かったのではないだろうか。参考までに述べると、コンバウン朝は
シュエボー(コンバウン)を発祥とし、アラウンパヤーを初代国王とする王朝である。
設問(2) ゲリラ活動のような一般的なヒントを挙げず、
「政治運動形態」という変わった表現を問題文で用いて
いるが、リード文の文脈から考えても正答はできるはず。
設問(4) 参考として述べておくと、問題文に“一部では現在もなお用い続けられている名称”とあるが、これ
はアメリカ合衆国やオーストラリアなどが、ビルマからミャンマーへの改称を軍事独裁政権が国民の合意を得ず
行ったものして認めず、引き続き「ビルマ」と呼称し続けていることをさす。
設問(5) ASEANの発足当初の参加国はタイ・フィリピン・マレーシア・シンガポール・インドネシアの5
ヵ国であり、これはきちんと押さえておきたい知識。もともとASEANは合衆国の支援下で成立した反共連合
であった(1971年のクアラルンプール宣言で中立化し、経済協力機構へと変容)ということを想起できれば、社会
主義国であるベトナムやビルマ(ミャンマー)ではなく、SEATOにも参加していた親米的なタイが正答だと判
断できるだろう。なお、ベトナムの加盟は経済自由化後の1995年、ミャンマーの加盟は1997年である。
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