2015 年度 慶応義塾大学 商学部 (論文テスト) 解答解説

2015 年度 慶応義塾大学 商学部 (論文テスト) 解答解説
Ⅰ
解答
問1 (1) 0 (2) 6 (3) 0 (4) 1 (5) 0 (6) 2 (7) 5 (8) 4
(9) 8 (10) 1 (11) 2 (12) 5 (13) 3 (14) 2 (15) 1 (16) 0
(17) 0
問2 (18) 4
問3 期待値理論はリスクを冒すことを避ける理性の性向を考慮しないから。
解説
確率理論の中の期待値理論を解説し、合理的な行動選択のための期待値理論が、現実の人間の意思決定と異な
ってしまう「サンクトペテルブルクの問題」に触れ、その要因を説明した文章。平易な文章で分かりやすく説明
しているので趣旨は容易にとれる。
問1
(1) 100ドルの賞金を獲得する確率が50%であれば、期待値は100×0.5で50ドルであるが、参
加費に50ドルかかわるわけだから、期待値から50ドルを引くと0ドルとなる。
(2)
(3) 1000ドルの賞金を獲得する確率が6%であれば、1000×0.06で60ドルとなる。
(4)
(5) 60ドルの期待値から参加費の50ドルを引くので10ドルとなる。
(6)
(7) 1投目が裏の確率は1/2、2投目が表の確率は1/2なので、0.5×0.5=0.25とな
る。
(8) 参加費がないので、4ドルがそのまま賞金額となる。
(9) 2投目で終わるよりも回数が1回多いので、2投目で終わる場合の賞金額4ドルの倍で8ドルとなる。
(10)
(11)
(12) 1/2の確率を3乗すればいいので、0.5×0.5×0.5=0.125となる。
(13)
(14) 3投目で終われば8ドルであるから、4投目で終われば16ドル、5投目で終われば32どるとな
る。
(15)
(16)
(17) 100万ドルが100%で獲得できるなら期待値は100万ドル。200万ドルが50%の
確率で獲得できるなら200万×0.5で期待値は100万ドルである。
問2
無限回参加費を足せば期待できる賞金額は無限大になるのであるから、無限に参加費を足すのが合理的選択と
いうことになる。次の段落の後半で「期待値理論は、合理的な意思決定者はこのゲームに持ち金すべてを喜んで
賭けることを予測する。しかし、実際には、4ドルより多く支払う人はほとんどいない。
」と書かれている。
問3
人間がリスクを避ける傾向があることを考慮していないからである、ということはすぐわかるが、それで解答
を書いても正確な答えにはならない。期待値理論は確率に基づく「合理的意思決定」のための指標である。そこ
では人間理性は必ず合理的選択をする、というのが前提になっている。しかし、最終段落のダニエル・ベルヌー
イの考察によれば「人間は理性的に慎重で200万ドルの宝くじに付随しているリスクを冒すのを避ける」ので
ある。つまり理性にはリスクを冒すことを避けるという性向があり、期待値理論は理性のもつその側面を考慮し
ていないということが、期待値理論と人間の意思決定のずれの要因である。
「理性」の一面に依拠しているという
点が示せることがポイントである。
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Ⅱ
解答
問1 (19) 3 (20) 8 (21) 4 (22) 3 (23) 8 (24) 1 (25) 3 (26) 8
(27) 0
問2 (28) 8 (29) 0 (30) 1 (31) 7 (32) 2 (33) 2 (34) 0 (35) 5
(36) 4 (37) 2 (38) 2
問3 (39) 4 (40) 6 (41) 2 (42) 4 (43) 9 (44) 6 (45) 2
問4 (46) 4 (47) 5 (48) 3 (49) 4 (50) 3 (51) 3 (52) 2 (53) 9
問5 統計の基盤が平均なので世帯数も複数の方法の平均で考えたから。
解説
平均寿命を生命表によって算出する考え方について解説した文章である。生命表自体になじみはなくても、解
説を読めばその考え方については十分理解できるはずである。最も高い年齢層から順に計算していくというとこ
ろが押さえられていれば、も生命表そのものがぴんとこなくとも数値計算はできる問題である。
問1
(19)
(20)
(21) 出生数による世帯数の産出はでは、世帯数を年間に出産した女性の数(=年間出産数)の4
倍と考えるとあるので、12000×4=48000が世帯数となる。典型的な1世帯を8人とするので、48
000×8=384000が推定人口となる。
(22)
(23)
(24) 死亡数による世帯数の算出は、年間11世帯あたり3人の死亡数という比と年間死亡数の1
3000という数字から行う。11:3=X:13000を解くと、X=約47666となり、これを8倍した
約381333が推定人口となる。
(25)
(26)
(27) 城壁内の世帯数は54×220で11880世帯。この4倍がロンドン全体になるので、世
帯数は47520。これを8倍した380160が推定人口となる。
問2
生命表の数字の算出の方法が分かることが重要。生存年数計の数字はその年齢の死亡数(B)×年齢階級値(C)
に次の年齢層(表でいうと一つ下の段)の生存年数計を加えた数字であり、それを生存数で割ると死亡時の平均
年齢の数字になる。死亡時の平均年齢から年齢を引いたものが、その年齢の平均余命になる。
(28)
(29)
(30)
(31) (エ)の数字は20歳のところで算出できる。25+7992=8017となる。平均
寿命は0歳における平均余命であるから、8017÷100-0=80.17が平均寿命となる。
(32)
(33)
(34) 50歳の生存年数計の7867から60歳の生存年数計の7647を引けばよい。
(35)
(36)
(37)
(38) 80歳の(B)×(C)の3230に90歳の生存年数計2192を加えればよい。
問3
(39)
(40)
(41)(42) 60歳の平均余命は表から23.12なので200万円×23、12=4624万円
となる。
(43)
(44) 40年は月に直すと480ヵ月であるから、上で求めた4624万円を480で割ればよい。
(45) 50年は月に直すと600ヵ月であるから、4624万円を600で割れば約7.7万円。差は約1.
9万円となる。
問4
(46)(47)(48)(49) 問題文にある「0.68の6乗はほぼ0.1(=1/10)
」に従えば、人口10
0人は6世代後に約10人(=1/10)となる。それに則れば、現在の女性人口が2600万人、6世代後
に260万人、12世代後には26万人……というように、6世代ごとに0が1個減っていくことになり、4
2世代後に2.6人になる。さらに、この2.6人に0.68をかけていくと、3回かけた後に1未満になる。
すなわち、日本の女性が1人以下になるのは、42+3=45世代後のことである。また、45世代後は1世
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代31.5×45=1417.5年後となるから、西暦2012+1417.5=3429.5年に女性が1
人以下になる。
このように、2600万に0.68の何乗をかければ1未満になるかを計算し、その数字に31.5を掛けて
それに現在の西暦年数を足せば算出できるが、電卓が使えなければ手計算で数値を出すのは困難であり、試験時
間からするとこれをまともに計算していたら他の問題に手が回らない。それをすばやく判断して捨て問として次
に行くことがなにより重要である。
(50)
(51)
(52)
(53) これも同様で、3億に0.68の何乗をかければ1000未満になるかを計算し、その
数字に27.2を掛けてそれに現在の西暦年数を足せば算出できる。しかし、これまた手計算では困難であり、
上同様に捨て問とすべき問題である。
問5
世帯との関係で統計化されているのは死亡数だけであり、それを使えば算出できるのに、なぜ3つの方法をと
ったのかということについては、普通に考えれば、複数の方法を使って精度を高めるためではないかということ
になる。しかし、そもそも死亡数の統計はロンドンの「平均的な」教区の数字であるし、出生数の4倍が世帯数
というのも根拠がない。また家屋数も地図から推測した平均値であると考えられる。つまり、数字自体がはなは
だ厳密性を欠くわけであるから、
「精度」の問題ではないだろうと考えることが必要である。グローントの統計が
「平均」によって構成されていることから考えると、複数の算出方法で得た数値を平均しようという意図があっ
たのではないかと推測できる。
Ⅲ
解答
問1
(54) 2 (55) 2 (56) 1 (57) 9 (58) 2 (59) 2 (60) 1 (61) 2
(62) 2 (63) 2 (64) 2 (65) 1 (66) 1 (67) 1 (68) 1 (69) 9
(70) 2 (71) 1 (72) 1 (73) 1 (74) 2 (75) 2 (76) 1 (77) 9
(78) 2 (79) 2
問2
普遍性の度合は高いが正確性の度合は低く演繹可能性関係が構成できないから。
解説
命題の演繹可能性関係を使って科学の反証可能性の高低の判断について論じた文章。演繹は普遍的・一般的・
抽象的なものから個別的・特殊的・具体的なものを導く関係であることを念頭におけば、説明されている内容は
理解できるはずである。
問1
(54)
(55) 「天体」はその中に「惑星」を含む概念であり、惑星の上位概念だから惑星よりも普遍性が高い。
(56)
(57) 「円」は「楕円」の特殊な形態であるから、
「普遍性が高い」とは言えない。本文の後ろから4行
目で「
(72)
(73)からsに移れば(74)
(75)と正確性の両者が減少し」とあるところに着目すれば、
「正確性」
であるとわかる。
(58)
(59) pは「天体」
、qは「惑星」というところが違うので、普遍性が減少したことになる。
(60)
(61) pと比較されているのはqである。
(62)
(63) 前文を詳しく言い換えているだけであるから、
(58)
(59)と同じものが入る。
(64)
(65) pはqより容易に反証されるのであるから、反証されにくいqが反証されればpも反証される。
(66)
(67) rに移る矢印はpから引かれている。
(68)
(69) pは「円」
、qは「楕円」というところが違うので、正確性が減少したことになる。
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(70)
(71) rの方が反証されにくいのだから、rが反証されればpは反証されることになる。
(72)
(73) p→q、p→rの移行を説明した後に「他の移行」というのだから、sへの移行であるが、2つの
性質が減少するのはp→sの移行である。
(74)
(75) 正確性と普遍性しかないのであるから、ここは普遍性である。
(76)
(77) qは「円」
、sは「楕円」というところが違うので、正確性が減少したことになる。
(78)
(79) rは「天体」
、sは「惑星」というところが違うので、普遍性が減少したことになる。
問2
普遍性はqの方が高く、正確性はrの方が高いことはすぐわかるが、これだけ書いても理由にならない。反証
可能性の高低の判定は、演繹可能性が明確なものについてなされるので、普遍性と正確性という異なる軸の間で
はその関係を明確にすることができないことを述べることが必要である。
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