答申第715号

別紙
諮問第900号
答
1
申
審査会の結論
「○○中学校において平成21年に発生した同中の教諭によるわいせつ事件に関する
経緯及び対応・処分についての情報」について、その存否を明らかにしないで開示請求
を拒否した決定は、妥当である。
2
異議申立ての内容
(1)異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号。以下
「条例」という。)に基づき、異議申立人が行った「○○中学校において平成21年に
発生した同中の教諭によるわいせつ事件に関する経緯及び対応・処分についての情
報」の開示請求に対し、東京都教育委員会が平成26年5月2日付けで行った非開示決
定について、その取消しを求めるというものである。
(2)異議申立ての理由
異議申立書及び意見書における異議申立人の主張を要約すると、以下のとおりであ
る。
本件開示請求に関する全ての情報が非開示決定処分に書かれた条例7条2号及び
6号の非開示情報に該当する内容であるとは考えにくく、例えば東京都教育委員会と
して事件を知った経緯等、上記非開示理由に該当しない情報が存在するのではないか、
あるいは一部開示処分によって個人が特定されない形での開示が可能なのではない
かと考える。
また、請求を行っている情報は、平成21年1月13日付20初初企第52号文部科学省初
等中等教育局初等中等教育企画課長通知「平成19年度
教育職員に係る懲戒処分等の
状況、服務規律の確保及び教育職員のメンタルヘルスの保持等について」に示された
- 1 -
服務規律の確保が行われていたことを確認する上で必要な情報である。
なお、平成23年12月22日付23初初企第87号文部科学省初等中等教育局初等中等教育
企画課長通知「平成22年度
教育職員に係る懲戒処分等の状況、服務規律の確保及び
教育職員のメンタルヘルスの保持等について」には、「懲戒処分に関する基準を策定
し公表することは、懲戒処分の厳正な運用や不祥事の抑止の効果が期待され、また、
保護者、地域住民に対する説明責任を果たすことに資する」として、
「処分事案があっ
た場合には、上記基準等に照らして厳正に当該処分を行うとともに、その処分の概要
について、可能な限り詳しい内容を公表すること」とある。この趣旨については、事
件当時と現在において変化はないはずである。
本件非開示決定の理由で「東京都教育委員会が教職員に対して行う処分に関する情
報」が全部非開示となるのであれば、上記通知の趣旨に照らし、「懲戒処分の厳正な
運用や不祥事の抑止」及び「保護者、地域住民に対する説明責任を果たすこと」がで
きなくなるのではないかと考える。
3
異議申立てに対する実施機関の説明要旨
理由説明書における実施機関の主張を要約すると、以下のとおりである。
公務員である公立学校に勤務する職員の服務事故について、発生の有無や事実経過、
東京都教育委員会等が行った対応・処分に関する情報は、当該職員の身分取扱いに関わ
る個人情報であり、かつ、個人の権利利益を害するおそれのある情報である。これらの
情報は、条例7条2号ただし書のいずれにも該当しないことから、同号本文の非開示情
報に該当する。
また、東京都教育委員会が公立学校に勤務する職員に対して行う処分に関する情報は、
公にすることにより、今後、同種の服務事故が発生した場合に、事故者等からの事情聴
取による適切な情報収集が困難となり、人事管理に係る事務の公正かつ円滑な遂行に支
障が生じるおそれがあるため、条例7条6号の非開示情報に該当する。
したがって、本件開示請求に対し、対象公文書の存否を答えることは、条例7条2号
及び6号の規定に基づき非開示とすべき特定教員の処分に関する情報を開示すること
と同様の結果となる。
以上のことから、実施機関では、条例10条の規定に基づき、対象公文書の存否を明ら
- 2 -
かにしないで非開示とする決定を行った。
4
審査会の判断
(1)審議の経過
審査会は、本件異議申立てについて、以下のように審議した。
年
月
日
審
平成26年
7月
4日
平成26年
9月17日
議
経
過
諮問
新規概要説明(第152回第一部会)
平成26年10月20日
実施機関から理由説明書収受
平成26年11月14日
異議申立人から意見書収受
平成26年11月20日
審議(第154回第一部会)
平成26年12月16日
審議(第155回第一部会)
(2)審査会の判断
審査会は、実施機関及び異議申立人の主張を具体的に検討した結果、以下のように
判断する。
ア
本件請求文書について
本件異議申立てに係る開示請求は、「○○中学校において平成21年に発生した同
中の教諭によるわいせつ事件に関する経緯及び対応・処分についての情報」(以下
「本件請求文書」という。)であり、平成21年に発生した特定中学校の教職員の服
務事故について、その経緯、東京都教育委員会等が行った対応及び処分に関する文
書の開示を求めるものであると解される。
実施機関は、本件請求文書の存否を答えるだけで、条例7条2号及び6号に規定
する非開示情報を開示することとなるとして、条例10条に基づき、その存否を明ら
- 3 -
かにせずに開示請求を拒否する決定を行った。
イ
条例の定めについて
条例7条2号本文は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する
情報を除く。)で特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合するこ
とにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定
の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を
害するおそれがあるもの」を非開示情報として規定している。また、同号ただし書
において、「イ
法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすること
が予定されている情報」、
「ロ
人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公
にすることが必要であると認められる情報」、
「ハ
当該個人が公務員等…である場
合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、
当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」のいずれかに該当する情報
については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨規定し
ている。
条例7条6号は、「都の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しく
は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることによ
り、…当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす
おそれがあるもの」を非開示情報として規定している。
条例10条は、「開示請求に対し、当該開示請求に係る公文書が存在しているか否
かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公
文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。」と規定
している。
ウ
本件請求文書の存否応答拒否の妥当性について
本件請求文書は、特定の中学校名、事件の発生時期及び種類が指定されており、
その存否を答えることにより、平成21年に特定中学校の教職員の服務事故が発生し
たという事実や、当該教職員に対して処分を行ったという事実の有無(以下「本件
存否情報」という。)を明らかにするものであると認められる。
そこで、本件存否情報が条例7条2号に規定する非開示情報に該当するか否かに
- 4 -
ついて検討すると、本件存否情報は、特定中学校に勤務する教職員の服務事故に関
する身分取扱いに係る情報であり、個人に関する情報で特定の個人を識別すること
ができるものであると認められ、条例7条2号本文に該当する。
教職員の服務事故に係る処分等の公表について、実施機関に確認したところ、懲
戒処分は公表の対象であり、
「学校に勤務する教職員の懲戒処分の公表等について」
(平成22年4月1日一部改正)を定め、原則として、懲戒免職の場合は氏名、学校
名、職名、年齢、性別、処分程度及び処分理由を、停職、減給及び戒告の場合は校
種、職名、年齢、性別、処分程度及び処分理由を報道発表するとともに、ホームペー
ジへ6か月間程度掲載することとしている一方で、文書訓告、口頭注意等の措置は
公表の対象ではないとの説明があった。この説明を踏まえると、本件存否情報は、
法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている
情報とは必ずしも認められないことから、条例7条2号ただし書イに該当しない。
また、本件存否情報は、教職員の身分取扱いに係る情報であり、職務の遂行に係る
情報とは認められないことから、同号ただし書ハに該当せず、さらに、その内容及
び性質から、同号ただし書ロにも該当しない。
次に、本件存否情報が条例7条6号に規定する非開示情報に該当するか否かにつ
いて検討すると、本件存否情報は、東京都教育委員会が教職員の服務事故について
行う処分に係る情報であり、公にすることにより、今後、教職員の服務事故が発生
した場合に、事故者、関係者等からの事情聴取による適切な情報収集が困難となり、
人事管理に係る事務の公正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認めら
れ、条例7条6号に該当する。
したがって、本件存否情報は、条例7条2号及び6号に該当し、本件請求文書の
存否を答えるだけで、条例7条2号及び6号に規定する非開示情報を開示すること
となると認められるので、条例10条に基づき開示請求を拒否した実施機関の決定は、
妥当である。
よって、「1
審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
秋山
收、浅田
登美子、神橋
一彦、隅田
- 5 -
憲平