別紙 諮問第873号 答 1 申 審査会の結論 「警視庁多摩総合庁舎昇降機設備改修工事に係る主要資材発注予定報告書」ほか3件 を一部開示とした決定は、妥当である。 2 審査請求の内容 (1)審査請求の趣旨 本件審査請求の趣旨は、東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号。以下「条 例」という。)に基づき、審査請求人が行った「警視庁多摩総合庁舎昇降機設備改修工 事、警視庁航空隊江東飛行センター(23)改築昇降機設備工事、警視庁交通安全教育 センター(24)改築昇降機設備工事及び警視庁板橋警察署別館昇降機設備改修工事に ついて納入された昇降機設備の主要機器の製造メーカーが分かる文書」の開示請求に 対し、警視総監が平成25年8月27日付けで行った一部開示決定について、その取消し を求めるというものである。 (2)審査請求の理由 審査請求書及び意見書における審査請求人の主張を要約すると、以下のとおりであ る。 ア 対象案件の主要資材発注予定表に記載された製作者名の開示を求める。 イ 調達機器の業者名に加えて、当該機器の型名や詳細仕様まで請求したのであれば、 それは当該業者の内部管理に係る情報、つまり「企業ノウハウ=企業秘密」と言え なくもないが、単に業者名だけを開示することがなぜ当該業者の「企業ノウハウ= 機密情報」の開示になるのか、万人が納得できる明快かつ説得力のある説明をして 欲しい。 - 1 - ウ 官公庁が発注する案件は、学校・病院・警察署・福祉施設など不特定多数が利用 する公共性が高い施設であるので、エレベータ業者を選定するに際しては、安全 性・信頼性を主とした製品品質の確保並びに品質保証能力を最重点に置いた、より 慎重で厳しい審査が求められることは当然のことである。 したがって、官公庁に納められたエレベータについて、誰が製造した製品なのか ということを公にするのは官公庁として最低限の義務であり、それを知ることは一 般市民の最低限の権利といえる。大手・中堅の場合には、当該業者が製造したこと は自明であるが、部品寄せ集め方式で製品を供給している中小企業に関しては、今 回情報公開請求した主要機器の調達先が分からなければ、この最低限の判断すらで きないことになる。 エ 実施機関は、主要資材発注予定報告書をいかなる目的で提出させているのか。そ の目的から鑑みて業者名を非開示にすることにいかなる合理的な根拠なり正当な 理由があるのか。 東京 23 区の中には主要機器の調達先の業者名を情報開示しているところがあり、 その業者とは今回の対象である業者が含まれる。その業者が東京 23 区では開示に 同意されたにもかかわらず、実施機関ではなぜ開示を拒否するのか理解できないの で、両者が開示拒否の理由として具体的にどのような説明をされたのか、どのよう な判断でその説明を受け入れたのか。 オ 日本市場全体では5%前後のマーケットシェアしかない中小企業が、東京都の入 札では常に 60%前後のシェアを占め、キープレーヤーとなっているが、その中小企 業が供給するエレベータとは一体どこのどの業者によって製造された機器で構成 されたものなのか皆目見当もつかないなどというのは、エレベータ利用者にとって 極めて不安なことだということをよく認識してほしい。 3 審査請求に対する実施機関の説明要旨 理由説明書及び口頭による説明における実施機関の主張を要約すると、以下のとおり である。 - 2 - 主要資材発注予定報告書の別紙である主要資材発注予定表には、本件工事の請負者が 発注する機器及び材料の製作者の名称が記載されており、公にすることにより、法人の 事業活動を行う上での内部管理に係る情報が明らかになるなど、当該法人の競争上又は 事業運営上の地位が損なわれると認められ、条例7条3号に該当するため非開示とした。 4 審査会の判断 (1)審議の経過 審査会は、本件審査請求について、以下のように審議した。 年 月 日 平成25年12月 審 3日 議 経 過 諮問 平成26年 1月31日 新規概要説明(第119回第三部会) 平成26年 3月 実施機関から理由説明書収受 平成26年 3月24日 3日 審査請求人から意見書収受 平成26年10月31日 実施機関から説明聴取(第126回第三部会) 平成26年11月28日 審議(第127回第三部会) 平成26年12月19日 審議(第128回第三部会) (2)審査会の判断 審査会は、審査請求の対象となった公文書並びに実施機関及び審査請求人の主張を 具体的に検討した結果、以下のように判断する。 ア 主要資材発注予定報告書について 主要資材発注予定報告書とは、機械設備工事の請負契約後に各設備工事を進める に当たり、事業者が事前に機器及び材料(以下「主要資材」という。)の製作者名、 - 3 - 代理店、代理店住所等の各項目について記入し、東京都に対して報告することが義務 付けられている書類である。その作成目的については、東京都が事前に主要資材の 製作者から、過去の使用実績や事故の有無等の安全性について確認するほか、ある 主要資材が原因で事故が発生した場合、当該主要資材が他工事の部品として含まれ ていないかを確認して、必要に応じて安全確保等の措置を講じることにある。 実施機関の説明によると、昇降機設備工事については、一部品の破損等でも利用 者の人命に関わるものであることから、他の機械設備工事と比べて、より詳細な主要 資材の報告を求めているとのことである。 主要資材発注予定報告書には、別紙として主要資材発注予定表を添付することと されており、主要資材発注予定表は、「機器及び材料」、「製作者名」、「代理店」、 「代理店住所」、「代理店電話」及び「備考」の各欄から構成されている。 平成26年版東京都機械設備工事標準仕様書(平成26年4月)では、工事受注者が 提出する工事請負契約関係の書式について、受注者等提出書類処理基準(昭和47年 2月25日付47財営技第2号)等によることとされており、主要資材発注予定報告書 の様式は同基準により定められている。 また、同基準の実施に必要な細目は、受注者等提出書類処理要領(昭和60年2月 4日付59財営技第68号)によることとされており、主要資材発注予定表の様式は同 要領で定められている。 イ 本件対象公文書について 本件審査請求に係る対象公文書は、警視庁多摩総合庁舎昇降機設備改修工事、警 視庁航空隊江東飛行センター(23)改築昇降機設備工事、警視庁交通安全教育セン ター(24)改築昇降機設備工事及び警視庁板橋警察署別館昇降機設備改修工事に係 る主要資材発注予定報告書(以下「本件対象公文書」という。)である。 実施機関は、本件対象公文書に記載された情報のうち、受注者の本部長、現場代 理人及び監理業務受託者担当者の氏名は条例7条2号に、法人の印影は条例7条4 号に、警察職員、現場代理人及び監理業務受託者担当者の印影は条例7条2号及び 4号に、主要資材発注予定報告書の別紙である主要資材発注予定表中の製作者名は 条例7条3号にそれぞれ該当するとして非開示とする一部開示決定を行った。 - 4 - ウ 審査会の審議事項について 審査請求人は、審査請求書及び意見書において、本件対象公文書のうち、主要資 材発注予定報告書の別紙である主要資材発注予定表中の非開示とした「製作者名」 (以下「本件非開示情報」という。)の開示を求める旨主張していることから、審 査会は、実施機関が非開示とした部分のうち、本件非開示情報の非開示妥当性につ いて判断する。 エ 条例の定めについて 条例7条3号本文は、「法人(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立 行政法人を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事 業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等 又は当該事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損な われると認められるもの」を非開示情報として規定している。また、同号ただし書 において、「イ 事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある危害から人の生 命又は健康を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」、「ロ 違法若しくは不当な事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある支障から人の 生活を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」、「ハ 事 業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある侵害から消費生活その他都民の生活 を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」のいずれかに該 当する情報については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならな い旨規定している。 オ 条例7条3号該当性について 実施機関の説明によると、本件開示請求に対し、慎重かつ公正な開示決定等をす るため、本件対象公文書を提出した各事業者に対し、条例15条1項に基づく意見照 会を実施し、事業者の意見を踏まえて一部開示決定を行ったとのことである。 また、本件非開示情報を非開示とした理由について実施機関は、主要資材の中には、 事業者と製作者が共同開発したもの又は営業力を駆使して調達したものがあり、本件 非開示情報を公にすることにより、他社が直接製作者に接触して技術が盗用されるこ とになるなど、技術力による優位性が失われる可能性があるほか、他社が仕入先を模 - 5 - 倣した場合、価格競争に影響を及ぼし、競争力が失われることになるなど、事業運営 上又は競争上の地位が損なわれると説明する。 審査会が検討したところ、事業者の主要資材の製作者の選定や調達は、事業者の 取引先等に関する営業上重要な内部管理情報であると認められ、昇降機設備工事が その他の機械設備工事と比べて、より詳細な主要資材の報告が求められているという 特殊性に鑑みると、本件非開示情報を公にすることは、事業者の営業秘密を侵害す る蓋然性があるといえる。 以上のことから、本件非開示情報を公にすることにより、今後の同種工事におけ る事業者の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められることから、本件非 開示情報は、条例7条3号に該当し、非開示が妥当である。 よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。 (答申に関与した委員の氏名) 渡辺 忠嗣、鴨木 房子、寺田 麻佑、前田 - 6 - 雅英
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