別紙 諮問第895号 答 1 申 審査会の結論 「特定個人の転落死に関する捜査の記録」について、その存否を明らかにしないで開 示請求を拒否した決定は、妥当である。 2 審査請求の内容 (1)審査請求の趣旨 本件審査請求の趣旨は、東京都情報公開条例(平成 11 年東京都条例第5号。以下 「条例」という。)に基づき、審査請求人が行った「警視庁○○警察署が実施した平 成 25 年○月○日に東京都港区○○(町名)○丁目○番○号にて発生した○○(特定 個人)の転落死に関する捜査の記録一式(同人が転落したマンションの○階に居住す る○○(特定個人)の司法警察員面前調書を含む。)」の開示請求に対し、警視総監が 平成 26 年2月 21 日付けで行った非開示決定について、その取消しを求めるというも のである。 (2)審査請求の理由 審査請求書における審査請求人の主張を要約すると、以下のとおりである。 ア 処分を取り消すとの裁決を求める。 イ 条例7条2号は、 「個人に関する情報」等が記録されている公文書について開示対 象から除外している。 当該規定の趣旨は、「個人の情報」を保護する観点からのものである。 しかしながら、「個人の情報」であっても、開示請求者本人の情報開示を求める 場合や、開示請求者の被相続人等の情報を求める場合であれば、当該「個人の情報」 が開示された場合であっても、当該情報の「主体」が開示を求めるものであること - 1 - から、何らの障害も生じ得ない。 したがって、条例7条2号は、「個人に関する情報」等が記録されている公文書 について開示対象から除外するものの、当該情報の主体である本人からの開示請求 である場合や、当該情報の主体を相続した者からの開示請求である場合を含まない (開示対象となる)と解するのが相当である。 ウ 本件の場合、転落死した○○(特定個人)の相続人である審査請求人が開示を求 めるものである。 したがって、上記情報の主体である○○(特定個人)を相続した者からの開示請 求であることから、「個人の情報」を保護する観点からの配慮は不要である。 それゆえ、今般の非開示決定は法の趣旨を誤ったものであり、直ちに当該決定を 取り消す必要がある。 3 審査請求に対する実施機関の説明要旨 理由説明書及び口頭による説明における実施機関の主張を要約すると、以下のとおり である。 (1)条例 10 条該当性について 当該開示請求は、特定の個人に関する請求であり、開示請求に係る公文書が存在し ているか否かを答えるだけで、条例7条2号に規定する個人情報を開示することとな るため、条例 10 条に基づき、当該公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否 する。 (2)条例7条2号該当性について 当該開示請求に係る個人の氏名は、特定の個人を識別することができる情報である ため、条例7条2号本文に該当し、同号ただし書のいずれにも該当しない。 (3)審査請求人の主張について 審査請求人は、条例7条2号は、「個人に関する情報」等が記録されている公文書 について開示対象から除外するものの、当該情報の主体である本人からの開示請求で - 2 - ある場合や、当該情報の主体を相続した者からの開示請求である場合を含まない(開 示対象となる)と解するのが相当であると主張するが、条例上、開示請求権の範囲に 制限はないので、開示請求者が誰であるかは考慮されず、本件非開示判断を左右する ものではない。 なお、仮に本件開示請求を東京都個人情報の保護に関する条例(平成2年東京都条 例第 113 号)に基づきなされたとしても、審査請求人、代理人弁護士とも同条例 12 条の開示を請求できる者の要件を満たさないので、開示請求することができない。 4 審査会の判断 (1)審議の経過 審査会は、本件審査請求について、以下のように審議した。 年 月 日 審 平成26年 6月 平成26年 7月31日 平成26年12月 3日 8日 議 経 過 諮問 新規概要説明(第124回第三部会) 実施機関から理由説明書収受 平成26年12月19日 実施機関からの聴取説明(第128回第三部会) 平成27年 審議(第129回第三部会) 1月30日 (2)審査会の判断 審査会は、実施機関及び審査請求人の主張を具体的に検討した結果、以下のように 判断する。 ア 本件請求文書について 本件審査請求に係る請求文書は、「警視庁○○警察署が実施した平成 25 年○月○ 日に東京都港区○○(町名)○丁目○番○号にて発生した○○(特定個人)の転落 - 3 - 死に関する捜査の記録一式(同人が転落したマンションの○階に居住する○○(特 定個人)の司法警察員面前調書を含む。)」(以下「本件請求文書」という。)であ り、実施機関は、本件請求文書の存否を答えるだけで、条例7条2号に規定する非 開示情報を開示することとなるとして、条例 10 条に基づき、その存否を明らかに せずに開示請求を拒否する決定を行った。 イ 条例の定めについて 条例7条2号本文は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する 情報を除く。)で特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合するこ とにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定 の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を 害するおそれがあるもの」を非開示情報として規定している。また、同号ただし書 は、「イ 法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定 されている情報」、「ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にす ることが必要であると認められる情報」、「ハ 当該個人が公務員等…である場合 において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、 当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」のいずれかに該当する情報 については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨規定し ている。 条例10条は、「開示請求に対し、当該開示請求に係る公文書が存在しているか否 かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公 文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。」と規定 している。 ウ 本件請求文書の存否応答拒否の妥当性について 実施機関は、本件請求文書の存否を答えることにより、条例7条2号に規定する 非開示情報を開示することとなるとして、条例10条に基づき存否応答拒否を行った ので、その当否について検討する。 審査会が検討したところ、本件開示請求は、発生年月日及び発生場所を指定した 特定個人の転落死に関する捜査記録について開示を求めたものであり、本件請求文 - 4 - 書の存否について応答することは、特定個人が転落死したか否かという、条例7条 2号本文で規定する非開示情報を開示することとなると認められる。また、その内 容及び性質から、同号ただし書のいずれにも該当しない。 したがって、条例10条の規程に基づき、本件請求文書の存否を明らかにしないで 開示請求を拒否した実施機関の決定は、妥当である。 エ 審査請求人の主張について 審査請求人は、開示請求者本人の情報開示を求める場合や、開示請求者の被相続 人等の情報を求める場合であれば、当該「個人の情報」が開示された場合であって も、当該情報の「主体」が開示を求めるものであることから、何らの障害も生じ得 ないと主張する。 しかし、条例に基づく情報公開制度は、広く何人に対しても開示請求を認めるも のであり、開示・非開示の判断に当たっては、開示請求者が誰であるかによって結 論を異にすべきものではなく、何人でも等しく同様に扱うことになるので、審査請 求人の主張は採用できない。 よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。 (答申に関与した委員の氏名) 渡辺 忠嗣、鴨木 房子、寺田 麻佑、前田 - 5 - 雅英
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