東京都 「K 先生」執筆 【5年生】

倍数・約数
教育同人社 「計算デジドリル活用実践例」
【対象 5年生】
約数の面白さを見つけよう
東京都 K先生
1 はじめに
新学習指導要領の施行に伴い、6年生で学んでいた倍数・約数が5年生で学習することとなり
ました。わたしは、試行期にちょうど5年生を担任していましたので、子どもたちがどのような
反応をするのかを気にしながら学習を進めていった記憶があります。わたしの心配をよそに、そ
の時の子どもたちは、すんなりと学習をしていきました。しかし、倍数や約数の面白さや不思議
さに迫れたかというと少々不満なところがあったのです。
というのも、やはり、教科書ではあまり多くの数の倍数や約数には触れません。特に教科書で
扱う約数は30ぐらいまでの数を基本とし、約数の多い大きい数は扱っていません。これでは面
白さや不思議さを感じるまでにはいかないと思ったからです。
2 デジドリル「約数」 そこで、約数のおもしろさを見つける一つのアプローチとして計算デジドリルの
「5年倍数・
約数」
を使った授業展開を紹介します。
ここには1から100までの数が並んでいます。それらの数字を選択することで、選択した数
のすべての約数を簡単に表示してくれます。
…1…
例えば、「24の約数は?」と発問した時には、24の数字をクリックすることで、
「1,
2,
3,
4,
6,8,12,24」という24の約数をすぐに出すことができます。
通常1から100まですべての数の約数を求めるという経験をさせることはありませんので、
ワンクリックで簡単に約数が出てくるということは児童にとっても驚きがあるのではないでしょ
うか?そして、1から100までのすべての数の約数を見ることでおもしろいきまりや発見が見
えてくるのです。
3 授業展開例
では、このソフトを使ってどのような授業に乗せていけばよいのでしょう。
わたしは、倍数・約数の単元の終盤でこのソフトを使いたいと思います。
(もちろん、単元前半
の約数の問題を解くときにも使うことはできます。)単元の前半では約数の意味や約数の見つけ
方、素数について学習をしています。よって、基本的に子どもたちは単元の終盤ではある程度の
約数を求めることはできるようになっていると思います。これらの基礎的な力をもとに教師との
やり取りの中で、1から100までの数の約数を見つける面白さに目を向かせていければよいと
思うのです。
では、具体的な流れで説明します。
❶ 約数の個数が一番少ない数
「1から100までの数の中で約数が一番少ない数は何かな?」
と問います。すると多くの子
が「1」
と答えるはずです。約数がもっとも少ない整数は1です。1を素数と考える子もいま
すが、1は素数ではありません。(素数…1とその数以外に約数のない整数)
ここでもう一度
確認をしておくことも大切だと思います。
❷ 約数の個数が一番多い数 (1から100までの数で)
そこで
「じゃあ次に先生が何を問題に出すかわかるかな?」と問うと、多くの子が
「1から
…2…
100までの数の中で約数が一番多い数は何かな?です。
」
と答えるはずです。この子どもか
らの言葉を拾い、実際に約数が一番多い数を見つけさせます。これは答えが一つではないの
で、すべての答えが出るように考えを拾い上げていきます。この際に、子どもが答えた数の
約数をこのデジドリルを使えばすぐに確認することができるので効果的です。
ちなみに、約数が1番多い数は、12個持っている
「60、72、84、90、96」
です。
(テクニックとして、一つ目の答えが出た時に
「すごい、大正解。じゃあ、次の問題に進むよ」
などととぼけると子供たちから「まだある」
の大合唱が生まれてきます。こんなちょっとした
言葉の工夫をいれるだけで、子どもたちはどんどん集中してきます。
)
❸ 約数の個数が奇数の数
約数の個数が一番少ない数、一番多い数をこれまで確認してきました。そこで次の問いは、
「約数の個数が奇数個の数」を探します。基本的に約数の個数は偶数個になっています。例え
ば7の約数は1と7(2個)、12の約数は1と2と3と4と6と12
(6個)
のように、普通
は約数の数は偶数個になります。しかし、平方数と呼ばれるもの
(○を二乗した数)
は約数の
個数が奇数個になります。なぜなら、下の図Bのように、二乗する数が平方数の約数のちょ
うど真ん中にあたり、その数のペアとなる数がないからです。
12の場合
●約数を求めて小さい順にならべます。
12 の約数 1 2 3 4 6 12
のように、1×12=12(1と12はペア)
、
2×6=12(2と6はペア)
、3×4=12(3と4はペア)
。
12の約数は、偶数個の6個となる。
16(4の平方数)の場合
16 の約数 1 2 4 8 16
1×16=16(1と16はペア)
、2×8=16(2と8はペア)
。
しかし、4はペアを作る相手が自分自身の数のためペアがない。そのため、
16の約数は、奇数個の5個となる。
…3…
以上をふまえて、子ども達にはデジドリルでいくつか数を選び、約数を示します。(ここは、
平方数以外の数字を意図的に選びます。)そこで大げさに「あれ、約数の数は全部偶数だね、じゃ
あ約数は必ず偶数個あるんだね。」ととぼけます。そうすると授業の始めに取り上げた約数の個数
が一番少ない数の1に目が向き、「先生、1は約数が1つだから奇数個じゃない。」というところ
に気がつきます。そこから「1は特別だからじゃない?」
とさらにとぼけます。すると子どもたち
の中には
「ほかにもないかな?」という思いが生まれ、約数を見つけようと動き出します。1の次
の平方数の4も約数の数が奇数個だということに気がついたら、子どもたちはもっとないかなと
探し始めます。
子どもたちが見つけ出した数をデジドリルで確認し、黒板に並べていくことで約数が奇数個の
数は同じ数をかけた数になっているというきまりを発見していくことでしょう。
1(1) 1×1
4(1・2・4) 2×2
9(1・3・9) 3×3
16(1・2・4・8・16) 4×4
25(1・5・25) 5×5
36(1・2・3・4・6・9・12・18・36)
6×6
49(1・7・49) 7×7
64(1・2・4・8・16・32・64)
8×8
81(1・3・9・27・81) 9×9
100(1・2・4・5・10・20・25・50・100)
3 おわりに
今回は約数の個数が最少の数、最多の数、奇数の数を問う
ことで約数の面白さを見つける授業展開を紹介しました。こ
れ以外にも1から100までの中に素数はいくつあるかや約
数の個数が4つのもの、6つのもの、など見つけていくのも
面白いと思います。この様な展開ができるのも計算デジドリ
ルを有効に活用できるからだと思います。
ぜひ、みなさんもうまく利用して
授業に生かしてみてください。
…4…
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