みらい北極航海におけるオゾンゾンデ観測 ○大島和裕(海洋研究開発機構) ,佐藤和敏(総研大, 海洋研究開発機構),猪上淳(極地研, 海洋研究 開発機構) 2014 年のみらい北極航海 MR14-05 では,北極航海では初の試みとしてオゾンゾンデ観測を行った。 オゾンゾンデ観測は,北極沿岸の幾つかの観測点を含めた世界各地で 1 週間に 1 回行われているが, 北極海上では行われていない。衛星観測では 1 日ごとの全球の空間分布を把握することができるが, 得られるデータは大気の全層で積算したオゾン全量であるため鉛直構造はわからない。今回の観測は, 9 月 6 日から 24 日までの定点観測(74°45’N,162°00’W)期間中に 10 発のオゾンゾンデを放球し, 北極海上においてはこれまでにない高頻度観測であった。この観測では幾つかの失敗はあったものの, 成層圏のオゾン層のピークを捉え,太平洋側北極海のチュクチ海上におけるオゾン濃度の鉛直構造の 日々の変化を把握できる約 30km までの観測データを取得できた。 観測されたオゾン層のピークは 19-20km にみられ(図 1),オゾン全量は 250~290 DU(ドブソン単 位)程度であった。このオゾンゾンデで観測されたオゾン全量は衛星観測とほぼ一致する値であった。 また,衛星観測の水平分布では観測期間を通して,定点観測の位置が周囲に比べてオゾンの少ない場 所であったが,これにはこの季節の成層圏の大気循環場が影響していると考えられる。高さごとにオ ゾン濃度を比べると,24km 付近の成層圏と 10km 付近の対流圏界面で時間変化が大きかった(図 1) 。 前者はプラネタリー波に伴う成層圏の大気循環の影響を受け,後者は高低気圧の通過や季節変化に伴 う対流圏界面の変化に対応していた。 (a) 図1 (b) オゾンゾンデ観測によるチュクチ海上のオゾン濃度(mPa)の鉛直プロファイル。 (a)オゾンゾンデ 観測は定点観測(74°45’N, 162°00’W)期間の 9 月 6 月から 9 月 24 日まで 2 日おきに行った。 (b)青線は 10 回の観測の平均値,灰色の陰影は高さ毎の±1σ(標準偏差)の幅を示す。
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