世界最大の前弧マントル断面: しんかい6500とABISMOによる南部マリアナ海溝調査 ○道林克禎(静岡大学),嶋田優香・大家翔馬・照峰直伸・上原茂樹(静岡大学) 小原泰彦(海上保安庁/海洋研究開発機構),石井輝秋(深田地質調査所) 針金由美子(産総研),布浦拓郎・宮崎惇一・高井 研(海洋研究開発機構) マリアナ海溝は全長2550km,幅70kmで6000m以上の深度をもち世界最深のチャレン ジャー海淵が位置する世界で最も深い海洋である.マリアナ海溝は北部と南部で性質が大きく異なる. 北部マリアナ海溝は典型的な島弧—海溝系を構成しているのに対して,南部マリアナ海溝は島弧と海溝 が交差する特異な構造をもつ.そのため,北部マリアナ海溝が典型的な前弧に位置しているのに対し て,南部マリアナ海溝は島弧断面を横切る姿勢をもつ.マリアナ海溝深部にはかんらん岩が露出して いることは1970年代から知られているが,北部と南部ではかんらん岩の岩石学的特徴は地形的特 徴と同様に同じではない. 私たちのグループは,小原泰彦を中心として約10年間にわたり南部マリアナ海溝陸側斜面の調査 を続けてきた.主な目的は南部マリアナ海溝の地形的特徴の原因を調査することと海溝かんらん岩の 岩石(化学)的・構造(物理)的性質を明らかにすることであった.しかし,7000mから110 00mまでの4000mの超深海斜面は未調査域として残されており,超深海潜水探査機(または潜 水船)の登場までは超深海底調査は不可能である.このギャップを少しでも補うために,2008年 に ABISMO が南部マリアナ海溝チャレンジャー海淵水深10350mで採取した堆積物コアからかん らん岩起源と考えられる多数のオリビンなどの重鉱物の分析を試みた. 本研究では,これまで蓄積してきたかんらん岩のデータとチャレンジャー海淵堆積物の鉱物データ を比較して,6000m以上の高低差をもつ南部マリアナ海溝陸側斜面の物理化学的性質を考察した. なお,本研究は今後申請する予定である地球深部掘削船ちきゅうによる前弧マントル掘削計画への 事前研究と位置づけられる.発表では本掘削計画についての概要も紹介する予定である. 図1.かんらん石の Mg#.●はかんらん岩,▲は堆積物中のかんらん石.
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