核融合炉プラント・制御技術調査専門委員会 設置趣意書 原子力技術委員会 1.目的 これまで建設・運転されてきた核融合実験装置はいずれもプラズマ物理および工学分野での実験を目的とし た実験装置であった。これに対して,今後設計・建設が予定されている核融合原型炉およびその後に続く実用 炉は発電し電力を供給するプラントである。この違いにより,原型炉以降の炉においては,実験装置では必要 とされなかったプラントとしての制御技術が必要となる。そこで,原型炉以降に必要とされるプラントおよび その制御技術に関して調査・検討することで,実用炉に向けた今後の技術開発に資する。 2.背景および内外機関における調査活動 現在建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)や国内において運転中の大型ヘリカル装置(LHD)などの核融 合プラズマ実験装置でも,個別の構成機器あるいは全体装置としての制御は行われている。たとえば実験装置 を構成する,極低温ヘリウムを供給するヘリウム液化設備などでは半年近い連続稼動を必要としており,その 運転制御は他の産業プラントと同様なものとなっている。しかしながら,装置全体としてはプラズマ実験を主 目的とした実験装置の枠に収まっており,核融合原型炉以降の装置と比べると,核融合出力による発電を行わ ない,プラズマ放電を伴う運転時間が短時間である,という違いがあり,全体の制御設計にもそれが反映され ている。 原型炉および実用炉においては,核融合出力による発電および連続運転が必要であるのみでなく,制御の目 的もプラズマ実験のための制御から電力供給のための制御と大きく切り替える必要がある。原型炉における計 測制御の検討は現在まさに着手されはじめたところである。国内においては,松田慎三郎氏が中心となって 2013 年度に核融合科学研究所の共同研究として取りまとめを行った「原型炉計装制御報告書」がある。これは, ITER での計装制御に基づき,原型炉の炉心プラズマ計測に関して,炉心制御を行う観点から必要となる計測 事項を取りまとめたものである。そのため,発電制御に関する事項などは対象とされていない。また,他の設 計検討においても炉心部の検討はされているが,発電制御まで含めた連続稼動する電力供給プラントとしての 運転およびその制御検討には着手されていないのが現状である。 3.調査検討事項 核融合原型炉に向けた研究開発に関して,以下の事項に重点を置いて調査・検討する。 ・発電まで含めた核融合炉プラントとしての運転およびその制御に必要な技術項目 ・他のプラントで実用および研究されている制御技術の核融合プラントへの適用可能性 4.予想される効果 これまでの核融合原型炉に関する検討は,核融合プラズマに関する研究者が中心となって行われてきている。 しかしながら,電力供給プラントとしての実用炉,およびその前身となる原型炉の設計,建設,運転において は,電力や熱機械の技術者を含めたより広い分野からの協力が必要不可欠である。 核融合炉を「電力供給プラント」と位置づけた本調査により,原型炉で必要となる運転およびその制御技術 を抽出し提示することで,原型炉設計検討の推進に直接の寄与となると同時に,従来の核融合研究分野の枠を 越えた研究者および技術者の参画を促し,実用炉に向けた研究開発の促進効果が期待できる。 1/2 5.調査期間 平成 27 年(2015 年)1 月~平成 28 年(2016 年)12 月 6.活動予定 委員会 4 回/年 見学回 1 回/年 幹事会 4 回/年 7.報告形態 技術報告書としてとりまとめる。 2/2
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