先週の問題 • 逆選択が起こる場合、シグナリングが有効に 働くときありますが、この時、シグナルは意図 的に送られています。日常生活では、生物界 でのシグナルのように、無意識に送られてい るシグナルはあるでしょうか?気が付いたシ グナルを説明してみましょう。 解答例(1) • シグナリング – 情報の非対称性 → 逆選択 – 逆選択の解決方法 – 情報を持っている側が、その行動を通じて情報を 伝えようとすること • 無意識のシグナル – ほとんどの感情表現 – ポーカーにおけるTell(癖) 解答例(2) 行動1 (4、2) シグナルA タイプ1 行動2 受け手 確率p (3、-1) (4、2) シグナルB 自然 (3、-1) (1、-1) 確率(1-p) シグナルA タイプ2 受け手 行動1 シグナルB 行動2 (-2、2) (4、-1) (1、2) 日本の人事システム 日本型の人事システムの特徴 • 終身雇用制 – 従業員を解雇しにくい – 長期間勤続可能 • 年功序列制 – 長く勤めるほど、高い地位と給料 • 米国型の人事システム – 市場を中心としたシステム – 職務給、専門化 やる気を引き出す仕組み • 情報の非対称性に対処する工夫 – モラルハザ-ド • • • • 年齢賃金プロファイル 長期勤続 職能給 出世競争 – 逆選択 • スクリーニングとしての年功序列制 • シグナルとしての学歴 年齢賃金プロファイル • 年齢賃金プロファイル – 年齢と賃金との関係 • 日本の年齢賃金プロファイルの特徴 – 傾きが大きい – → 若年期に低賃金、定年間際に高賃金 – → 生産性に比べて 日本の年齢賃金プロファイル 賃金 生産性 20 30 40 50 60 長期に勤める従業員 • 従業員の選択 – 日本の年齢賃金プロファイル – → 従業員は転職せずに長く務める – → 若年期の貸しを返してもらう • 結果的に長期勤続 – 転退職の減少 – → 訓練の減少 → 企業の効率性 長期勤続 • 長期勤続の効果 – 企業特殊的熟練の形成 • その企業で自分が成功するための努力を引き出す – 会社のために働く • その企業自体が成功するための努力を引き出す 企業特殊的熟練の形成 • 企業特殊的熟練 – その企業でのみ生産性を上げる熟練 • その会社の経営のやり方 • 会社の機械の特徴 • その会社の人間関係 – 長期勤続によるインセンティブ • 一般的熟練 – どの会社でも通用する熟練 – 転職のある場合 会社のために働く • 長期勤続 – 年功を獲得してからの高い地位と賃金 – → 企業の成功 → より高い地位と給料 • 会社のために働く – 工場労働者の生産への積極的な関与 • 品質改善のため QC活動、提案活動 – → 製造業の高い生産性 職能給 • 年功序列制 – 年齢給:年齢に応じた給料 – 職能給:能力に応じた給料 • 職能給 – 労働者の仕事を行う能力に比例 – 能力は勤続年数と共に上がる • 職務給 – 仕事に応じて給料が決まる 職能給と職務給 • 職能給の特徴 – 長期的に役立つ、幅広い熟練を形成 • 仕事のローテーション • 一時的には生産性の低下、総合的な能力は上がる – 状況に応じて生産過程を変更可能 • 多能工、内部労働市場の発達 → 安定した労使関係 • 職務給 – 仕事の変更を嫌う → 専門化 – 生産過程の変更 → 解雇 → 抵抗され困難 出世競争 • 昇進 – 年功序列制: 昇進 → 賃金の上昇 – 終身雇用制: 内部昇進 – 長期的な査定 • トーナメント – 出世競争は長期的なトーナメント – 長期的なインセンティブ契約 – 業績給=短期的なインセンティブ契約 採用時のスクリーニング • 日本型の人事システム – 長期に勤続して企業特殊的熟練を着実に形成で きるタイプの労働者 – 長続きしない、こつこつ努力できない → 敬遠 – 終身雇用 → 採用は慎重 • 年功序列 – スクリーニングの役割 – 労働者の自己選択 採用時のシグナリング • 学歴によるシグナリング – シグナル=一流大学卒 • 長期的な努力 → 一流大学 • 一流大学卒=長期的な努力ができる能力のシグナル – 受験戦争 → シグナルの効果の引き上げ • 情勢変化 – 耐えて努力することを求めない企業 – 長期勤続を求めない企業 → シグナルではない 日本型の人事システムのデメリット • 少ない転職と抵抗される解雇 – 資源配分の歪み – 会社経営への制約 • 解雇できないので、不採算部門を温存 • 高い費用で従業員を再訓練 • 他分野への進出で雇用確保 – 経営資源の集中を妨げる 日本型と米国型の比較 • 米国型 – 転職や解雇が容易 – 変動が激しい企業に向く – 長期的に高い生産性を実現することは困難 • 日本型 – 安定して成長している企業向き – 長期的に熟練を形成 → 高い生産性 業績給 • 日本経済の低成長 → 人事システムの変化 – 産業構造の変化 → 中途採用の増加 – 低成長 → 中高年社員の厚遇困難 – 業績給、成果給、年俸制の導入 • 業績給 – 短期的な評価で報酬を決定 – 給料が下がる可能性 – 短期的なインセンティブ – 年功序列制に代わるインセンティブ 業績給のデメリット • 業績給 – 短期的なインセンティブ – → 長期的に評価されるチームワーク – → 企業特殊的な熟練の形成に支障 • マルチタスクの状況での努力配分 – インセンティブの適切な設計が必要 – 業績給では、評価が難しい – → 360度評価 部下や取引先 人事システムの今後 • 相互補完性 – システムの要素が相互に密接に関係 – 手直しには、全体を見直す必要 • 3つの可能性 – 米国型:職務給、専門化、流動的な労働市場 – 従業員を専門職と総合職に分割 • 専門職=米国型、総合職=日本型 – 日本型と米国型の折衷案 • 短期の評価 → 短期の金銭的報酬 • 長期の評価 → 昇進 今日の問題
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