ビジネス・レーバー・モニター特別調査 ビジネス・レーバー・モニター特別調査 過去三年間に半数弱の企業が賃金制度改定を実施 11.1 賃金制度関連 (複数回答) ①若年層の賃金カーブの早期立ち上げ (三六・八%)がもっとも多く、次い で②年齢・勤続給のウェート縮小(三 一・ 六 %) 、③高齢層から働き盛り世 代への原資配分の見直し (二六・三%) な ど( 平 均 選 択 数 二・ 二 個 ) 。これに 対し、今後三年間に見直しを行う企業 で は( 同 )、 ① 仕 事 と 賃 金( 生 産 性 ) の乖離の是正(六二・五%)が最多で あり、これに②総額人件費の見直し(五 〇・ 〇 %)、 ③ 職 務 給、 役 割・ 職 責 給 のウェート拡大および③成果・業績給 25.9 行った企業の五七・九%は製造業なの に対し、今後三年間に見直しを行う企 業の七五・〇%は非製造業である。過 去三年間に賃金制度改定を行った企業 の 具 体 的 な 内 容 を み る と( 複 数 回 答 )、 図表1 賃金制度改定の実施状況と今後の見通し 見直し内容のトップは 仕事と賃金(生産性)の乖離の是正 正規従業員の賃金制度について、過 去三年間に何らかの「見直しを行った」 か、今後三年間に「見直しを行う予定 がある」企業を対象(計二七社)に、具 体的な見直し内容を尋ねた(複数回答)。 結果をみると、もっとも多かったのは ①仕事と賃金(生産性)の乖離の是正 (中堅・高齢、再雇用層等)(三三・三%) であり、これに②若年層の賃金カーブ の 早 期 立 ち 上 げ( 二 九・ 六 %)、 ③ 職 務給、役割・職責給のウェート拡大お よび③年齢・勤続給のウェート縮小(と も に 同 率 の 二 五・ 九 %)、 ④ 高 齢 層 か ら働き盛り世代への原資配分の見直し および④総額人件費の見直し(同二二・ 二 %) 、 ⑤ 成 果・ 業 績 給 の ウ ェ ー ト 拡 大(一八・五%)――などが続いた(平 均選択数二・四個)(図表1)。 総じて、中高齢層や再雇用層から若 年層等への配分見直しが賃金制度上、 喫緊の課題になっている様子が見て取 れる。また、年齢・勤続給から役割・ 職 責 給 や 成 果・ 業 績 給 へ の シ フ ト と いった、引き続きのトレンドも窺える。 なお、過去三年間に賃金制度改定を 予定はない, 57.1% 22.2 22.2 25 ――二割弱が今後三年間における見直しを予定 JILPT調査・解析部が一一月一 〇日~同月末にかけて実施した、二〇 一四年・第3四半期の業況実績等に関 する「ビジネス・レーバー・モニター 調査」(二〇一五年一月号参照)では、 正規従業員の賃金制度の改定状況や今 後の見通しなどについても把握した。 それによると、正規従業員の賃金制度 について、過去三年間に何らかの「見 直しを行った」企業は四六・三%にの ぼり、見直しを行わなかった企業でも、 今後三年間に「見直しを行う予定があ る」割合が三八・一%(全体では一九・ 五%)となった。昨今の経営環境の変 化等を踏まえ、正規従業員の賃金制度 を改定する企業が少なくない様子が浮 き彫りとなっている。今月号の特集に 関連して、こうした調査結果の概要を 紹介する。 なお、調査対象は、当機構の企業モ ニターである。実査の結果、四四社の 回答を得たが、大手企業に絞ってその 傾向を確認するため、今回は上場企業 であるか、従業員規模一〇〇〇人以上 のいずれかの要件を満たす四一社(六 一・二%)の回答を集計した。属性は、 上場企業が八〇・五%で、従業員規模 一〇〇〇人以上が九二・七%。また、 製造業が五一・二%、非製造業が四八・ 八%と、製造業のウェートが高い点に 留意する必要がある。 0 29.6 30 見直しを 行った, 46.3% 行って いない, 51.2% 行う予定 がある, 38.1% 14.8 14.8 14.8 15 (平均選択数 2.4個) 18.5 20 無回答 ,2.4% 無回答 ,4.8% (正規従業員の賃金制度について 過去3年間に「見直しを行った」 あるいは今後3年間に行う予定が 「ある」と回等したn=27社) 25.9 過去3年間における 賃金制度改定の実施状況 今後3年間の 見直し予定 3.7 5 7.4 10 33.3 35 % Business Labor Trend 2015.3 32 ビジネス・レーバー・モニター特別調査 ⇔ 図表3 管理職の育成・登用上の課題 非管理職層 Business Labor Trend 2015.3 2.4 2.4 10 14.6 14.6 20 (平均選択数3.4個) (複数回答) 22.0 26.8 26.8 30 34.1 40 46.3 50 のウェート拡大(同率の三七・五%) などが続く(同一・二個) 。 0 割を占めている。たとえば、④係長級 で、後者が前者を大きく上回った(他 を特段、設けていない」などとして回 では「年齢・勤続給」が二七・五%、「職 に「何とも言えない」が一七・一%等)。 答不可を除く有効回答企業の集計で、 能給」が三七・二%、「職務給、役割・ 「課長相当職」については最短で平均 すなわち、大手企業における管理職 職責給」が二五・〇%、「成果・業績給」 の育成・登用は、依然として「内部育 三三・七歳、標準で三八・四歳となっ が一〇・三%。また、⑤一般層では、「年 成・昇進を重視」しつつも、 近年は「年 た。「部長相当職」では、最短で平均四 齢・勤続給」が三六・九%、「職能給」 齢に関係なく優秀者を抜擢・登用」す 〇・三歳、標準で平均四六・三歳だった。 が三三・九%、「職務給、役割・職責給」 る傾向が強まってきた様子が窺える。 管理職の育成・登用上の課題は が二一・二%、「成果・業績給」が八・ そこで併せて「早期選抜」の実施状況 PM化による多忙化(八割超)や 〇%となっている。 を尋ねると、「実施している」企業が半 女性管理職の対象者(六割超)等 こうしたなか、人事制度の運用を通 数を超えた(五六・一%)(「実施して じ、結 果 と し て 年 功 的 な 昇 給・昇 格 と いない」四一・五%、無回答二・四%) 。 こうしたなか、管理職の育成・登用上、 近年感じている課題があるか尋ねると、 なっている職位は(①~⑤の)どこまで 課長・部長相当職の最短・標準登用 ほぼすべての企業(四〇社) が「ある」 か 尋 ね る と、有 効 回 答 企 業( 二 五 社 )の 年齢の実績を尋ねると、「年齢上の基準 と回答した。具体的には(複数 集 計 で、最 多 は ③ 課 長 代 理 級( 一 〇 社 ) 回 答 )、①「 多 忙 化 や プ レ イ ン で あ り、僅 差 で ④ 係 長 級( 九 社 )が 続 き、 グマネジャー化で、管理職本 次いで⑤一般(四社)、②課長級および 来の役割が果たせない」が ①部長級(各一社)となった。 もっとも多く八〇・五%にの 育成・登用関連 ぼった。次いで、多かった順 に、②女性の管理職を増やそ 半数超の企業が早期選抜を実施 うとしても、対象者が少ない・ 本人が望まない(六三・四%)、 ③ライン管理職になれない人 材の有効活用やモチベーショ ン維持が難しい(四六・三%)、 ④管理職候補者の能力・資質 に、世代間でムラがある(三 四・ 一 %)、 ⑤ バ ブ ル 期 等 入 社者に対し、管理職のポスト 数が不足しているおよび⑤過 去の採用抑制に伴い、管理職 の人数確保が困難な世代があ る(同率の二六・八%)―― などとなった(平均選択数三・ 四個)(図表3)。 (調査・解析部 渡辺 木綿子) 今回の調査では、管理職の育成・登 用方針や登用年齢の実績、管理職の育 成・登用上、近年感じている課題など についても尋ねている。結果をみると、 まず、管理職の育成・登用方針として、 「 A. 内 部 育 成・ 昇 進 を 重 視 B. 経験人材の外部調達を重視」のどちら をより重視しているかについては、「A である」が二九・三%、「どちらかとい うとA」 が五六・一%で合わせて八五% 超にのぼった(他に「何とも言えない」 が一二・二%等)。また、「A.年功的 に 育 成・ 登 用 B. 年 齢 に 関 係 な く 優秀者を抜擢・登用」のどちらをより 重視しているかについては、「Aである (どちらかというと含む)」が一九・五% に対し、「Bである(同)」が六一・〇% 60 63.4 70 22.6 26.0 38.3 37.2 33.9 管理職層 (全有効回答企業n=41社) 80 80.5 90 % 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 計 成果・ 業績給 18.3 17.7 7.3 10.3 8.0 職務給 役割・職責給 46.7 42.3 26.3 25.0 21.2 職能給 有効回答 年齢・ 企業数(社) 勤続給 ① 部長級 28 12.3 ② 課長級 28 14.0 ③ 課長代理級 24 28.2 ④ 係長級 26 27.5 ⑤ 一般 28 36.9 33 ⇔ 月例賃金の構成ウェートは 管理職でも三~四割が勤続+職能給 一 方、 月 例 賃 金 の 大 ま か な 構 成 ウェートについて、①部長級~⑤一般 まで五段階の職位別に尋ねたところ、 数値非公開を除く各有効回答企業の平 均で、 管理職層では①部長級の「年齢・ 勤続給」が一二・三%、「職能給」が二 二・六%、「職務給、役割・職責給」が 四六・七%、「成果・業績給」が一八・ 三 % と な っ た( 図 表 2) 。 ま た、 ② 課 長級では 「年齢・ 勤続給」 が一四・ 〇%、「職能給」 が二六・〇%、 「職務給、 役割・ 職責給」 が四二・ 三%、「成果・業 績給」が一七・ 七%となってい る。 「年齢・勤続 給 」の み で は 月 例賃金水準の二 割に満たないも のの、「職能給」 と合わせると三 ~四割にのぼる ことが分かる。 これに対し、 非管理職層では、 「年齢・勤続給」 の割合が管理職 層の倍以上で、 「職能給」と合 わせると六~七 図表2 職位別のみた月例賃金の構成ウェート(%)
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