USコンエナジー (エネルギー・建設会社)

USコンエナジー
(エネルギー・建設会社)
・1990年代に急成長(天然ガスの卸売)
・多角化した多国籍事業を展開
○人事部の組織と職能
①1980~1990初
②1990中頃
③1999以降
三つの時期区分
規制下にある公益企業
エネルギー取引事業の隆盛
本社人事部の再編成
①期:特徴
・トップダウン型 = 伝統的な管理
・事業の多角化に消極的
・大規模な本社人事部スタッフ
ピーク時(約350人)
・従業員:長期勤続、安定・公平雇用
・賃金:全社規模の職務評価制度
②期:特徴
・取引事業部が社の重心に移行
・同事業部にて独自の人的資源アプローチを開発
≒非本社管理
・新事業部による独自政策をCEOが認可
○新しい人的資源政策
内部労働市場の規制緩和
・自由な異動
・ストックオプションを含む成果給の多用
○PACシステム
・取引事業における実力主義的慣行を政策に反映
・業績評価委員会(PAC)が管理する360度評価
→従業員同士の比較、ランク付け
・メリット:評価基準の一貫性により、プロジェクト
を超えた配置転換が容易になる
・デメリット:社内競争の激化
→本社スタッフとの軋轢が増大
・PACシステムを全社規模に拡大適用
・クロス較正の導入
→事業管理者の責任増大
→好調事業へ異動するインセンティブ増大
・取引事業部のスタッフ増加(約250人)
※同時期の本社スタッフと同程度
=本社人事部の管理外に
⇒変革の必要性
③期:特徴
○新システム
・取引事業部の経理責任者を本社人事部長に任命
→本社人事部解体の為
・本社人事部スタッフ削減(約75人)
→専門スタッフは各事業部へ異動、一部重複ス
タッフは解雇
・役員養成等が社長室の担当に
→人事部ではネガティブな印象を与える恐れ
・2001年 全従業員の35%がPACシステムの適
用下に
目標:数年内に100%→全従業員へのストックオプ
ション提供→自社株価への関心増大
○PACにおける実際のランク付け
・収益創出への比重が増大(取引事業部モデル)
→本社人事部、その他部門スタッフ
:会社に収益をもたらす能力を示す必要性
○問題点
①新人事部長の任務
・CEO:良好な従業員関係構築を希望
・社長:人事に価値を認めず
→本社人事部の権力は限定的
②本社人事部の無力と影響
・PACシステムの弱点:比較評価が困難
・社長による政策策定の偏重
→人事部:政策運営に関係=不要
③PAC委員会
・業績偏重傾向→人的資源の原則に反する
④自由市場の機能不全
・成長鈍化→配置転換が困難に
⑤事業単位同士の関係性
・優秀人材の奪い合い
・協力し合おうとしない
→会社にとっての利益という観点が欠如
⇒全社統制の為には、人事政策を企業文化関
係に集中する必要がある
○結論
アメリカ企業の事例研究からの発見
①本社人事部職能の多様性(強~弱)
◆多様性の要因
a.アメリカ企業で特徴的
・進歩的な非組合型モデル(人事部による従業員権利
の擁護)
b.日米間で共通
・類似点を持つペア企業(宅配会社、多角化電機会社)
・同じ様な技術上の要請と類似した顧客に直面
・企業文化の普及
⇒各国で共通して見られる産業特殊的な現象が台頭
※強力な国別モデルの持続
・アメリカ:市場志向、株主志向、低教育研修費、
従業員=弱小ステークホルダー
:権力中枢と人事担当役員との関係性が
多様
:人事部の社内ステータスが多様(戦略
決定、管理者との関係性)
→いずれも日本の場合とは大きく異なる
②アメリカ企業の二つのパターン
a.資源ベースの事業戦略と人的資源戦略を追求する企
業群:US運輸、USエレクトロ
(競争優位を生み出す企業特殊的スキルを持った従
業員が基盤)
・人的資源政策:組織志向、緩やかなステークホルダー
主義
b.市場が求める方向に人的資源を委ね、短期の株主利
益を追求する企業群:US部品工業、USコン・エナジー
(汎用スキルを持った従業員が主体)
・人的資源政策:市場に依拠、株主利益追求志向
※相違を生む要因
・CEOの価値観:a企業群は創立者による経営
・多角化、複数事業部制組織における財務重視戦略
:b企業群に顕著
→資源のフレキシビリティーと人的資本への投資は
調和しない
○人事担当役員の影響力と企業の戦略選択の関係性
→明確にすることは困難
◆理由
・アメリカでは人事担当役員の影響力がCEOとの個人的
な関係に大きく依存
・事例研究の数が少ない