New Synthetic Strategy of Organosilicon Compounds Utilizing

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New Synthetic Strategy of Organosilicon Compounds Utilizing
Palladium-Silylene Species( Abstract_要旨 )
Masuda, Kohei
Kyoto University (京都大学)
2011-03-23
http://hdl.handle.net/2433/142246
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
( 続紙 1 )
京都大学
論文題目
博士(工学)
氏名
増 田 幸 平
New Synthetic Strategy of Organosilicon Compounds Utilizing Palladium−Silylene Species
(パラジウム-シリレンを鍵化学種として用いる有機ケイ素化合物の新合成戦略)
(論文内容の要旨)
本論文は、二価ケイ素化学種であるシリレンを活用する有機ケイ素化合物の触媒的
合成法開発に関するものである。パラジウム-シリレン中間体の形成と反応制御に基
づいた触媒的炭素-ケイ素結合形成反応についての研究結果が示されており、序章と
五つの章からなっている。
序章では、有機ケイ素化合物の学術ならびに産業における重要性とともにそれらの
合 成 法 が 概 説 さ れ 、シ リ レ ン の 化 学 に つ い て の 背 景 と 、本 研 究 の 要 旨 が 示 さ れ て い る 。
第一章では、ケイ素上にヘテロ官能基を有するシリルボロン酸エステルの合成法に
ついて述べている。シリルボロン酸エステルは、有機分子にシリル基とボリル基を同
時に導入する反応剤として有用であるが、従来の合成法ではケイ素上に三つの有機基
を有するものしか簡便に調製することができなかった。本研究では、ケイ素求核剤と
ホウ素求電子剤の反応によるケイ素-ホウ素結合形成とシリルボロン酸エステルのケ
イ素上での置換反応に基づいた新しい合成経路が確立されており、ケイ素上に塩素、
フッ素、アルコキシ基、およびジアルキルアミノ基を有するシリルボロン酸エステル
の実用的合成が達成されている。
第二章では、ケイ素上にヘテロ官能基を有するシリルボロン酸エステルと末端アル
キンのパラジウム触媒反応について述べている。ケイ素上のヘテロ官能基が反応に及
ぼす影響は大きく、フェニル基、クロロ基、およびアルコキシ基が置換していると単
純な付加が進行するのに対し、ジアルキルアミノ基が置換している場合では、シリル
ボロン酸エステルがシリレン等価体として反応することが明らかにされている。結果
と し て 、 二 分 子 の 末 端 ア ル キ ン と 1 分 子 の シ リ レ ン の [2+2+1]環 化 付 加 に よ り 、 2,4-二
置換シロールが位置選択的に合成できることが示されている。位置選択性はパラジウ
ム触媒のリン配位子を選択することで制御可能であり、アルキル鎖の置換した末端ア
ルキンではビフェニル骨格を有するホスフィンを、芳香環の置換した末端アルキンで
は ト リ フ ェ ニ ル ホ ス フ ィ ン を 配 位 子 に 用 い た 場 合 に 、 高 い 位 置 選 択 性 で 2,4-二 置 換 シ
ロ ー ル が 生 成 す る こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。ま た 、2,4-二 置 換 シ ロ ー ル を 出 発 原 料 と
し て 用 い る 、π -共 役 系 を 拡 張 し た 特 徴 あ る 2,3,5-三 置 換 シ ロ ー ル へ の 変 換 反 応 が 達 成 さ
れている。
第三章では、ケイ素上にジエチルアミノ基を有するシリルボロン酸エステルをシリ
レ ン 等 価 体 と し て 用 い る 1,3-ジ エ ン と の 反 応 に つ い て 述 べ て い る 。 熱 分 解 や 光 化 学 的
に 発 生 さ せ た シ リ レ ン が 1,3-ジ エ ン と 反 応 す る こ と は 古 く か ら 知 ら れ て い る が 、 反 応
の制御が困難とされていた。本研究では、パラジウム触媒存在下シリルボロン酸エス
テ ル か ら 1,3-ジ エ ン へ の シ リ レ ン 移 動 が 効 率 的 に 進 行 す る こ と を 明 ら か に し て お り 、
[4+1]環 化 付 加 に よ る 4-シ ラ シ ク ロ ペ ン テ ン の 効 率 的 合 成 が 達 成 さ れ て い る 。 本 反 応 に
は 様 々 な 置 換 様 式 の 1,3-ジ エ ン を 用 い る こ と が で き 、無 置 換 か ら 三 置 換 1,3-ブ タ ジ エ ン
において収率よく対応する環状有機ケイ素化合物を得ている。エステル基やニトリル
基 を 分 子 内 に 有 す る 1,3-ジ エ ン に 対 し て も 、 そ れ ら の 官 能 基 に 影 響 を 与 え ず に 反 応 を
行 う こ と が で き 、5,7-デ カ ジ エ ン の 反 応 で は 、(E,E)体 か ら は cis 体 の 、(E,Z)体 か ら は trans
氏
名
増 田 幸 平
体の生成物を立体特異的に与えることが見出されている。また、ジヒドロシロール生成
物をキノン酸化によってシロールへと変換できることを示し、従来では合成が容易では
ない置換様式のシロール類の効率的な構築を実現している。
第 四 章 で は 、 シ リ ル ボ ロ ン 酸 エ ス テ ル を シ リ レ ン 等 価 体 と し て 用 い る 2-ア ル ケ ニ ル イ
ンドールとのパラジウム触媒環化反応について述べている。第三章で確立した、シリレ
ン と 1,3-ジ エ ン の [4+1]環 化 付 加 が 、 共 役 し た ビ ニ ル 基 を 有 す る ヘ テ ロ 芳 香 環 に 適 用 で き
れば、特徴ある環構造の構築が期待できる。本研究では、アルケニル基と共役したイン
ド ー ル の C2−C3 二 重 結 合 に 対 し 、シ リ レ ン が [4+1]環 化 付 加 す る こ と が 明 ら か に さ れ て お
り、インドールの脱芳香族化を伴う環形成が達成されている。また、アルケニル基の置
換様式によっては、二分子目のシリレンがアリル位炭素-水素結合に挿入することが見
出されている。重水素ラベル実験による特徴的な水素移動が明らかにされており、この
結 果 に 基 づ い た 立 体 特 異 的 [4+1] 環 化 付 加 と ア リ ル 位 炭 素 - 水 素 結 合 へ の シ リ レ ン 挿 入
が関与する反応機構が提案されている。
第 五 章 で は 、パ ラ ジ ウ ム 触 媒 の 存 在 下 に お い て シ リ ル ボ ロ ン 酸 エ ス テ ル か ら 発 生 さ せ
たシリレン等価体とアルケンの反応について述べている。第二章から四章で示された、
ア ル キ ン や 1,3-ジ エ ン の 反 応 と は 異 な る 、 特 徴 あ る 炭 素 - ケ イ 素 結 合 と 、 ケ イ 素 - ケ
イ 素 結 合 形 成 が 明 ら か に さ れ て い る 。エ チ レ ン と の 反 応 で は 2 分 子 の エ チ レ ン と 3 分 子
の シ リ レ ン が 関 与 し た 1,2,5-ト リ シ ラ シ ク ロ ヘ プ タ ン の 生 成 が 示 さ れ て い る 。ま た 、同
様 の 7 員 環 形 成 が 1-オ ク チ ン の 反 応 で も 進 行 す る こ と が 見 出 さ れ て い る 。1,2-ジ シ ラ シ
ク ロ ペ ン タ ン 共 存 下 に お け る エ チ レ ン と シ リ ル ボ ロ ン 酸 エ ス テ ル の 反 応 に お い て 、三 成
分 が 反 応 し た 生 成 物 が 得 ら れ た こ と に 基 づ き 、環 状 ジ シ リ ル パ ラ ジ ウ ム が 関 与 す る 反 応
機構が考察されている。
(続紙 2 )
氏
名
増 田 幸 平
(論文審査の結果の要旨)
本論文は、二価ケイ素化学種であるシリレンを配位子とする活性種の触媒的な発生
に基づいた有機ケイ素化合物合成に関するものであり、得られた主な成果は以下の通
りである。
1)ケ イ 素 上 に ア ミ ノ 基 、 ア ル コ キ シ 基 、 ハ ロ ゲ ン 等 の ヘ テ ロ 官 能 基 を 有 す る シ リ ル ボ
ロン酸エステルの実用的合成法を確立した。
2)パ ラ ジ ウ ム 触 媒 存 在 下 、 ケ イ 素 上 に ジ ア ル キ ル ア ミ ノ 基 を 有 す る シ リ ル ボ ロ ン 酸 エ
ステルがシリレンの合成等価体として不飽和有機化合物と反応することを見出した。
3)末 端 ア ル キ ン と シ リ ル ボ ロ ン 酸 エ ス テ ル の パ ラ ジ ウ ム 触 媒 反 応 で は 、 2 分 子 の ア ル
キ ン と 1 分 子 の シ リ レ ン と の [2+2+1]環 化 付 加 が 進 行 し 、2,4-二 置 換 シ ロ ー ル が 位 置 選
択的に合成できることを明らかにした。
4)1,3-ジ エ ン の パ ラ ジ ウ ム 触 媒 反 応 で は 、 シ リ ル ボ ロ ン 酸 エ ス テ ル か ら の シ リ レ ン 移
動 が 効 率 的 に 進 行 し 、 立 体 特 異 的 な [4+1]環 化 付 加 に よ る 環 状 ケ イ 素 化 合 物 の 精 密 合
成を達成した。
5)2-ア ル ケ ニ ル イ ン ド ー ル が 1,3-ジ エ ン と 同 様 に 反 応 し 、 イ ン ド ー ル 環 の 脱 芳 香 族 化
を 伴 っ て 多 環 式 環 状 ケ イ 素 化 合 物 が 生 成 す る こ と を 明 ら か と し た 。さ ら に 、ア ル ケ ン
部位の置換様式によっては、二分子目のシリレンがアリル位炭素-水素結合に挿入
し、ビスシリル体を与えることを見出した。
6)非 共 役 ア ル ケ ン と シ リ ル ボ ロ ン 酸 エ ス テ ル の パ ラ ジ ウ ム 触 媒 反 応 で は 、 2 分 子 の ア
ル ケ ン と 3 分 子 の シ リ レ ン の 結 合 形 成 が 進 行 し 、 1,2,5-ト リ シ ラ シ ク ロ ヘ プ タ ン が 生
成することを明らかにした。
以上本研究は、シリレンを活用する新しい炭素-ケイ素結合形成手法を確立したも
の で あ り 、有 機 ケ イ 素 化 合 物 合 成 の 新 し い 方 向 性 を 示 す も の と し て 、高 く 評 価 さ れ る 。
特に、シリルボロン酸エステルをシリレン前駆体として用い、パラジウム触媒による
活性化に着目した点は独創的であり、従来法とは一線を画する特徴的な有機ケイ素化
合物合成法を確立したことは、学術上のみならず実際上意義深い。よって、本論文は
博 士 ( 工 学 ) の 学 位 論 文 と し て 価 値 あ る も の と 認 め る 。 ま た 、 平 成 23 年 2 月 22 日 、
論文内容とそれに関連した事項について試問を行った結果、合格と認めた。