[2] 集合、場合の数、確率 [2-1] 集合 [2-2] 場合の数 [2-3] 順列と組合せ [2-4] 確率の基本性質 [2-5] 独立な試行と条件付き試行 [2-1]B 集合 ●数学では、例えば、 「4の正の約数の集まり」のよう に、範囲がはっきりしたものの集まりを集合という。 ●集合を構成する1つ1つのものを要素という。 ●例えば、 「4の正の約数の集まり」を集合 A とすると、 集合 A の要素は{1, 2, 4}と書け、 A {1, 2, 4} が成 り立つ。 ● a が集合 A の要素であるとき、 「 a は集合 A に属する」 といい、 a A と書く。 ●例えば、 2 A であり、 3 A である。 [2-1a]B 集合 ●集合の表し方には、要素の代表を x などで表し、 {} の中の縦線の右に、 x の満たす条件を書く方法もあ る。例えば、 「0より大きく5より小さい実数全体の 集合を B とすると、 B {x | 0 x 5, x は実数} ●有限個の要素からなる集合を有限集合といい、無限 に多くの要素からなる集合を無限集合という。 ● A は有限集合であり、 B は無限集合である。 [2-1b]B 集合 ● A のどの要素も B の要素になっている。一般に、 x A ならば x B が成り立つとき、「 A は B の部分 集合である」といい、 A B と表す。 ●このとき、 「 A は B に含まれる」あるいは「 B は A を 含む」という。 ●2つの集合 A と C の要素が完全に一致しているとき、 A C であり、 A C かつ A C が成り立つ。 ●要素が1つもない集合を空集合といい、 で表す。 ● A の部分集合は次の8個である。 ,{1},{2},{4},{1, 2},{1, 4},{2, 4},{1, 2, 4} [2-1c]B 集合 ●2つの集合 P と Q に対して、P と Q のどちらにも属 する要素全体の集合を、 P と Q の共通部分といい、 P Q で表す。 ●また、 P と Q の少なくとも一方に属する要素全体の 集合を、 P と Q の和集合といい、 P Q で表す。 ● P Q {x | x P かつ x Q} P Q {x | x P または x Q} [2-1d]B 集合 ●ここで、あらゆる集合を含むような非常に多くの要 素をもつ集合を全体集合と呼び U で表すことにする。 ● U の部分集合 P に対し、P に属さない U の要素全体 の集合を、U に関する P の補集合といい、P で表す。 ●このとき以下が成り立つ。 U , P P , P P U , P P ●ド・モルガンの法則 P Q P Q, P Q P Q [2-1e]B 集合 ●集合 A の要素の個数が有限であるとき、その個数を n (A) で表す。 n () 0 である。 ●全体集合を U とすると n ( A ) n (U ) n ( A) が成立。 ●また、 n ( A B) n ( A) n ( B) n ( A B) も成立。 ●集合の応用を考えるときには以下のベン図を用いる。 U A B [2-2]B 場合の数 [例題 1] 毎年秋に行われるプロ野球のクライマックスシリー ズのファーストステージは、リーグ3位チームと2 位チームが戦って、先に2勝したチームがファイナ ルステージに進むことになっている。リーグ3位チ ームが勝ちあがるケースは何通りか?ただし、引き 分けはないものとする。 [2-2a]B 場合の数 [解答1]下図のとおり3通り。 1試合目 2試合目 3試合目 ○ × ●上図を樹形図という。 ○ × ○ ○ ○ [2-2b]B 場合の数 ●和の法則: 事象 A と事象 B の起こり方に重複はないとき、A の 起こり方が a 通りあり B の起こり方が b 通りあれば、 A または B の起こる場合は a+b 通りある。 ●積の法則: 事象 A の起こり方が a 通りあり、そのどの場合に対 しても事象 B の起こり方が b 通りであれば、A が起 こり、そして B が起こる場合は a×b 通りある。 [2-2c]B 場合の数 [例題 2]大小2個のさいころを投げたとき目の和が 5 の 倍数になるのは何通りか? [解答 2]まず目の和が 5 になるのは(1,4), (2,3), (3,2), (4,1)の 4 通り。10 になるのは(4,6), (5,5), (6,4)の3 通り。なので、合計、7 通り。←和の法則 [例題 3]大小2個のさいころを投げたとき全ての目が 奇数である場合は何通りか? [解答 3]各さいころの出方は3通り。全ての目が奇数で ある場合は 3×3 で 9 通り。←積の法則 [2-3]B 順列と組合せ ●3個の数字 1,2,3 から2個を取り出して並べてでき る2桁の整数は何個か? ●十の位にくる数字は3通りで、一の位にくる数字は 2通りなので、6個の整数(12,13,21,23,31,32)が できる。 ●このように、異なる n 個のものから異なる r 個を取 り出して並べる順列の総数を n Pr とすると、 n Pr n(n 1)(n r 1) [2-3a]B 順列と組合せ ●特に、異なる n 個の全てを並べる順列の総数は n Pn n(n 1)1 n! n! ●したがって、 n Pr も成り立つ。 (n r )! ● n! を n の階乗という。 ●定義上、 n P0 1, 0! 1 とする。 [2-3b]B 順列と組合せ ●ものを円形に並べる順列を円順列という。 ●たとえば、1,2,3 も 2,3,1 も同じ円順列である。 ●異なる n 個の円順列の総数は (n 1)!となる。 ●異なる n 個のものから重複を許して r 個を取って並 べる順列を重複順列といい、そのような順列の総数 r は n 通りある。 [2-3c]B 順列と組合せ ●3個の文字 a,b,c から、異なる2個を取り出して文字 の組を作るとき、次のような組が作れる。 {a,b}, {a,c}, {b,c} ●このように、ものを取り出す順序を無視した組を作 るとき、これらの1つ1つを組合せという。 ●異なる n 個のものから異なる r 個を取り出して作る 組合せの総数を n Cr とすると、 Pr n(n 1) (n r 1) が成立。 n Cr r! r (r 1) 1 n [2-3d]B 順列と組合せ ●このとき以下が成り立つ。 n! , n C1 n, n Cn 1, n Cr r!(n r )! n C0 1, n Cr n Cn r . [2-3e]B 順列と組合せ [例題 4]男子4人、女子3人の中から3人を選んで組を 作るとき、女子が少なくとも1人は含まれる組は 何通りか? 7 65 [解答 4]7人から3人の選び方は 7 C3 35 3 2 1 選ばれた3人が全て男子である選び方は 4 C3 4 したがって、 35 4 31. [2-3f]B 順列と組合せ [例題 5] 5人を次のように分けるとき、分け方は何通 りあるか。(1) 2人部屋 A, B と、1人部屋 C の3 部屋に分ける。(2) 2人、2人、1人に分ける。 [解答 5] (1) 部屋 A の2人を決める→ 5 C2 通り。残りの 3人から2人を選んで部屋 B にする→ 3 C2 通り。 残り1人は自動的に部屋 C になる。したがって、 5 C2 3 C2 30 (2) 部屋 A, B の区別をなくすと組合せは半分の 15 通りになる。 [2-3g]B 順列と組合せ [例題 6] a が3個、b が2個、c が1個あるとき、これ ら6個を1列に並べる順列は何通りあるか。 [解答 6] 6個の中から a を並べる組合せは 6 C3 通り。 残り3個の中から b を並べる組合せは 3 C2 通り。 残りは c に自動的に割り振られるから、 6 C33 C2 60 [2-4]A 確率の基本性質 ●試行:同じ条件のもとで繰り返すことができる実験 や観測のこと。例えば、さいころを投げる。 ●事象:試行の結果として起こる事柄。 ●事象 A の確率: 事象Aの起こる場合の数 P( A) 起こりうる全ての場合の数 ●例えば、1個のさいころを投げるとき偶数の目が出 る確率は 0.5 だが、どの目が出るかは同様に確から しいことを前提にしている。 [2-4a]B 確率の基本性質 ●事象と集合は区別せず用いる。 ● A と B の積事象→ A と B がともに起こる事象 → A B ● A と B の和事象→ A または B が起こる事象 → A B ●2つの事象 A と B が同時に起こらないとき、A と B は互いに排反事象であるという。 ●空集合 で表される事象を空事象という。 [2-4b]B 確率の基本性質 ●どのような事象 A についても、 0 P( A) 1 ●事象 A と B が互いに排反であるとき、 P( A B) P( A) P( B) ←加法定理 ●事象 A と B が互いに排反でないとき、 P( A B) P( A) P( B) P( A B) ●事象 A の余事象を A とすると、 P( A) P( A ) 1 [2-4c]B 確率の基本性質 [例題 7]1から5までの番号札を、でたらめに横1列に 並べたとき、両端のいずれかが偶数である確率 を求めよ。 [解答 7]全ての場合の数は 5! = 120 両端ともに奇数である場合の数は 3 P2 3! 36 したがって、(120-36)/120 = 0.7 [別解]左端が偶数である確率は 2×4!/120 = 0.4 で、右 端が偶数である確率も 0.4。両端が偶数である確 率は 2×3!/120 = 0.1。 したがって、2×0.4-0.1 = 0.7。 [2-5]B 独立な試行と条件付き試行 ●独立な試行:どの試行の結果も他の試行の結果に影 響を与えないような試行。 (例として2人がさいころをふるとき) ●独立な試行の確率:2つの試行が独立であるとき、 一方で事象 A が起こり、他方で事象 B が 起こる確率 p は p P( A) P( B) [2-5a]B 独立な試行と条件付き試行 [例題 8]A の袋には赤玉2個と白玉3個、B の袋には赤 玉4個と白玉1個が入っている。2つの袋から1 個ずつ玉を取り出すとき、同じ色の玉を取り出す 確率を求めよ。 2 4 8 [解答 8]どちらとも赤玉である確率は 5 5 25 3 1 3 どちらとも白玉である確率は 5 5 25 これら2つの事象は排反するから答は 8 3 11 25 25 25 [2-5b]B 独立な試行と条件付き試行 ●反復試行:同じ条件のもとでの試行の繰り返し ●1回の試行で事象 A の起こる確率を p とする。この 試行を n 回行う反復試行で、 A がちょうど r 回起こ る確率は n Cr p (1 p) r nr [2-5c]B 独立な試行と条件付き試行 [例題 9]サイコロを3回ふったとき、3の倍数の目が出 る回数が2回以上である確率を求めよ。 [解答 9]3の倍数の目が2回出る確率は 2 1 2 2 3 C2 3 3 9 3の倍数の目が3回出る確率は 3 1 1 3 27 2 1 7 したがって、 9 27 27 [2-5d]B 独立な試行と条件付き試行 ●事象 A が起こったとして、そのときに事象 B の起こ る確率を、 A が起こったときの B が起きる条件付き 確率といい、 PA (B) で表し、次式が成り立つ。 P( A B) n( A B ) したがって、 PA ( B) PA ( B) n( A) P( A) ●さらに、2つの事象 A, B がともに起こる確率 P( A B) P( A) PA ( B) ←確率の乗法定理 [2-5e]B 独立な試行と条件付き試行 [例題 10]当たりくじ3本を含む8本のくじを、A, B の 2人がこの順に1本ずつ引く。このとき、引い たくじはもとに戻さない。このとき、B が当た る確率を求めよ。 [解答 10]A が当たり B が当たる事象と A がはずれ B が 当たる事象の和事象である。A が当たって B も当 3 2 3 たる確率は 。 A が外れて B が当た 8 7 28 5 3 15 3 15 3 。 る確率は 。したがって、 8 7 56 28 56 8 [2-5f]C 独立な試行と条件付き試行 ●ベイズの定理 複数の原因となる事象 H i (i 1,2,..., n) の結果として 事象 A が起きる場合を考える。H i は互いに排反であ り、これ以外に原因はないとする。乗法定理から P( H i A) P( H i ) P( A | H i ) が成立。 P( H i | A) P( A) P( A) P( H i ) を事前確率、 P( H i | A) を事後確率という。 このように、先見的に決めた事前確率を実データに より修正(日本統計学会編「統計学基礎」90 頁)
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