大脳皮質第一次視覚野のコラム構造

大脳皮質第一次視覚野のコラム構造
• 第一次視覚野は後頭葉に位置する。
• 反対側の視野が写像さ
れる。
– 右視野→左半球
– 左視野→右半球
• 視野の正中線は月状溝側に投射される。
視野外側
視野中心
視野下側
視野上側
• 視野の上側は腹側(脳の下の方)に投射される。
• 視野の下側は背側(脳の上の方)に投射される。
• 視野の中心に対してより大きな面積が割り当てられ
ている。
• 第一次視覚野は6層構造になっている。
約2mm
• 外側膝状体細胞と反応の仕
方が大きく異なり、呈示パ
ターンの傾きに対して選択
的な反応をする細胞が集
まっている。
• これを傾き選択性と呼ぶ。
光スポット(動かない)には
ほとんど反応しない。
細胞の反応
矢印は動かした方向
特定の傾きを持つ
矩形は細胞の受容野
光刺激を矢印の
・この細胞では同じ傾きでも動く方向によって反応が
2方向に動かして呈示
異なる(すべての細胞にこの性質があるわけではない)。
・これを運動方向選択性と呼ぶ。
• 左右両方の眼からの入力を受ける細胞が多
数存在する。
• 次図は左右の眼の視野の同じ位置に同じ傾
き選択性、運動方向選択性を持つ例。
• 細胞によって左右の眼
のそれぞれからどれだ
け入力があるかの比が
異なる。これを眼球優
位性と呼ぶ。
• 反対側の眼からの入力
のみを受けるものをグ
ループ1、同側の眼から
の入力のみを受けるも
のをグループ7とし、眼
球優位性の違いを7段
階に分類する。
• 右図は各グループの細
胞数を示したものである。
ネコはサルに比べ両眼制の細胞が多い
• 傾き選択性と眼球優位性の脳内での分布
– 次図は層に垂直な方向に電極を刺し入れて特性を計測し
た結果である。
– 層に垂直な方向では同じではないにせよどちらかというと
似た特性を持った細胞が並んでいる。
– このような似た特性の細胞の集まりを傾きコラム、眼球優
位性コラムなどと呼ぶ。
5∼7が多い
1∼3が多い
• 右図は層に斜めに
電極を刺して傾き
選択性と眼球優位
性を調べたもので
ある。
• この場合最適傾き
は少しずつ変化し
ており、層に沿って
最適傾きは規則的
に変化しているこ
とが分かる。
• 次図はトリチウムで標識したプロリンを片眼に注入
し、反対側の視覚野の4C層でどのように網膜から
繋がっているかを調べたものである。
(プロリンは軸索を通って視覚野まで達する。トリチウムの影響でX線乾板に視覚野の標本を乗
せると感光することでどこにプロリンが達したか分かる。)
・白く感光したと
ころは約0.4mm
幅の帯を成して
いる。
・外側膝状体まで
は左右の眼から
の入力は完全に
分離しているが、
視覚野において
は入り組んでいる
ことが分かる。
• 細胞はグルコースをエネルギー源として取り込むが、これと似
たデオキシグルコースを放射性物質14Cで標識して注入する
と、活動してインパルスを出している細胞に取り込まれる。取
り込まれた部位は放射性物質の濃度から分かる。
• 次図は約1時間縦縞を見せて視覚野の活動部位を調べたも
のである。約1mm幅の帯になったコラムが見える。
• 次図は対側眼球優位コラム(細線)と縦方向
コラム(太線)を重ね書きしたもの。
• 両者は無関係であることが分かる。
•両眼のコラムの幅を合
わせると約1mm。また
180度をカバーする傾き
のコラムの幅も約1mmで
ある。よって1mm四方の
部位で視覚上の一点に
おける情報を分析するの
に十分な要素が含まれ
ていることになる。この
1mm四方を超コラムと
呼ぶ。
単純型細胞と複雑型細胞
• 第一次視覚野の細胞は単純型細胞と複雑型
細胞に大別される。
• 単純型細胞の受容野
• ON領域・・・最適傾きの明スリット呈示でインパルス発
生
• OFF領域・・・最適傾きの明スリット消去でインパルス
発生
– コラム内で、両方の領域にまたがる光には反応し
ない(拮抗作用)
– 4層に多く存在する
同じコラム内でも多少受け持つ受容野が異なって存在する
– 次図(a)(b)は単純型細胞の例。×印がON領域、
△印がOFF領域。実線の四角が光の当たってい
る部分を示している。
反応
ON領域に光
OFF領域に光
両領域に
またがる光
光が
消えると
反応
反応無し
下線は光の当たっている時間
• 複雑型細胞の受容野
– より細いスリット光が当たったときと消去したとき
に、当たる場所によらず反応する。
– 最適傾きを持つ。
– 受容野を覆う大きな光には反応しない。
– 単純型細胞より受容野は大きい。
光が当たったときと
消去したときに反応
大きな光には反応しない
• 超複雑型細胞の受容野
– 光の長さが受容野を超えて長くなると反応が消
失する(end-stopping抑制)。
– 反応の仕方は単純型と複雑型の両方がある。
短い光に反応する。
反応の仕方はここでは
単純型(光の当たったと
きに反応)。
複雑型の反応もある。
長い光には反応しない
• 受容野が構成されるモデル
(a)単純型細胞
外側膝状体のON細胞、OFF細胞
が最適傾きに沿って並ぶことで
できる。
(b)複雑型細胞
最適傾きが同じで受容野の位置
が連続的に少しずつずれたいくつか
の単純型細胞から興奮性入力を受
けることで機能を実現できる。
(細いスリット光には位置によらず
反応し、大きい光にはON領域と
OFF領域の拮抗作用で反応をし
なくなる。)
一点鎖線は領域の特性との
対応関係を表している(軸索
ではない)
(c)超複雑型細胞
最適傾き方向に並んだ複雑型細胞
(単純型細胞の機能を含む)から
興奮性(中心より)および抑制性(外
側より)入力を受けることで実現で
きる。
• 前述のモデルは単純型細胞→複雑型細胞→
超複雑型細胞と機能が付加されている。
• 外側膝状体からの入力線維の終末に近い4
層に一番機能の少ない単純型細胞が多い事
実と一致する。
• しかしながら実験よっては前述のモデルを否
定するような事実もあり、現在もまだこれらの
脳細胞の機能の実現については研究途上で
ある。
• 前述のモデルを否定する事実
– 次図(a)(b)は外側膝状体やそこから第一次視覚
野に繋がる神経線維を電極により調べたもので
あるが、この方法により外側膝状体からの入力
が直接複雑型細胞にも多くはいることが分かって
いる。
– 下図(c)は抑制性の入力を止めるビク
クリンと呼ばれる薬を入れながら複雑
型細胞の光に対する反応を見る実験
である。結果を右図に示す。
• 左列は最適傾きの光入力による反応。
右列は最適傾きから90度傾いた光
入力による反応。
• ビククリンにより抑制性入力が弱まる
と最適傾きでない入力でも複雑型細
胞が反応していることが分かる。
• このことから複雑型細胞の能力は単
純型細胞からの興奮性結合ではなく、
皮質内の何らかの抑制性結合により
実現されていると考えられる。
90度ずれた
傾きでも反応
している
時間がたち
反応が弱くなる
複雑型細胞