ポイント

波動インピーダンス
科
v1.1 May.2014
1. 電波インピーダンス (電界と磁界の比)
z 軸上原点に置かれた長さ(l,電流 I の微小ダイポールが作る電磁界は
)
Il
1
j
Er =
cos θe−jkr k2 η
−
(1)
2
2π
(kr)3
( (kr)
)
Il
j
1
j
Eθ =
sin θe−jkr k2 η
+
(2)
+
2
3
4π
kr
(kr)
(kr)
(
)
Il
j
1
Hφ =
sin θe−jkr k2
+
(3)
4π
kr
(kr)2
Eθ
Z=
=
Hφ
(
η
=
j
kr
Il
4π
sin θe−jkr k2 η
Il
4π
+
1
(kr)2
1
j kr
+
(
j
kr
(
+
1
(kr)2
1
sin θe−jkr k2 j kr
+
+
j
(kr)3
)
+
j
(kr)3
1
(kr)2
k2 η = ω 2 µε
[
Re
1+
1
jkr
−
1+
1
jkr
1
(kr)2
=η
j
kr
−
1−
2π
∫
π
)
(
V (z) = V0+ e−jβz + V0− e+jβz ejωt
)
1 ( + −jβz
− V0− e+jβz ejωt
I(z) =
V e
Z0 0
領域を遠方界と呼ぶ。
進行波のみに着目すると
㻾㼑㼇㼆㼉
㼨㼇㻵㼙㼇㼆㼉㼨
㼨㼆㼨
㻝㻚㻜㻱㻗㻜㻟
[
㻝㻚㻜㻱㻗㻜㻝
㻝㻜
(15)
(16)
(17)
(18)
]
Re v + (z, t) = V0+ cos (ωt − βz + θ)
(21)
[+
] V0+ Re i (z, t) =
cos (ωt − βz + θ)
(22)
Z0
が得られる。式 (21) と式 (22) から瞬時電力 p を求めると
2
[ +
] [+
] V0+ p(t) = Re v (z, t) Re i (z, t) =
cos2 (ωt − βz + θ) (23)
Z0
となる。ここから時間平均電力 P¯ を求めると
㻝㻚㻜㻱㻗㻜㻞
㻝
㼗㼞㻌㼇㼞㼍㼐㼉
のみなので*4
㻟㻣㻢㻚㻣
㻜㻚㻝
(14)
v + (z, t) = V0+ ejθ e−jβz ejωt = V0+ ej(ωt−βz+θ)
(19)
+
+
V0 V0 ejθ e−jβz ejωt =
ej(ωt−βz+θ)
i+ (z, t) =
(20)
Z0
Z0
となる。式 (19) 式と (20) において,物理的な意味を有するのは実部
㻝㻚㻜㻱㻗㻜㻡
㻵㼙㼜㼑㼐㼍㼚㼏㼑㻌㼇䃈㼉
∫
が運ぶ伝送電力について考えてみる。波動方程式の一般解より
に近づくことが分かる。このように波動インピーダンスが定常になる
㻝㻜㻜
波動インピーダンスの距離変化
1
P¯ =
T
∫
T
p(t) dt =
1
T
∫
T
+ 2
V0 Z0
cos2 (ωt − βz + θ) dt
+ 2 ∫ T
1 V0 =
cos2 (ωt − βz + θ) dt
(24)
T Z0
0
加法定理を使って式 (24) を展開すると次式となる。
+ 2 ∫ T
+ 2
V0 1 + cos [2 (ωt − βz + θ)]
1 V0 ¯
P =
dt =
(25)
T Z0
2
2Z0
0
一方,実部と虚部を含む式 (17) と式 (18) をそのまま使って,次の計
算 V (z)I ∗ (z)/2 を行ってみる*5 。
1
1
1
V (z)I ∗ (z) = V0 + e−jβz ejωt V0 +∗ e+jβz e−jωt
2
2
Z0
1 1
1 1 + 2
=
V0 + V0 +∗ =
(26)
V0
2 Z0
2 Z0
6
*
¯
これは式 (25) で求めた時間平均電力 P に等しい 。即ち,
1
1
P¯ = V (z)I ∗ (z) = V ∗ (z)I(z)
(27)
2
2
となる。式 (17) と式 (18) のように複素数で表された電圧・電流セッ
2. 放射抵抗 (電圧と電流の比の実部)
同様に,平面波として遠方に到達する電磁界成分 Eθ , Hφ の積から,
*3 。H の共役は式 (3) より
時間平均電力密度 Eθ Hφ ∗(/2 を計算する)
φ
−j
1
+
(6)
kr
(kr)2
2
であるから,時間平均電力密度 [W/m ] は次式で計算される。
1
Eθ Hφ ∗
(7)
2 ( )
(
)(
)
2
1
1
1 Il
j
j
−j
+
+
=
sin2 θk4 η
−
(8)
2
3
2
2 4π
kr
kr
(kr)
(kr)
(kr)
(
)
1
j
−j
1
−1
j
I 2 l2 sin2 θηk4
+
+
+
+
−
=
(9)
2
3
3
4
4
32π 2
(kr) (kr) (kr)
(kr) (kr) (kr)5
(
)
1
j
I 2 l2 sin2 θηk4
−
=
(10)
2
32π 2
(kr)( (kr)5 )
(
)
I 2 l2 sin2 θηk4 k 2
j
=
1−
(11)
32π 2
r
(kr)3
Hφ ∗ =
0
]
1
Eθ Hφ ∗ r2 sin θdθdφ
2
3. 付録:共役複素数を掛ける理由
最も簡単な例として,1 次元伝送線路を伝わる電圧 V (z) と電流 I(z)
kr < 1 では Im[Z] が支配的*2 で,kr > 1 では Re[Z] が支配的とな
り,さらに電流源から十分離れた遠方 kr > 10 では Z ≃ η = 376.7 Ω
㻝㻚㻜㻱㻗㻜㻠
(13)
I 2 l2 k 3
sin3 θ r2 sin θdθdφ
=
32π 2 r2 ωε 0
0
I 2 l2 k 3
I 2 l2 k3 8π
=
=
32π 2 r2 ωε 3
12πωε
となる。さらに式 (14) を変形すると
( )2
(Il)2 (2π)2 √
I 2 l2 k 3
Il π
=
η
P¯ =
ω µε =
2
12πωε
12ωεπλ
λ
3
2
となる。ここで,P¯ = Rr I より Rr は次式となる。
( )2
l
π
Rr =
η
λ 3
式 (16) を微小ダイポールアンテナの放射抵抗と呼ぶ。
ンスと呼ぶ。図 1 に波動インピーダンスの距離変化の様子を示す。
図1
Re
0
これを微小ダイポールの波動インピーダンスまたは電波インピーダ
㻝㻚㻜㻱㻗㻜㻜
㻜㻚㻜㻝
[
π
2π
(5)
j
kr
]
1
I 2 l2 sin2 θk3
Eθ Hφ ∗ =
2
32π 2 r2 ωε
P¯ =
)
1
(kr)2
(12)
小ダイポールを包む球面全体で積分すると
∫ ∫
(4)
1−
√
ω µε
µ
k3
= ω 2 µε
=
ε
ωε
ωε
となる。さらに,時間平均放射電力 [W] を求めるために式 (13) を微
となり,分子分母に kr/j を掛けると
Z=η
√
の関係を使うと
)
1
(kr)2
番 氏名:
空間に放射されて消費されるのは,式 (11) のうちの実部のみなので
であった。このうち,平面波*1 として遠方に到達する電磁界成分
Eθ , Hφ の比を Z とおくと
年
Il
sin θe+jkr k2
4π
0
o
トのうち,片方の共役をとって掛け合わせることで複素数を上手く消
去できる。これにより物理的に意味のある値の導出に要する計算量を
大幅に減らすことができる。
*1
*4
進行方向である r 方向に電磁界成分を有さない波。このケースは TMr モー
ド (Hr = 0) と呼ぶこともできる。
*2 実際は Im[Z] の符号には − が付くので,キャパシティブなインピーダンス
である。このようにリアクタンスが支配的な領域を近傍界と呼ぶ。
*3 共役を掛ける理由は付録参照。
敢えて虚部や指数関数を導入しているのは,微積分の計算が簡単になるため。
cos x や sin x の微分積分には符号反転や,cos と sin の入れ替えなど面倒だ
が,ejx なら微分積分しても間違いを犯すリスクが少ない。
*5 V ∗ (z)I(z)/2 でもよい。
*6 二つの共役複素数 c = a + jb と c∗ = a − jb の積は a2 + b2 = |c|2 である。
1