δ 0 FF[N]

作業経過報告:FemAFM(連続弾性体)粘弾性解析機能追加
2014 年 1 月 23 日
株式会社アドバンストアルゴリズム&システムズ
吾妻広夫
FemAFM に、粘弾性解析機能を追加し、探針が試料表面に接触してから離れるまでをシミ
ュレーションする件について、以下の結果が得られた。
[JKR 理論による探針の動き]
(1)[カンチレバーのばね定数が小さな場合]
スキャン・エリアの 2 次元平面上の一点を指定して、探針が試料に接触する様子をシミュ
レートする。これによって得られる、探針の変位-外力のグラフを、以下に示す。
探針の変位、外力は、以下の図のように定義する。変位δは、変形前の試料表面を高さゼ
ロの原点として、探針先端部の深さを表すとする。探針にかかる外力 F は、上向きを正と
して、探針-試料間の相互作用を表すとする。従って、外力 F には、カンチレバーを振動さ
せる励振のための外部から印加される力は含まれないとする。
F
0
δ
カンチレバーのばね定数を、0.05[N/m]と比較的小さな値にすると、探針の変位-外力のグラ
フは以下のようになる。
F[N]
δ[m]
探針は、赤い矢印に沿って動くものとする。すなわち、探針は、まず、試料表面から上部
に突き出た部分で接触し、そのまま試料の内部に押し込まれる。凝着力がゼロになる位置
まで押し込まれると、探針は、今度は、試料から離れる方向に引き戻される。シミュレー
ションでは、探針が試料から離脱する直前まで計算がなされている。
今の場合、カンチレバーのばね定数が小さいため、ファンデルワールス力の領域から JKR
理論の領域へ slip-in する際の、グラフの直線の傾きは小さく、ほとんど水平に近くなって
いる。
また、探針が試料から離脱する過程はシミュレーションでは再現されない設定としている。
これは、探針が JKR 理論からファンデルワールス分子間力に slip-out する過程では、カン
チレバーのばね定数が小さい場合、無限遠に近い距離に飛ばされてしまうケースが多いか
らである。
(2)[カンチレバーのばね定数が大きな場合]
カンチレバーのばね定数を、1.0[N/m]と比較的大きな値にすると、探針の変位-外力のグラ
フは以下のようになる。
F[N]
δ[m]
探針が試料に接触する直
前の動きを表している
今の場合、カンチレバーのばね定数が大きいため、ファンデルワールス力の領域から JKR
理論の領域へ slip-in する際の、グラフの直線の傾きは大きくなっている。このため、探針
が slip-in してから、さらに奥へ押し込まれる様子がはっきり示されている。
上記の二つのグラフは、中嶋先生の論文に出てくるグラフを良く再現していると思われる。
以上