全身性エリテマトーデス ︵ S LE ︶ 合併の 乾癬患者に対する抗 TNF α

◎SLEを合併する乾癬患者に
抗TNFα 抗体製剤を使用する際の留意点
S L E を 合 併 す る 乾 癬 患 者 が い ま す。 抗
T N Fα 抗 体 製 剤 を 使 用 す る 際 の 留 意 点 を
ご教示ください。
︵北海道・皮膚科︶
学会︶ポスターセッションにて名古屋市立大学
病院 膠原病内科から﹁CDとSLEを合併し
た患者に対する抗TNFα 抗体製剤投与﹂の報
告があるため、その症例の経過を以下に示す。
代半ばの男性。8 年前にSLE を発症し
たが高用量ステロイドとシクロスポリン投与に
より軽快、再燃時はタクロリムス、ミゾリビン
の併用投与で安定していたが、8年後の 代半
チやクローン病︵CD︶患者にSLEが発症す
しろ、抗TNFα 抗体製剤投与中の関節リウマ
も現時点では確認することができなかった。む
経験がない。また、論文報告や学会等での発表
乾癬患者に対する抗TNFα 抗体製剤の投与は
全身性エリテマトーデス︵SLE ︶合併の
なかった。
可能になり、治療経過中SLEの増悪はみられ
た。アダリムマブ継続によりステロイド減量が
の腸管壁肥厚所見や内視鏡所見も改善がみられ
マブを追加投与。下痢や下血は改善し、CTで
唆する臓器障害や血清所見はなし︶
、アダリム
用でも改善乏しかったため︵SLEの増悪を示
され、プレドニゾロン ㎎ /日、メサラジン併
ばに腹痛・下痢・下血を伴い入院。CDと診断
るという、治療によるSLE誘発の可能性につ
回答 自治医科大学 皮膚科学講座
教授
大槻マミ太郎
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いて注意喚起されており、SLEに対する抗T
NFα 抗体製剤の評価は定まっていない。
しかし、20 13 年J CR︵ 日本リウマチ
対して、抗TNFα 抗体製剤が有効との報告も
ループス腎炎を含めた治療抵抗性SLE に
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本邦において散見される。しかしながら、抗T
る。ただし、抗TNFα 抗体製剤投与によって
製剤導入を検討する価値は十分あると考えられ
抗核抗体、とくに抗 ds-DNA
抗体価が上昇する
ような場合は、治療継続について慎重な判断が
NFα 抗体製剤投与中の関節リウマチやCD患
者に、原病は安定していても乾癬や掌蹠膿疱症
類似の皮膚症状が誘発されたり︵理論的には生
悪するという報告はないものの、SLEに対す
NFα 抗体製剤投与で、原病であるSLEが増
がら報告されている。SLE患者に対する抗T
中にはSLEまで発症したりする症例も少数な
することが望ましい。
主治医と密に連携をとりながら慎重にフォロー
の生物学的製剤使用承認施設において、内科の
が不足していることから、日本皮膚科学会公認
実際の治療導入にあたっては、エビデンス
じにくい症状のため逆説的副作用と呼ばれる︶
、 必要であろう。
る抗TNFα 抗体製剤の作用は、まだ不明な点
が多い。
今回ご質問の﹁SLE を合併する乾癬患者
に対する抗TNFα 抗体製剤投与﹂については、
国内外で報告を見出すことはできなかった。作
用機序の観点からは、乾癬はもちろん、SLE
においても抗TNFα 抗体製剤が奏効する可能
性はあり、生物学的製剤の治療適応と考えられ
る乾癬患者において、SLEの増悪なく乾癬を
著明に改善できる可能性のある抗TNFα 抗体
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