LipoTESTの鳥類診療への利用

2014/12/14
LipoTESTの鳥類診療への利用
わたらい動物病院
わたらい先⽣
⾎液中を、脂肪酸以外の脂質を安全に輸送する
為には・・・リポ蛋⽩という形態が必要です。
アテローム性動脈硬化症の原因は
LDL(低⽐重リポ蛋⽩)にあり
ます
最も重要で、最も忘れては成らない事のハズですが、数々の資料を読んでいく内に忘
れてしまいそうになる基本前提です。これを調べたい。これについて知りたいという
のが、スタートラインです。
リポ蛋⽩の“脂質”について評価を⾏うのが、
目的です
ただし・・・LDLコレステロールを直接測定す
るのは、オススメできないかもしれません
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F式が使えない時は、non HDLを使います
とはいうものの、やはり・・・分かり難
い︕
LH⽐、動脈硬化指数も利用するかもしれ
ません
LipoTEST(ゲルろ過HPLC法)は、これを
⾒易くしたモノです
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症例1.
モノリスに送ってみました
 ウズラ, オス, 3ヵ月齢(写真左)
 総コレステロール=209(mg/dL)
 BCS4/5(太っている)
 中性脂肪=48(mg/dL)
 ラウディブッシュメンテナンス,
 HDL-C=132.5(mg/dL)
 屋内加温飼育(ただし、日照無し)。
 LH⽐=LDL-C/ HDLC=66.9/132.5=0.50
 動脈硬化指数=non HDL-C/HDLC=(TC-HDL-C)/HDL-C=(209132.5)/132.5=0.57
 12時間以上絶⾷後、頸静脈より採⾎
した(前日の夕⽅6時に⽔のみにした
後、翌朝7時に採⾎を⾏った)。
LipoTESTです
 LDL-C=209-132.5-48/5=66.9
(mg/dL)
トリグリセリドの測定⽅法として、①⾎中に存在する遊離グリセロール(図1の■)
を差し引いた中性脂肪値を測定する⽅法(日本)と、②総グリセライド値をそのまま用
いる⽅法(米国ほか)がある。
グリセリド(グリセロールと脂肪酸のエステルの総称)には、グリセロール(=グリ
セリン、CH2OHCHOHCH2OH)に脂肪酸が3つエステル結合したトリグリセリドのほ
かに、2つエステル結合したジグリセライド、1つエステル結合したモノグリセリド、な
らびに脂肪酸と結合していない遊離グリセロールが含まれる。中性脂肪は総グリセリド
から遊離グリセロールを除いたもので、そのほとんどをトリグセライドが占めている。
209
66.9
図1
⾎清中の総グリセライドの内訳
132.5
48
循環器疫学サイトhttp://www.epi-c.jp/entry/lecture_003.html より
症例2.
 ウズラ, メス, 年齢不詳の廃鶉(写真
右。脱毛している個体)
 総コレステロール=178(mg/dL)
 BCS4/5(太っている)
 中性脂肪=740(mg/dL)←再検査
済み, 乳びの出現はありませんでした。
 バーディ
 HDL-C=59.1(mg/dL)
 non HDL-C=178-59.1=118.9
(mg/dL)
 動脈硬化指数=118.9/59.1=2.01
 屋内加温飼育(ただし、日照無し)
 産卵を確認している個体, 入荷直後の
⽣き餌。
 12時間以上絶⾷後、頸静脈より採⾎
した(前日の夕⽅6時に⽔のみにした後、
翌朝7時に採⾎を⾏った)。
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症例3.
 オオタカ, メス, 1歳7ヵ月齢
 BCS2/5(痩せている)
 廃鶉(冷凍ウズラ)
 屋外飼育
 猟期に向けて減量を⾏い運動をさせ
ている個体(→1200g以上あった個
体を、900gまで減体重させてい
る)。
 12時間以上絶⾷後、全身麻酔下で腋
下静脈より採⾎。
 総コレステロール=209(mg/dL)
 中性脂肪=58(mg/dL)
 HDL-C=177.4(mg/dL)
症例4.
 セキセイインコ, オス, 3ヵ月齢
 BCS4/5(太っている)
 LDL-C=209-177.4-58/5=20
(mg/dL)
 LH⽐=20/177=0.11
 臨床上、問題とする
カイロミクロン(中
性脂肪)は、10く
らいから。
 イヌで、⾷後4時間
程度で100〜20
0くらい上昇する。
 ラウディブッシュメンテナンス
 屋内加温飼育
 絶⾷を⾏わないで、採⾎を⾏った。
(正午頃の採⾎です)
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症例5.
 ハリスホーク, オス, 1歳3ヵ月齢
 BCS2/5(痩せている)
 ウズラ(廃鶉)
 実猟に使用
 急性腎不全による嘔吐あり(採⾷さ
せた状態で来院した)
症例6.
 乳びの存在、溶⾎によって測定に影
響が出ない。
 ヘパリンは使用してはならない。
EDTAは可。
 オオタカ, オス, 13歳
 BCS3/5(ふつう)
 ウズラ(廃鶉)
 実猟に使用していたタカだが、調整
に入る前にトラブルが発⽣した(右
大腿骨骨折。左脚バンブルフット)。
 ⾷欲あり。12時間以上絶⾷後に採
⾎した。
 凝固剤のトラブルにより、上手く採
剤が出来なかった(遠⼼分離は4回
試みた)。
 0.05ml⾎清という事になっています
が、採⾎直後のサンプルを急いで遠
⼼分離してしまっても、構わないそ
うです。
 ここでいうLDL(コレステロール)
には、IDL(コレステロール)が含ま
れている。
 LipoTESTの中性脂肪値が、院内⽣化
学検査機器によって得た数値よりも
高値になる理由は、遊離グリセロー
ル(一番右のピーク)の検出による。
 F式との相関について、⽐較を⾏った
事はない。超遠⼼分離法について
⾏っている。
症例7.
 ベンガルワシミミズク, オス, 5歳
 BCS3(ふつう)
 ウズラ(廃鶉)、マウス
 ペット個体(屋内放飼)
 健康診断のため採⾎した。
 16時間以上絶⾷後、採⾎した。
 (写真は、Wikipediaから抽出した
イメージです(性別不詳))
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症例8.
 シロウフクロウ, メス, 4歳
 BCS3(ふつう)
 ウズラ(廃鶉)、マウス
 ペット個体(屋内放飼)
 健康診断のため採⾎した。
 16時間以上絶⾷後、採⾎した。
 (写真はイメージ(オスの写真で
す))
まとめ
今後、こういう症例のサンプルを調べてみたい
と思っています(よろしければ、調べて、情報
ください︕)
 LipoTESTは、数値のみでは分かり難い脂質の背景の様子を明らかにしてくれます。
 卵墜性腹膜炎
 利便性とコストは、モノリスの⽣化学検査(HDLコレステロール測定)の⽅に軍
配が上がります。
 メスの持続性発情(インプリント鳥︕)
 LipoTESTとはつまり、“答え合わせ”や“カンニング”の為のツールです。
 卵塞
 特に雌の鳥類には、繁殖と育成過程に関連した、独特な脂質代謝の背景が存在し
ます。
 卵管卵材蓄膿症
 将来的に、信頼性の高いLDLコレステロールの直接測定が実施される様になれば、
現在の⽅法とは異なる脂質の評価が⾏われる様になるだろう。
 過剰産卵
 腹⽔のある患者︖
 脂肪肝
 (おそらく5〜10歳以上の)肥満鳥
 甲状腺機能低下症
 糖尿病
参考文献
1. 一般社団法人日本動脈硬化学会, 動脈硬化は怖い病気のはじまり パンフ
レット, 2012
2. 糖尿病ネットワーク, 「LDL-C測定は、直接法でなくF式で」動脈硬化学
会が新見解, 2010 http://www.dm-net.co.jp/calendar/2010/010027.php
3. 協 和 メ デ ィ ッ ク ス 株 式 会 社 , 脂 質 に つ い て お 話 し し まし ょ う 1 ~ 18
http://www.kyowamx.co.jp/lipid/ ←2012年のガイドラインを中心とした
情報になる様です。
4. 浅井さつき, 粥状動脈硬化症(鳥類臨床研究会大会), 2014
5. スペクトラム ラボ ジャパン, 動物の脂質(コレステロール・中性脂肪)代
謝解析サービス ←検査用パンフレット。2010年以前に作られた様ですね。
6. スペクトラム ラボ ジャパン, LipoTEST Case Reports 脂質代謝改善治療
症例集#2, 2010
7. Michelle Ravich, et al; Lipid Panel Reference Intervals for Amazon
Parrots (Amazona species), Journal of Avian Medicine and Surgery,
2014; 28(3):209-215.
8. Hugues Beaufrère et al; Association of Plasma Lipid Levels With
Atherosclerosis Prevalence in Psittaciformes, Journal of Avian
Medicine and Surgery, 2014; 28(3):225-231.
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