講演レジュメ

整対数準同型写像について
平成 26 年 9 月 5 日
記号
• p : 素数,
• F/Qp : 有限次不分岐拡大,
• R : F の整数環,
• F:R の Frobenius 自己同型 (F(α) ∼
= αp mod p)
• G : 有限群,
• JG : R[G] の Jacobson radical,
• g ∈ G に対して {g} を g の共役類とし
– ConjG := {{g} | g ∈ G} : G の共役類の集合,
– τG : F [G] → F [ConjG], g 7→ {g},
– ϕ : F [ConjG] → F [ConjG], αg {g} 7→ F (αg ){g p } (F [G] → F [G], αg g 7→ F(αg )g p も
同様に ϕ で表す) ,
注意 1. τG ◦ ϕ = ϕ ◦ τG が成立する.
整対数準同型写像
定義 1 (log). x ∈ JG に対して,
log(1 − x) := −
∑ xn
n≧1
n
∈ F [G]
と定義する.
定義 2 (Oliver-Taylor). x ∈ JG にたいして
∑ xn ∑ ϕ(xn )
L(1 − x) := τG (−
+
) ∈ F [ConjG]
n
np
n≧1
= −
n≧
∑ τG (xn )
n≧1
n
+
∑ ϕ ◦ τG ((xn ))
n≧1
1
np
定理 1. x ∈ JG にたいして
L(1 − x) ∈ R[ConjG].
この定理は本質的に以下の non-commutative binomial theorem と同値である.
定理 2 (Non-commutative binomial theorem).
• A 非可換変数 {Xg ; g ∈ G} 上の自由 R-代数,
• 任意の自然数 n を固定し, j ≦ n に対して, Sj : pj 次の単項式全体の集合 (⊂ A),
• Σ = ⟨σ⟩:位数 pn の巡回群とし,
(Xgi · · · Xgpj )σ = Xgpj Xg1 · · · Xgpj −1
で Sj に作用するものとする.
さらに, 写像 τ ∗ , ϕ∗ を
τ ∗ : R[Sj ] → R[Sj /Σ], s 7→ s¯,
∑
∑
ϕ∗ : R[Sj ] → R[Sj+1 ],
as s 7→ F(as )sp で定義する. この時, u ∈ R[S0 ] にたいして,
τ ∗ (up − ϕ∗ (up
n
n−1
)) ∈ pn R[Sn /Σ]
が成立する.
注意 2. 変数 {Xg } が可換で n = 1 と仮定すると, 上の定理から
∑
∑
(
ag Xg )p ∼
apg Xgp mod p
=
を得る.
問 1. 定理 2 を示せ.
準同型性
χ を G の規約指標, ρχ : G → GLχ(1) (Qp ) を G の表現で指標 χ を持つものとする. この時
Detχ : F [G] → Qp を
ρχ
det
Detχ : F [G] −→ Mχ(1) (Qp ) −→ Qp
で定義する. また, この写像を自然に,
∗
Detχ : K1 (F [G]) → Qp
∑
に延長する. 一般の virtual character ϕ = χ∈Irr G nχ χ と M ∈ K1 (F [G]) に対しては
∏
Detϕ (M ) :=
Detχ (M )nχ
χ∈Irr G
と定義する.
RG を G の virtual character のなす環とし ψ p を pth Adams operator(ψ p χ(g) = χ(g p )) とす
る. この時, 次がなり立つ.
2
定理 3. χ ∈ Irr G, x ∈ JG とすると,
pχ(L(1 − x)) = log(Detpχ (1 − x) Det−ψp χ (1 − F(x)))
が成立する.
系 1. x, y ∈ JG とすると,
L(1 − x)(1 − y) = L(1 − x) + L(1 − y)
問 2. 定理 3 を示せ.
K1(R[G]) への延長
まず, L を次のように GLn (R[G], JG ) := 1 + Mn (JG ) に延長する
GLn (R[G], JG ) → GLn (R[G], JG )/[GL(R[G]), GLn (R[G], JG )]
L
−
→ Mn (R[ConjG])
Tr
−→ R[ConjG]
問 3. L([GL(R[G]), GLn (R[G], JG )]) = 0 を示せ.
帰納極限を取ることによって,
L : K1 (R[G], JG ) → R[ConjG]
を得る. K1 (R[G]) = K1 (R[G]/JG ) ⊕ K1 (R[G], JG ) なる事実を用いて,
L : K1 (R[G]) ↠ K1 (R[G], JG ) → R[ConjG]
を得る.
核と余核
以下 G を p 群と仮定する. この節では, L の核と余核に関する結果を紹介する. まず, 群準同
型ωを
∑
∏
ω : R[ConjG] → ⟨ϵ⟩ × Gab ,
ag {g} 7→
ϵTrF/Qp ag · g TrF/Qp ag mod [G : G]
と定義する. ただし, ϵ = (−1)p−1 である. この時, 次が成り立つ.
定理 4.
L
ω
1 → torsion → K1 (Rp [G]) −
→ R[ConjG] −
→ ⟨ϵ⟩ × Gab → 1
はアーベル群の完全系列である.
問 4. L ◦ ω = 1 を示せ.
また, K1 (Zp [G]) のねじれ部分群については次が成り立つ.
定理 5. (Higman,Wall) 任意の有限群 G(p 群でなくても良い) に対して
K1 (R[G])tors = µF × Gab × SK1 (R[G])
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