千葉葉県北北西部下の低速度度領領域での強い地震波散乱

千葉葉県北北⻄西部下の低速度度領領域での強い地震波散乱 ­−3 次元差分シミュレーションによる検討­− #
武村俊介 1・吉本和⽣生 1 1
横浜市⽴立立⼤大学 Strong scattering in low-‐‑‒velocity region below northeastern Chiba #
Shunsuke Takemura1 and Kazuo Yoshimoto1 1
Yokohama City University 1. は じ め に 茨城県南部の深さ 50~∼60 km で発⽣生した地震では、千葉葉県中部から南部において、
S 波の⽴立立ち上がりが緩やかで最⼤大振幅の到来時刻も遅い、紡錘形の波形が観測される。
武村・吉本(2013, JpGU)によると、1-‐‑‒8 Hz の周波数帯に顕著に⾒見見られる S 波最⼤大
振幅の遅れ(ピーク遅延)の原因を、観測記録と 2 次元地震波動伝播シミュレーショ
ンの⽐比較から、千葉葉県北北⻄西部下に⾒見見られる低速度度領領域内に局在した強い散乱体の存在
によるとしている。 本研究では 3 次元地震波動伝播シミュレーションを実施し、低速度度領領域内の散乱構
造の推定を⾏行行う。 2. 3 次元地震動シミュレーション 2005 年年 10 ⽉月 16 ⽇日に発⽣生した茨城県南部
の地震について、3 次元地震波動伝播シミュ
レーションを⾏行行った。図 1 に⽰示す計算領領域を
格⼦子間隔 0.05 km で離離散化した。層構造モ
デルについては Koketsu et al. (2008)によ
る JIVSM を⽤用いた。地震波散乱の効果を取
り⼊入れるため、層ごとにランダムな速度度ゆら
ぎ を 仮 定 し た ( 武 村 ・ 吉 本 、 2013 )。
Matsubara et al.(2005)によるトモグラフ
ィーの結果を参考に、図 1 中の灰⾊色で塗られ
た領領域の下部地殻に低速度度領領域を仮定した。
また、海洋性地殻と低速度度領領域内に、ピーク
遅延の周波数特性から Gauss 型のランダム
な速度度ゆらぎを追加した。相関距離離 a = 0.5, 1, 2 km、ゆらぎの強さε = 0.05, 0.07, 0.09
のそれぞれ 9 つの Gauss 型の強い散乱体を付与したモデルと強い散乱体を仮定しな
い場合について、観測されるピーク遅延の再現性を検討した。 武村・吉本(2013)で得られた最⼤大振幅の到来時刻の距離離変化と、地震動シミュ
レーションによる 1-‐‑‒2 Hz および 2-‐‑‒4 Hz について最⼤大振幅の到来時刻を⽐比較した。
観測記録との残差を計算したところ、低速度度領領域内に相関距離離 a = 1-‐‑‒2 km、ゆらぎ
の強さε = 0.07-‐‑‒0.09 の Gauss 型の速度度ゆらぎを付与すると、観測事実を概ね説明
できることが明らかとなった。 図 2 に、強い散乱体を仮定しないモデル、強い散乱体(a = 1 km、ε = 0.07 の
Gauss 型)を仮定したモデル、観測記録で得られた 2-‐‑‒4 Hz の Radial 成分の速度度波形
を⽰示す。強い散乱体を仮定していなくとも、堆積層内でのエネルギーのトラップや地
震波散乱で波形は⼤大きく崩れるが、観測に⾒見見られるような⼤大きなピーク遅延はない。
強い散乱体を仮定することで、
震央距離離 40 km 以上で突然ピーク遅延が⼤大きくなり、
紡錘形の波形となるといった、観測波形の特徴を再現することができた。 図 2. 2-‐‑‒4 Hz の Radial 成分の速度度波形の⽐比較。
(a)強い散乱体を仮定していないモデル、
(b)強い
散乱体を仮定したモデル、
(c)強震観測網による観測波形。最⼤大振幅を⽤用いて規格化した。 謝辞 図 1. 計算領領域と観測点分布。 本研究では防災科学研究所(NIED)の K-‐‑‒NET/KiK-‐‑‒net 強震記録ならびに F-‐‑‒net の CMT 解を利利⽤用させていただき
ました。また、⾸首都圏強震動総合ネットワーク SK-‐‑‒net の今⽇日新記録を使⽤用しました。地震動計算には海洋研究開
発機構の地球シミュレーターを使⽤用させて頂きました。記して感謝いたします。