【微分積分】

【微分積分】
1 微分
1.1 偏微分
関数 f (x, y) において,変数 x, y が変化したときのこの関数の増分 ∆f は,
∆f = f (x + ∆x, y + ∆y) − f (x, y)
= f (x + ∆x, y + ∆y) − f (x, y + ∆y) + f (x, y + ∆y) − f (x, y)
=
f (x + ∆x, y + ∆y) − f (x, y + ∆y)
f (x, y + ∆y) − f (x, y)
∆x +
∆y
∆x
∆y
∆→ 0 とすると,
f (x + ∆x, y) − f (x, y)
f (x, y + ∆y) − f (x, y)
∆x + lim
∆y
∆x
∆y
∆x → 0
∆y → 0
df = lim
ここで,
∂f
f (x + ∆x, y) − f (x, y)
≡ lim
∂x ∆x → 0
∆x
∂f
f (x, y + ∆) − f (x, y)
≡ lim
∂y
∆y
∆y → 0
とし,これを 偏微分 と呼ぶ。つまり多変数の場合,他の変数は無視して該当変数だけ
微分すればよいという意味である。まとめると,
偏微分
df (x, y) =
∂f
∂f
dx +
dy
∂x
∂y
[1.1]
左辺のことを偏微分に対して,全微分と呼ぶ。
x, y が t の関数であるときは,
df
∂f dx ∂f dy
=
+
dt
∂x dt
∂y dt
とすればよい。
f (x, y, t) のときは,
∂f dx ∂f dy ∂f
df
=
+
+
dt
∂x dt
∂y dt
∂t
左辺は 常微分 と呼ばれ,ある変数が変化したときの多変数すべての影響を含めた変化分
を表している。
y が x の関数のときは,
df
∂f
∂f dy
=
+
dx
∂x
∂y dx
となる。
1.2 テイラー展開
テイラー展開を用いれば,関数 f (x) を級数の形に書くことができる。
テイラー展開
f (x) = f (a) + f 0 (a)(x − a) +
1 00
f (a)(x − a)2 + …………
2!
[1.2]
または,
f (x) = f (a) +
∞
∑
1 (k)
f (a)(x − a)k
k!
[1.3]
k=1
読み飛ばしても構わないが証明は,自然数 n に関して,
g(x) = f (x)+f 0 (a)(b−x)+
1 00
1
f (x)(b−x)2 +…………+
f (n−1) (x)(b−x)n−1 +A(b−x)n
2!
(n − 1)!
とする。A は定数で g(a) = g(b) となるように選ぶ。ここで a < b より, ロルの定理 よ
り,g 0 (c) = 0 となる c が a < c < b の間に存在し,
g 0 (x) = f 0 (x)−f 0 (x)+(b−x)f 00 (x)−(b−x)f 00 (x)+…………… =
∴ (b − x)n−1 (n)
f (x)−nA(b−x)n−1
(n − 1)!
1
1
f (n) (c) = nA ∴ A = f (n) (c)
(n − 1)!
n!
また,g(a) = g(b) = f (b) であるから,
f (b) = g(a) = f (a)+f 0 (a)(b−a)+
∴ f (b) = f (a)+f 0 (a)(b−a)+
1 00
1
f (a)(b−a)2 +…………+
f (n−1) (a)(b−a)n−1 +A(b−a)n
2!
(n − 1)!
1 00
1
1
f (a)(b−a)2 +…………+
f (n−1) (a)(b−a)n−1 + f (n) (c)(b−a)n
2!
(n − 1)!
n!
を満たす c が存在することがいえる。この関係を無限に繰り返していけばテーラー展開と
なる。
テイラー展開において,a = 0 とした展開を マクローリン展開 と呼び
f (x) = f (0) +
∞
∑
1 (k)
f (0)(x)k
k!
k=1
f (x) = ex をマクローリン展開に代入すると,f k (x) = ex より,f k (0) = 1 より,
ex = 1 +
1
1 2
x + x3 + ………
2!
3!
f (x) = sin x では,
sin x = x −
x3
x5
+
+ …………
3!
5!
f (x) = cos x では,
cos x = 1 −
x2
x4
+
+ …………
2!
4!
2 積分
2.1 線積分
関数 h(x, y) を考える。この関数は点 (x, y) を指定したときの z 方向の高さと考えよ
う。今,x, y が t の関数として,t = a ∼ b まで動かしたときの曲線の長さの微小変化は,
√(
dl =
√(
=
)2 (
)2
dx
dx
dt +
dt
dt
dt
dx
dt
(
)2
+
dx
dt
)2
dt
微小時間進む間は,高さは一定 h(x, y) と見なせるので,
∫
√(
a
h(x(t), y(t))
b
dx
dt
)2
(
+
dx
dt
)2
dt
とすれば,この曲線と x, y 平面で囲まれる図形の面積を求めることができる。
2.2 面積分
関数 h(x, y) を考える。この関数は点 (x, y) を指定したときの z 方向の高さを与えるつ
まり地図でいうところの標高に対応しており,曲面を表す。xy 閉園と曲面に挟まれた空
間の体積 V は,微小面積を dS として,
∫
V =
h(x, y)dS
D
で与えられる。ここで,
dS = dxdy
であることから,
∫∫
V =
h(x, y)dxdy
と表すことができる。この記号を 二重積分 と呼ぶ。まずは x で積分して,次に y で積分
すればよい。例えば,S として,次ぎのような三角形を考える。
x : −1 ≤ x ≤ 1
y : 0 ≤ y ≤ 1 − |x|
または,
x : −(1 − y) ≤ x ≤ 1 − y
y:0≤y≤1
後者で積分すると,
∫
1
∫
1−y
V =
h(x, y)dxdy
0
−(1−y)
ここで,極座標系
x = r cos θ ,y = r sin θ
を導入すると,
dθ
dθ
dS = π(x + dr)2・ − πr2・
2π
2π
≈ rdrdθ
例えば,半径 a の領域で関数 h(x, y) を面積分すると,
∫
V =
∫
2π
∫
a
h(x, y)dS =
h(r cos θ, r sin θ)rdrdθ
0
0
ここで,h(x, y) が原点に対し,回転対称なときは,h(x, y) は θ に依存しないので,
∫
2π
∫
∫
a
h(r)rdrdθ = 2π
0
0
a
h(r)dr
0
となる。このように積分領域や関数の対称性によって,計算に都合のよい座標系を選ぶこ
とが重要になる。
2.3 曲面積分
3 次元空間 (x, y, z) で値が決まる関数 U (x, y, z) があるとする。この空間で自由な曲面
を考え,なんとかして微小な面積 dS に分割してその点での関数の値 U (x, y, z) と dS を
かけそれを合計する。
今,曲面の式が
z = p(x, y)
で与えられているとする。微小変位 dx, dy に対し,曲面上での微小変位ベクトル a, b は,
(
)
∂p(x, y)
a = dx, 0,
dx
∂x
(
)
∂p(x, y)
b = dy, 0,
dy
∂y
これらの外積が曲面上の面積を与えるから
(
a×b =
−
√
dS =
∂h
∂h
dxdy, − dxdy, dxdy
∂x
∂y
(
1+
∂h
∂x
)2
∫
(
+
∫∫
U (x, y, z)dS =
∂h
∂y
)
)2
dxdy
√
U (x, y, p(x, y)) 1 +
(
∂h
∂x
)2
(
+
∂h
∂y
)2
dxdy
2.4 体積分
2.4.1 デカルト座標
3 次元空間 (x, y, z) で値が決まる関数 U (x, y, z) があるとする。この空間での微小体積
を考え,その点での関数の値 U (x, y, z) と dV をかけそれを合計する。
微小体積を
dV = dxdydz
とすれば,
∫
∫∫∫
U (x, y, z)dV =
U (x, y, z)dxdydz
立体の積分領域を半径1の球の内部にするならば,
√
√
x : − 1 − z2 − y2 ≤ x ≤ 1 − z2 − y2
√
√
y : − 1 − z2 ≤ y ≤ 1 − z2
z : −1 ≤ z ≤ 1
例えば,x2 + y 2 + z 2 = 1 を z = z(−1 ≤ z ≤ 1) で切るときの断面の円板の半径を r と
して,
r(=
√
√
1 − z2 x2 + y 2 ) =
次に,この円板を y 軸に垂直に切ると,幅 dy の棒 になるので,
√
√
x2 + y 2 = r2 ∴ − 1 − z 2 − y 2 ≤ x ≤ 1 − z 2 − y 2
√
√
∴ − 1 − z 2 ≤ y ≤ 1 − z 2
U (x, y, z) = 1 とすれば,
∫ ∫ √ 2 ∫ √
1
−1
1−z 2 −y 2
1−z
√
− 1−z 2
−
√
dxdydz =
1−z 2 −y 2
4
π
3
となる。
2.4.2 円筒座標
xy 平面を極座標,z 方向はそのままデカルト座標で表す。つまり,
x = r cos θ,y = r sin θ,z = z
とすると,微小体積は,
dV = rdrdθdz
と表せる。
2.4.3 球座標
x = r sin θ cos φ,y = r sin θ sin φ, z = r cos θ
と 表 す こ と が で き る 。こ の と き ,微 小 な 長 方 形 を 考 え る と ,辺 の 長 さ は そ れ ぞ れ
dr, rdθ, r sin θdφ となるので,
dV = r2 sin θdrdθdφ
となる。例えば,半径 R の球は,
∫
2π
∫
π
∫
R
r2 sin θdrdθdφ
0
=
となる。
−π
0
4
1 3
R × 2 × 2π = πR3
3
3
3 微分方程式
3.1 変数分離形
dy
p(x)
=
⇔ q(y)dy = p(x)dx
dx
q(y)
と左辺は y のみの式,右辺は x のみの式と分離できる。このようなタイプの微分方程式は
変数分離形 と呼ばれる。y は x の関数なので,
q(y)y 0 = p(x)
x で積分すると,
∫
∫
dy
q(y(x)) dx = p(x)dx
dx
左辺は置換積分を意味しているので,
∫
⇔
∫
q(y)dy =
p(x)dx
例1 次の微分方程式を解こう。
x2
y
∫
∫
ydy = x2 dx
y 0 (x) =
積分定数を右辺にまとめると,
y2 =
2 3
x +C
3
例2 次の微分方程式を解こう。
y 0 = x2 y
∫
∫
1
⇔ dy = x2 dx
y
log |y| =
1 3
x +C
3
1
3
1
∴ y = ±eC・e 3 x = Ce 3 x
3
3.2 同次形
次の形を確認しよう。
(y)
dy
=f
dx
x
[3.1]
これは,同次形と呼ばれ,x と y の次数が同じになっているので解くことができる。
解法を確認すると,
u=
y
(x 6= 0) とすると,
x
y0 =
d
du
(ux) = u + x
dx
dx
∴ u + xu0 = f (u)
(i)u 6= f (u) のとき
f (u) − u
x
∫
∫
1
1
du =
dx
f (u) − u
x
⇔ u0 =
と,変数分離形の微分方程式に帰着できる。
(ii)u = f (u) かつ u0 6= 0 のとき
[3.1] より,
dy
y
=
dx
x
となり,変数分離形になる。
(iii)u0 6= 0 ⇔ y = mx となるとき
m = p(m) となる m が存在すればこれも解となりうる。
このような y = mx を微分方程式の 特異解 と呼ぶ。
[3.2]