12月05日の講義ノート

§8. Cauchy の積分定理と積分公式(その 1)
まず前回の復習から.次の (2) =) (1) を以下ではよく使う.
復習
領域 D で連続な函数 f について,次は同値.
Z
(1) D に含まれる 8 閉曲線 C に対して, f (z) dz = 0.
C
0
(2) 9F :D で正則 s.t. F (z) = f (z) (8z 2 D).
以下,C
D :領域,f :D で正則(D の各点で複素微分可能).
定理 8.1 (3 角形閉路の場合の Cauchy の積分定理)
D
:3 角形閉領域,C :
の周を反時計回りに 1 周 =)
Z
f (z) dz = 0.
C
証明
(0)
:=
とし,
(0)
の各辺の中点を結んでできる 4 個の 3 角形閉領域を
(1)
j
(j = 1, 2, 3, 4) とする(下図参照).
(1)
3
(0)
(1)
1
(1)
j
C (0) := C とし,
(1)
Z
ゆえにある j に対して,
Z
C (0)
用して,
(1)
から
:=
(2)
(0)
f (z) dz =
C (0)
(1)
(1)
4
の周を,上図のように,C (0) の向きと合うように反時計回りに
回る路を Cj とする (j = 1, 2, 3, 4).
この j に対して
(1)
2
の内部では積分が相殺しあって,
4 Z
X
f (z) dz 5 4
(1)
(1)
j ,C
(1)
(1)
f (z) dz.
Cj
j=1
Z
(1)
f (z) dz が成り立たないといけない.
Cj
:= Cj とおく.
(0)
から
(1)
を得た手続きを適
を得る.そしてこれを繰り返して,3 角形閉領域の減少列
(0)
(1)
···
(n)
···
と,その周を反時計回りに回る路の列 C (0) , C (1) , . . . , C (n) , . . . を得て,
1
Z
C (0)
(n)
ここで各
f (z) dz 5 4
n
Z
f (z) dz
(n = 1, 2, . . . ). · · · · · ·
C (n)
1
は C の compact 集合であり,
dn := diam (
(n)
) :=
sup
z,w2
z
w
(n = 0, 1, 2, . . . )
(n)
1
1 d ! 0 (n ! 1) ゆえ,9 1 z s.t. z 2 T
(n)
⇢ D (演習問題
0
0
n 0
2
n=0
[2.13] 参照).さて f は z0 で複素微分可能であるから,z0 の近傍で
とおくと,dn =
f (z) = f (z0 ) + f 0 (z0 )(z
z0 ) + '(z)(z
z0 )
とかけて,z ! z0 のとき '(z) ! 0 である.定数函数と 1 次函数に対しては,C 全
体で(正則な)原始函数が存在するから,閉路 C (n) に沿う積分は 0 である.ゆえに
Z
Z
f (z) dz =
'(z)(z z0 ) dz. · · · · · · 2
C (n)
C (n)
1 ` である (n = 0, 1, 2, . . . ).
2n 0
そして "n := sup '(z) とおくと,"n ! 0 (n ! 1) であって,
(n)
ここで,
の 3 辺の長さの和を `n とおくと,`n =
z2C (n)
Z
'(z)(z
C (n)
これと
,
1
2
により
Z
C (0)
である.
z0 ) dz 5 "n dn `n = 1n d0 `0 "n .
4
f (z) dz 5 d0 `0 "n ! 0 (n ! 1).ゆえに
Z
定理 8.2 (長方形閉路の場合の Cauchy の積分定理)
Q
Z:長方形閉領域,C :Q の回りを反時計回りに 1 周する路
=)
f (z) dz = 0.
D
C
証明 対角線を 1 本入れて 2 個の 3 角形を作ればよい.
⇤
def
• S が凸集合 () 8p, q 2 S に対して,[ p, q ] ⇢ S .
• 凸領域:凸集合になっている領域(楕円や長方形の内部等).
定理 8.3 (凸領域での Cauchy の積分定理)
D :凸領域 =) D 内の任意の閉曲線 C に対して
Z
C
2
f (z) dz = 0.
C (0)
f (z) dz = 0
⇤
証明 a 2 D を固定し,F (z) :=
Z
f (w) dw とおく. h が十分小さいとき,3 点
[ a, z ]
a, z, z + h で形成される閉三角形領域
は D に含まれる1ので,定理 8.1 より
を 1 周する f の積分は 0 である.ゆえに
F (z + h)
F (z) =
Z
f (w) dw.
[ z, z+h ]
F (z + h)
以下以前と同様に,
h
F (z)
の周
f (z) 5 1
h
Z
f (w)
f (z) dw と
[z,z+h]
Z
して,F (z) が f (z) の D での正則な原始函数となるから, f (z) dz = 0 である. ⇤
C
定理 8.4 (円周を使った Cauchy の積分公式)
D :領域,f は D で正則, := D(c, r) ⇢ D .このとき,8z 2 Int( ) に対して,
Z
f (⇣)
1
f (z) =
d⇣ (積分は円周 C : z c = r を反時計回りに 1 周).
2⇡i C ⇣ z
証明
> 0 と " > 0 は十分小さいものとする.まず z を中心とする半径 " の円 C"
を描く.次に,z と円 C の中心 c を結ぶ直線に関して対称に C と C" の一部を切り捨
て,図の様に切り口を 2 本の線分で結ぶ.この 2 本の線分の間隔を 2 とする.この
ようにしてできる閉路を
,"
とする(下左図参照).
,"
が定める有界閉領域をほん
の少しだけ膨らませてできる領域を D0 (D 0 ⇢ D) とする(下左図の点線で囲まれる
f (⇣)
領域).函数 F (⇣) :=
は D0 で正則である.
⇣ z
D0
⇣0
C
C"
z
⇣
C"
,"
z
c
# "!
D0
⇣0 2 D0 を固定し,8⇣ 2 D0 と,座標軸に平行な線分からなる折線で結んでできる路
Z
(格子折線と呼ぼう)を Q⇣ とし,G(⇣) :=
F (w) dw とおく.定理 8.2 より,G(⇣)
Q⇣
1D
は凸集合だから.
3
は,⇣0 と ⇣ を結ぶ格子折線 Q⇣ の取り方によらない2.そうすると,定理 8.3 の証明のよ
うにして,G(⇣) が D0 での F (⇣) の原始函数であることが示せる.実際 h が小さいと
き,Q⇣+h は ⇣ まで Q⇣ に沿って来てから,線分 [ ⇣, ⇣ +h ] が座標軸に平行なら直接,平
行でなければ 1 回折れてから ⇣ + h に到達するとしてよい.折れる場合でも [ ⇣, ⇣ + h ]
Z
を斜辺に持つ直角 3 角形を作り定理 8.1 を使うと G(⇣ + h) G(⇣) =
F (w) dw
[ ⇣, ⇣+h ]
Z
となることがわかって,以下以前と同様である.よって
F (w) dw = 0.
,"
閉路
,"
3
にある 2 個の線分 に沿う積分 I を,定理 8.2 を用いて考察する.ここで
に無関係な M > 0 を取って, F (w) 5 M 8w 2
意すると,
!
=
!
#
!
"
\ D(z, 2" ) とできることに注
+
#
"
上図で,横の破線上の積分は相殺するので,結局 I の評価は長さ の 4 個の線分に
沿う積分の評価になる.そして,各々の積分の絶対値は M で押さえられるので,
! +0 のとき,これら
4 個の積分はすべて
0 になる.よって,
Z
Z
Z
0 = lim
!+0
F (w) dw =
,"
F (w) dw
C
C"
F (w) dw. · · · · · ·
1
f (z)
f (z)
+
と書き直す.f は z で
z
w z
f (w) f (z)
微分可能であるから,z のある固定した近傍で w の函数
は有界である
w z
(絶対値は K 以下とする).よって " > 0 が十分小さければ,
Z
Z
f (w) f (z)
f (w) f (z)
dw 5
dw 5 2⇡K".
w z
w z
C"
C"
次に
1
の右端の第 2 項では,F (w) =
f (w)
w
一方で,w = z + "ei✓ (0 5 ✓ 5 2⇡) とおくと,dz = "iei✓ d✓ ゆえ
Z
Z 2⇡
f (z)
iei✓ d✓ = 2⇡if (z).
dw = f (z)
z
ei✓
C" w
0
Z
f (w)
したがって, 1 でさらに " ! +0 とすることで
dw = 2⇡if (z) を得る. ⇤
z
C w
Z
1
dz = 1(恒等的に 1 という函数の ↵ での値).
例 8.5 ↵ < 1 のとき,
2⇡i |z|=1 z ↵
2二つの格子折れ線に対して,それらの構成線分を適宜延長して z
3
を囲まない長方形を作っていく.
> 0 は十分小さくて,次の図に現れる長方形は円 C"/2 の外にあるとしてよい.
4