プリント

§8. 最大・最小問題
定理 8.1
有界閉集合 A 上で連続な函数は A で最大値も最小値もとる.
定義 8.2 (記号の定義)
(1) B(a, r) := {x 2 R2 ; kx
(2) B(a, r) := {x 2 R2 ; kx
ak < r}:中心 a,半径 r の開円板.
ak 5 r}:中心 a,半径 r の閉円板.
定義 8.3
def
集合 A ⇢ R2 が 有界 (bounded) () 9R > 0 s.t. A ⇢ B(0, R).
定義 8.4
def
A ⇢ R2 が開集合 () 8a 2 A, 9 > 0 s.t. B(a, ) ⇢ A
( は a に依存しても構わない).
例 8.5.
開円板 B(b, r) は開集合である.なぜなら,8a 2 B(b, r)
に対して := r
bk > 0 とおくと,B(a, ) ⇢ B(b, r) である.
ka
実際,x 2 B(a, ) ならば,三角不等式より
kx
bk 5 kx
ak + ka
となるから,x 2 B(b, r) である.
例 8.6.
bk < + ka
ka
bk = r
bk
a
r
b
連続函数 f に対して,A := { x ; f (x) > 0 } は開集合である.
なぜなら,a 2 A とすると f (a) > 0.仮定より f は連続ゆえ,
9 > 0 s.t. kx
ak <
=) f (x) > 0.
これは B(a, ) ⇢ A を示している.同様にして,A の定義において不等号を逆向き
にしても,「非等号」6= に変えても,開集合である.
定義 8.7
def
A ⇢ R2 が閉集合 () A の補集合 Ac は開集合.
例 8.8.
閉円板 B(a, r) は閉集合である.なぜなら,それは開集合である円の外部
の補集合であるから.また,円周 kx
合 kx
ak = r も閉集合である.実際,円周の補集
ak =
6 r は,例 8.6 より開集合であるから.
1
• 閉円板 B(a, r) も円周 kx
ak = r も有界閉集合である.
定義 8.9
A ⇢ R2 とする.a 2 R2 が A の境界点
def
() 8" > 0 に対して,B(a, ") は A の点も Ac の点も含む.
• A の境界点からなる集合を @A で表し,A の境界と呼ぶ.明らかに @A = @Ac .
命題 8.10
(1) A:開集合 =) A \ @A = ?.
(2) A:閉集合 =) @A ⇢ A.
証明.
(1) A が開集合なら,8a 2 A に対して,9 > 0 s.t. B(a, ) ⇢ A.ゆえに
B(a, ) には Ac の点を含まないから,a 2
/ @A.ゆえに A \ @A = ?.
(2) Ac は開集合ゆえ,(1) より Ac \ @A = Ac \ @Ac = ?.これより @A ⇢ A.
⇤
以下現れる函数はなめらかとする.
命題 8.11
開集合 A 上の函数 f が a 2 A で最大値または最小値をとる
=) a は f の停留点.
証明. ある > 0 に対して B(a, ) ⇢ A となっているので,f (a) が最大値なら f (a)
は広義の極大値.ゆえに a は f の停留点.最小値でも同様.
⇤
命題 8.12
閉集合 A 上の函数 f が a 2 A で最大値または最小値をとる
=) a 2 @A か,または a は f の停留点.
証明. a 2 A \ @A なら,9 > 0 s.t. B(a, ) ⇢ A.このとき f は開集合 B(a, ) 上
で最大値または最小値をとるので,命題 8.11 より a は f の停留点である.
⇤
最大・最小問題を条件付き極値問題に帰着させよう.
例題 8.13
x2 + xy + y 2 = 3 のときの f (x, y) := (x + 1)(y + 1) の最大値と最小値を求めよ.
注意 8.14.
一般に 2 次形式 Q(X) := aX 2 + 2bXY + cY 2 が正定値ならば,すなわ
ち a > 0 かつ ac
b2 > 0 ならば,集合 A := {(x 2 R2 ; Q(x) = 1} は有界閉集合で
2
ある.例題 8.13 においては,a = c = 13 ,b =
1
6
であるから,x2 + xy + y 2 = 3 をみ
たす点 (x, y) の全体 N は有界閉集合である(教科書例 6.116 参照).実際座標変換
✓ ◆
✓
◆✓ ◆ ✓
◆✓ ◆
x
1 1
X
cos ⇡4 sin ⇡4
X
1
= p
=
⇡
⇡
y
1 1
Y
sin 4 cos 4
Y
2
を行えば,x2 + y 2 = X 2 + Y 2 ,xy =
1 (X 2
2
Y 2 ) より
x2 + xy + y 2 = (X 2 + Y 2 ) + 1 (X 2
2
したがって,XY 座標では,N の方程式は
Y 2) = 3 X 2 + 1 Y 2.
2
2
X 2 + Y 2 = 1 となるので,N は楕円.
2
6
解. g(x, y) := x2 + xy + y 2 3 とおくと,gx = 2x + y ,gy = x + 2y であり,係数
✓
◆
2 1
行列
は正則行列であるから,連立方程式 gx = gy = 0 の解は (x, y) = (0, 0)
1 2
のみ.原点は曲線 Ng 上にはないので,Ng は特異点を持たない.ゆえに有界閉集合
Ng 上での f (x, y) の最大値と最小値は,Lagrange の乗数法で求まる点で起こる.
(x2 + xy + y 2
F (x, y) := (x + 1)(y + 1)
3) とおくと,
Fx = Fy = F = 0 ()
y + 1 = (2x + y) · · ·
1
の両辺に x + 2y をかけて
これより (x
(i) y = x を
x + 1 = (x + 2y) · · ·
1
2
2
x2 + xy + y 2 = 3 · · ·
3
を用いると,(y + 1)(x + 2y) = (x + 1)(2x + y).
y)(2x + 2y + 1) = 0 となるから,y = x または y =
x
1
.
2
に代入して x = y = ±1.そして f (1, 1) = 4,f ( 1, 1) = 0.このと
2
き,前者では = ,後者では = 0.
3
(ii) y = x 12 を 3 に代入して整理すると,4x2 + 2x 11 = 0 となる.よって
p
p
x = 14 1 ± 3 5 .このとき y = 14 1 ± 3 5 (複号同順)であり,2x + y =
p
3
± 34 5 6= 0 より が決まる.
4
p
p
p
p
9
f 14 1 ± 3 5 , 14 1 ± 3 5 = 16
1 ± 5 1 ⌥ 5 = 94 .
3
以上から Ng での f の最大値は 4,最小値は
9
.
4
⇤
• Ng が楕円であることがわかると,次ページの図が描ける.
p
p
A± (±1, ±1), B 14 ( 1 + 3 5 ), 14 (1 + 3 5 ) ,
p
p
C 14 (1 + 3 5 ), 14 ( 1 + 3 5 ) (B と C は直線 y = x に関して対称の位置にある)
とすると
3
y
p p
(
3, 3)
C
9
4
0
1
4A+
O
1
x
A
9
4
p
p
( 3,
3)
B
例題 8.15
D := {(x, y) 2 R2 ; x = 0, y = 0, x + y 5 1} とする.函数
f (x, y) := 3x2 + 2y 2 + 2xy 2x 2y + 1
D における最大値と最小値を求めよ.
解. D は有界閉集合であるから,連続函数 f (x, y) は D で最大値も最小値もとる.
(1) まず D の内部 D := {(x, y) 2 R2 ; x > 0, y > 0, x + y < 1}
で考える.fx = 6x + 2y
2,fy = 4y + 2x
2 より,
⇣
⌘
1, 2 .
5 5
fx = fy = 0 () 3x + y = 1, x + 2y = 1 () (x, y) =
✓
◆
6 2
そして,fxx = 6,fxy = 2,fyy = 4 より,Hf =
.
2 4
y
1
O
@
@
D@@
1 x
⇣
⌘
⇣
⌘
det Hf 1 , 2 = 20 > 0,かつ (1, 1) 成分 = 6 > 0.ゆえに Hf 1 , 2 は正定値で
5 5
5 5
⇣
⌘
1
2
2
あるから,f は D の点
,
で極小値 をとる.
5 5
5
(2) 次に @D で考える.
⇣
⌘
⇣
⌘
1 2 + 1 , f (x, 0) = f (x, 1 x) = 3 x 1 2 + 2 .
f (0, y) = 2 y
2
2
3
3
ゆえに,
0 5 y 5 1 のとき 1 5 f (0, y) 5 1
2
であり,また
0 5 x 5 1 のとき 2 5 f (x, 0) = f (x, 1 x) 5 2.
3
⇣
⌘
1, 2 = 2.
以上により,D での f の最大値は f (1, 0) = 2,最小値は f
5 5
5
4