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可積分離散非線型シュレーディンガー
方程式の漸近解析
山根英司 (ひでし)
関西 (かんせい) 学院大学
九大応力研 非線形波動研究の現状
2014 年 10 月 31 日
1. 可積分離散 NLS (IDNLS)
d
i Rn +(Rn+1 −2Rn +Rn−1 )−|Rn |2 (Rn+1 +Rn−1 ) = 0 (IDNLS)
dt
iut + uxx − 2|u|2 u = 0 の空間変数を離散化.
Ablowitz-Ladik が導入した.
1. 可積分離散 NLS (IDNLS)
d
i Rn +(Rn+1 −2Rn +Rn−1 )−|Rn |2 (Rn+1 +Rn−1 ) = 0 (IDNLS)
dt
iut + uxx − 2|u|2 u = 0 の空間変数を離散化.
Ablowitz-Ladik が導入した.
主結果: Rn = Rn (t) の t → ∞ or n → ∞ のときの挙動.
3 つの領域: Rn は漸近的に
1. |n|/t < 2 (‘timelike’ region) では
2 項の和,各項は t −1/2 ×(振動因子)
2. |n|/t ≈ 2 (‘light cone’) では
t −1/3 ×(振動因子)
係数は P II: u ′′ − su(s) − 2u 3 (s) = 0 の解で書ける.
(ただし, u の引数がほぼ定数なので易しい)
3. |n|/t > 2 (‘spacelike’ region) では
O(n−j ) as n → ∞
2. 漸近挙動: 3 つの領域
results
3. 道具: Riemann-Hilbert 問題 (RHP)
複素平面における境界値問題
Γ: 向きのある径路 (左側が + side).
m(z): 未知行列, C \ Γ で正則
典型例: 1. Γ = R, m(z) は ±Im z > 0 で正則.
2. Γ = {|z| = 1}, m(z) は |z| ̸= 1 で正則.
3. 道具: Riemann-Hilbert 問題 (RHP)
複素平面における境界値問題
Γ: 向きのある径路 (左側が + side).
m(z): 未知行列, C \ Γ で正則
典型例: 1. Γ = R, m(z) は ±Im z > 0 で正則.
2. Γ = {|z| = 1}, m(z) は |z| ̸= 1 で正則.
m+ , m− : ± sides からの Γ 上の境界値
RHP: m+ = m− v on Γ (v : jump 行列)
RHP では(積分路変更みたいに)径路の変更が出来る.
...........................................................
3. 道具: Riemann-Hilbert 問題 (RHP)
複素平面における境界値問題
Γ: 向きのある径路 (左側が + side).
m(z): 未知行列, C \ Γ で正則
典型例: 1. Γ = R, m(z) は ±Im z > 0 で正則.
2. Γ = {|z| = 1}, m(z) は |z| ̸= 1 で正則.
m+ , m− : ± sides からの Γ 上の境界値
RHP: m+ = m− v on Γ (v : jump 行列)
RHP では(積分路変更みたいに)径路の変更が出来る.
...........................................................
応用: 可積分系に対する逆散乱法 (詳しくは後述)
参考文献: Ablowitz (et al.) の本, Fokas の本
(戸田先生,和達先生の本では RHP の代わりに
Gelfand-Levitan-Marchenko 積分方程式←実領域で完結. )
4. RHP と漸近解析
もし jump 行列がうまく因数分解できれば RHP の解が積
分で書ける (Beals-Coifman).
4. RHP と漸近解析
もし jump 行列がうまく因数分解できれば RHP の解が積
分で書ける (Beals-Coifman).
解は係数に関して連続.
4. RHP と漸近解析
もし jump 行列がうまく因数分解できれば RHP の解が積
分で書ける (Beals-Coifman).
解は係数に関して連続.
• 2 つの RHP No.1 and No.2 があるとする.
• それらの jump 行列は近いとする.
• RHP No.1 は厳密に解けるとする
• このとき,解 No.2 ≈ 解 No.1 なので
解 No.2 の漸近展開が分かった.
4. RHP と漸近解析
もし jump 行列がうまく因数分解できれば RHP の解が積
分で書ける (Beals-Coifman).
解は係数に関して連続.
• 2 つの RHP No.1 and No.2 があるとする.
• それらの jump 行列は近いとする.
• RHP No.1 は厳密に解けるとする
• このとき,解 No.2 ≈ 解 No.1 なので
解 No.2 の漸近展開が分かった.
このことと径路の変更を組み合わせる.
鞍点法の Riemann-Hilbert 版ができる.Deift-Zhou の方法.
5. 振動 RHP と可積分系
m+ = m− v on Γ.
可積分系に伴って RHP が現れる.
5. 振動 RHP と可積分系
m+ = m− v on Γ.
可積分系に伴って RHP が現れる.
...........................................................
u = u(x, t) or u = u(n, t) が可積分系の解だとする.
初期値 u(x, 0) or u(n, 0) の散乱データが v を定める.
m = m(z; x, t) or m = m(z; n, t) を求める.
z = ∞ or z = 0 で展開すると u for t > 0 が分かる.
IVP は RHP: u at t = 0 7→ 散乱データ7→ v 7→ m 7→ u for t > 0
5. 振動 RHP と可積分系
m+ = m− v on Γ.
可積分系に伴って RHP が現れる.
...........................................................
u = u(x, t) or u = u(n, t) が可積分系の解だとする.
初期値 u(x, 0) or u(n, 0) の散乱データが v を定める.
m = m(z; x, t) or m = m(z; n, t) を求める.
z = ∞ or z = 0 で展開すると u for t > 0 が分かる.
IVP は RHP: u at t = 0 7→ 散乱データ7→ v 7→ m 7→ u for t > 0
...........................................................
v は exp(±φ) を含む (振動 RHP)
φ = φ(z) = φ(z; x, t) = φ(z; n, t).
• φ(z; x, t): 連続 (KdV, NLS, MKdV)
• φ(z; n, t): 離散 (戸田, IDNLS)
IVP は振動 RHP.
6. 非線型鞍点法
m+ = m− v
on Γ.
振動 RHP, v は exp φ を含む,
ここで φ(z) = φ(z; x, t) = φ(z; n, t).
問題: m を漸近展開せよ (t → ∞)
6. 非線型鞍点法
m+ = m− v
on Γ.
振動 RHP, v は exp φ を含む,
ここで φ(z) = φ(z; x, t) = φ(z; n, t).
問題: m を漸近展開せよ (t → ∞)
線型の場合を思い出す
∫
I (t) = γ e tψ(z) f (z) dz の t → ∞ での挙動を調べる.
鞍点法 (最急降下法)
鞍点を探す.
積分路を曲げて Re ψ < 0 を通らせる
指数因子は新積分路上で指数減少. 鞍点の遠くからの寄与は
ほとんどない
非線型版? Riemann-Hilbert 版?
7. IDNLS
d
i Rn +(Rn+1 −2Rn +Rn−1 )−|Rn |2 (Rn+1 +Rn−1 ) = 0 (IDNLS)
dt
RHP on |z| = 1. (clockwise), 未知関数 (行列)
m = m(z; n, t)
m+ = m− v on |z| = 1
m → I (z → ∞)
[
]
1 − |r (z)|2 −e −2φ(z) r (z)
v=
e 2φ(z) r (z)
1
1
φ(z) = φ(z, n, t) = it(z − z −1 )2 − n log z
2
• |n|/t < 2: 鞍点 4 個 |z| = 1 上( φ′ = 0 の単根 4 個)
• |n|/t = 2: 2 個ずつが融合 ( φ′ = 0 の重根 2 個)
• |n|/t > 2: 鞍点 4 個, |z| = 1 から外れる
8. IDNLS: 曲線 Re φ(z) = 0
Re φ(z) = 0 を描く.
赤い点 z は停留点: φ′ (z) = 0.
|n|/t < 2
|n|/t = 2
|n|/t > 2
もともとの RHP の径路は |z| = 1.
新径路は 領域 ±Re φ(z) > 0 の ど真ん中 を通るように描く
9. IDNLS: 径路の変更
|n|/t < 2
↑は Re φ = 0.
|n|/t < 2
|n|/t = 2
|n|/t > 2
↓は ±Re φ > 0 のど真ん中を通る径路.
|n|/t ≈ 2
|n|/t > 2
10. 主結果: 異なるオーダーの減衰振動
一般性を失うことなく n ≥ 0 とする.
∑
仮定 n∈Z |n|k |Rn (0)| < ∞ (∀k) かつ supn∈Z |Rn (0)| < 1.
n/t < 2 (“timelike”)
ある Cj ∈ C, pj ∈ R, qj ∈ R に対して
10. 主結果: 異なるオーダーの減衰振動
一般性を失うことなく n ≥ 0 とする.
∑
仮定 n∈Z |n|k |Rn (0)| < ∞ (∀k) かつ supn∈Z |Rn (0)| < 1.
n/t < 2 (“timelike”)
ある Cj ∈ C, pj ∈ R, qj ∈ R に対して
2
(
)
∑
Rn (t) =
Cj t −1/2 exp −i(pj t + qj log t) + O(t −1 log t)
j=1
n/t ≈ 2
t 7→ t − t0 のように時間をずらせば,
曲線 2 − n/t = const.t −2/3 (6 − n/t)1/3 → 0 の上で
Rn (t) = const.t −1/3 e i(−4t+πn)/2 + O(t −2/3 ).
この定数は Painlev´e II 関数で書ける.
11. Results (cont.)
n/t > 2
|Rn (t)| = O(n−j ) for any j as n → ∞.
figure: 3 regions
どうもありがとうございました.
IDNLS (focusing case) の Darboux 変換に関する文
献をご存知の方はご教示ください.
Darboux 変換があれば focusing でソリトンのある
場合が出来るはずです.
Yanguang Charles Li のものは関係がある? 無い?