http://www.aromaticity.net/ :水溶液中の酸-塩基反応 (化合物の酸性の強度の指標である pK についての説明です) キーポイント:水溶液中の酸-塩基反応過程には遷移状態がない;pK ,pK の定義,それらの和が 3460 a a b 14 水溶液中の酸-塩基反応は基本的,反応過程に遷移状態を持ちません.理由は,移動する H は体積 が小さいため,立体障害が無視できるほど小さいことによります.化学反応のポテンシャルエネル ギー曲線の観点からは,3320 の図 1 の Type D の反応になります. + とは 分子 HA の酸性の発現は水( H O)との酸塩基反応による H (H O )の生成によります. k pKa + 2 1 HA + H2O H+ (H3O+) + 3 + A− + H2O k2 は求電子試薬,H O は求核子薬です. この反応で,平衡が右に傾くほど,H が多くなるから酸性は強いということになります.右方向 の反応速度を v ,反応速度定数を k ,左方向のそれらを v ,k として,平衡状態(v = v )におけ るそれらの比(=K :平衡定数)を求めましょう.K は酸の強さを表し,他の平衡反応の定数と 区別するため,K で表します. HA 2 + 1 1 2 eq 2 1 2 eq a v 2 = v1 [ ] k1 [ AH] ⋅ [H 2 O] = k 2 [ A − ] ⋅ [H 3O + ] ⋅ [ H 2 O] − [H 3O + ] ≅ k 2 [ A − ] ⋅ [H 3O + ] ⋅ [H 2 O] ⇒ 上の式で,H O は H O となるため,少し消費されますが,溶媒として H O は大量にあるので H O の濃度変化は無視できる([[H O]-[H O ]]≒[H O])ため,右式を採用します.k ,k の比を取りま す. 2 3 + 2 2 + 2 3 k1 [A − ] ⋅ [H 3O + ] = k2 [AH] K eq= 2 1 2 ⇒ Ka 実際の化合物に適用してみると,K 値は,10 ~10 の広範囲の値となります.酸性は,小さな値 は弱く,大きな値ほど強いことを意味します. K 値は広範囲の値となるため利用する上で不便ですので,K の常用対数をとり,負の符号をつけ たものを pK とします.酸の強さの比較にはこの値を用います. -50 10 a a a a pK a = − log10 K a 値の取りうる範囲は,-10~50 であり,値が低いものは強酸,高いものは弱酸です.代表的な 化合物の pK 値は次のとおり:CH の H:48,H C=CH の H:44,HC≡CH:25,H O:15.8,C H OH: 16,C H OH:9.9,CH COOH:4.8,HF:3.2,HCl:-7,H SO :-9.8,HI:-10. (概略の数値は覚 えたることをお勧めします.) pKa 4 a 6 5 3 2 2 2 2 2 5 4 pKb の定義と同様に,水(H O)と分子 B との酸塩基反応で,分子の塩基の強さを示す pK が定義 することができます. pKa 2 b http://www.aromaticity.net/ k1 BH+ B + H 2O + OH− k2 この場合,B は求核試薬,H O は求電子試薬です. この平衡反応式で,右に傾くほど B の塩基性は強いことになります.右方向の反応速度を v ,反 応速度定数を k ,左方向のそれらを v ,k として,平衡状態(v = v )おけるそれらの比(=K : 平衡定数)を求めます.K は塩基の強さを表し,他の平衡反応の定数と区別するため,K で表し ます. 2 1 1 2 2 1 2 eq eq v2 = v1 [ ] k1 [ B] ⋅ [H 2O] = k2 [ BH + ] ⋅ [OH - ] ⋅ [ H 2O] − [OH - ] ≅ k2 [ BH + ] ⋅ [OH - ] ⋅ [H 2O] ⇒ - + K eq= b k1 [ BH ] ⋅ [OH ] = k2 [B] ⇒ Kb の値は大きいほど塩基性は強くなります.実際の化合物に適用すると,K 値のとりうる範囲は大 きすぎ不便ですので,K の常用対数をとり負の符号をつけたものを pK とします(pK = -log K ). pK は低いほど塩基性は強いということになります. Kb b b b b 10 b b と pK との関係 水(H O)と分子 HA との酸塩基反応で生成する A を共役塩基(conjugate base)といいます. pKa b − 2 HA + H2O A− と水との酸塩基反応は, A− + H2 O で,K は, H+ (H3O+) + k'1 HA k'2 A− + OH− + H2O b K b = K 'eq = k '1 [AH] ⋅ [OH − ] = k '2 [A − ] となります.一方,HA の K は, a - Ka = + [A ] ⋅ [H 3 O ] [AH] です.K と K の積をとります. a K a ⋅ Kb = Ka b [A − ] ⋅ [H 3O + ] [AH] ⋅ [OH − ] = [H 3O + ] ⋅ [OH − ] = K w = 10 −14 (at 25o C ) − [AH] [A ] と K の積は水のイオン積(定数値)に等しいくなるのです.積の-log をとると, 10 b pK a + pK b = 14 です.すなわち,HA の pK 値が与えられれば,その共役塩基の塩基性の強さがわります.この結 果から次の結論が得られる. a 強い酸の塩(または共役塩基)は弱い塩基であり,弱い酸の塩(または共役塩基)は強い塩基であ る.(これは,非常に重要!)
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