職場Iこおlナる歯の健康づく り対策の効果lこ関する研究

H9年度(2)
職場Iこおlナる歯の健康づく り対策の効果lこ関する研究
主任研究者 広島産業保健粒進センター所長 田連玄三
共同研究著 吉永文隆l),岩本義史2).奥田久徳い,坪田信孝い,鎗田圭一郎い,石井みどりり
1)広島大学医学部 2)広島大学歯学部 3)広島産業保健推進センター 4)広島県歯科医師会
楓6±5.4歳,未実施事業所は鱒1±5.3歳(いずれ
1 はじめに
歯と口の健康は,食生活を楽しみ,さわやかな口も
もMean±S.D,)であり,有意差は認められなかった。
とで豊かな人生を送るために重要である。さらに,歯
調査項目は健全歯数,未処置歯数,処置歯数,要橋緩
の健康づくりの推進は,快適な職場づくりと歯科医喪
欠損歯数,欠損補綴歯数及びCPITNとしたc CP
章の削減,労働能率の向上‡;つながる。しかし,生涯
ITNはAinamoら(1982)に準じて部分診査を行った。
l を通じた歯の健康づくりの中で,学校保健と老人保健
の狭間にある事業所従業員の歯科保健対策は十分とは
3 結 果
言いがたく,成人の歯は50歳を過ぎた頃から急激に喪
り 口腔状況
失することから,産業歯科保健の推進が必要である。
表1に示すとおり,実施事業所従業員の現在歯数は
昨年度我々は,県内の従業員数50人以上の全事業所
27.3本であったのに対して,未実施事業所では26.3本
2,156か所を対象としてアンケート謂査を実施し,歯
と有意に少ない値であった。また,実施事業所従業員
科便意痘始めとする歯科保健活動の実施率が非常に低
の要掃緩欠憤歯数は0.73本であったが,未実施事業所
いことを報告するとともに,事業所に対して歯科保健
では1.12本と有意に多く,要掃窃欠損歯を有する人の
の重要性と歯科保健活動の有用性を啓発する必要を示
割合は実施事業所が29.6%,未実施事業所では37.4タ‘
唆した。
と有意差が認められた。
本研究は.昨年度の調査結果を跨まえ,歯手斗保健活
実施事業所及び未実施事業所の従業員の歯周疾患の
動が従業員の口腔状況等に与える効果を検討すること
状況を図1に示した。実施事業所の健全である者の割
により,事業所の歯手斗保健に関する認識向上及び活動
合は9.9%であろのに対し,未実施事業所では1.7タも
支援の資料として活用することを目的とする。
と少なく,4mm以上のポケットを有する中等更以上の
歯周疾患(CPITNのコードの最大値が3以上)の者は
2 対象及び方法
実施事業所で53.4タ石,未実施事業所では63.0%と有意
差が認められた。即ち,未実施事業所の従業員の方が
平成9年に歯科健診を実施した県内の事業所20か所
(以下「実施事業所」)及び歯科健診を実施していな
実施事業所より歯周疾患治療必要度が有意に高く,歯
い事業所のうち,本研究に対する協力の了承を得た18
周疾患が進展していることが示唆された。
CPITNのコードが3以上の歯又は未処置歯又は要補
か所(以下「未実施事業所」)の合計38事業所を対象
とした。
綴欠損歯のいずれかを有する人を安治療者とした場合.
実施事業所における要治療者の割合は75.1%であるの
口腔状況の調査対象は40歳から59歳の男性従業員と
した。実施事業所の対象人数は453人,未実施事業所
に対し未実施事業所では飢.9%と有意に高率であっ
は2飢人であった。対象者の平均年齢は実施事業所が
た。
一53一
事後措置の実施状況について,従業員個々に対して治
2)歯科医療費
療勧奨の通知や指導をしている事業所が30タ名,掲示等
実施事業所20か所のうち,歯科犀診の実施により歯
科医療費(の割合)が減少したと回答したのは1か所
により勧奨している事業所が10%であったのに対し,
のみであり,10事業所は変わらないと回答し,3事業
治療勧奨を実施していない事業所は10か所と半数であ
所はむしろ増加したと回答していた。
ったことからこ 歯科健診の効果をより確実なものにす
るためにも治療勧奨の実施が望まれる。
4 考 察
2)歯科医療費
広島県歯科保健実態調査(平成7年)によると,50
り 口腔状況
歳代までの成人の4割以上が未処置歯を有しており,
本調査の結果より,歯科健診の夷施は従業員の健全
歯数,未処置歯数及び未処置歯保有者数には影響を示
CPImのコードの最大値が3以上の人は50歳代で55.7
さず,新規う蝕の予防効果は認められなかったが,歯
%となっている。このようにう蝕及び歯周疾患の有病
l
周疾患の進展予防等により歯の喪失を減少させ,現在
率が非常に高い現状にあっては,歯科健診の実施によ
歯の推持に寄与しているものと思われた。さらに,歯
り従業貫の受療行動が惹起され歯科医寮費がむしろ
手斗健診の実施で喪失歯が減少することに伴い,要補凝
増加する;とも予黎される。さらI羊,眉施事業呪未
欠損歯が減少し,良好な岨囁機能が保持されているこ
実施事業所ともに要治療者の割合が高く∴輝美員の歯
ともうかがわれた。また,未実施事業所の従業員の現
科受療率が低いことがうかがわれることから,t本調査
在歯の状況は平成5年歯科疾患実態調査(厚生省)・に
において歯科健診の実施が歯科医療費の削減に及ぼす
おける48歳男性の結果に近似して■いることから,本研
効果を明確にすることは困難と思われた。
究における未実施事裏所の従業員め口睦状由が当該年
齢層の国民の現状に相応し,実施事業所ではこれより
5 まとめ
良好な状況であるものと考えられた。さらに,歯科煙
歯科健診を実施している事業所20か所及び未実施芋
診を5年以上継続して実施中の事業所の従業員の⊥人
菜所18か所を対象として,従業員の口腔状況を調査し
平均現在歯数が高い値であったことから,継続実施の
た。その結果,歯寺斗偉診の実施により,G歯の喪失が
効果がうかがわれた。
減少する ②進展した歯周疾患が減少する 色要掃窟
欠損歯が減少することにより,従業員の良好な口腔状
しかし,歯科治療を要する人の割合は実施亭菓所,
未実施事業所ともに約8苦りであり,口腔状況のさらな
態が維持され 快適で活力ある織場づくりに寄与して
る改善が重要である。実施事菓所における歯科健診の
いることが示唆された。
/表1実施事業所及び未実施事業所の口腔状況
0
20
40
80 100(%)
60
実施(n=453) 未実施(n=281)
3
健 全 歯 致16.5± 6.4
16.0± 6.8
未処置歯数 1.2± 2.3
1.3± 2.5
処 置 歯 数 9.5± 5.5
9.0± 5.7
現在 歯 数 27.3±・■3.1→け−26.3± 4−9
要梼竃欠損歯数 0.73±1.51一斗ー1.12±2.48
縮 賃 歯 数 D.95±2.14
1.20±2.46
未実施
p<0.05,Yilcoxon’s rank test
O:健全1:出血 2:歯石 3:中等度 4二重安
Ⅱean±S.D.
国1 CPlTNのコードの最大値
*:pく0.05,‡*:P<0.01,unpaired いほSt
−54−
: 二
巨≡j≡