記述完成 Ⅱ はじめに── 本書は、 小学生の記 述力、ひいては国語力を 伸ばすために書 かれたものです。 記 述 力を つ け るた め に は 、 書く 「 こ つ 」を 習 得 し 、 ト レ ー ニ ングを重ねることが必要です。 「芸術は模倣から始まる」という 言 葉が あ る よ う に 、 正 し く 美 し い 日 本 語 を 書 く た め に は 、 お 手 本 と な る 文 ( 文 章 ) を 筆 写 す る こ と か ら 始 め 、 文を 作 る 上 で の さ ま ざ ま な き ま りを 学 び つ つ 、 自 分な り の 文 を 書 い て い く 訓 練 をしていかなければなりません。 本 書 で は 、 ト レ ー ニ ン グ A で 、 日 本 語 の 文を 構 築 す る た め の 基 礎訓 練 を 行 い 、 ト レ ー ニ ン グ B で 、 読 解 を ま じ え な が ら 自 ら が 文を 作 り 、 書 く 訓 練 を 行 い ま す 。ト レ ー ニ ン グ B で は 、 す ぐ れ た 作 家 の 名 文を 数 多 く の せ て お り 、 そ う し た 文 章 に ふ れ る こ とも 、 記 述 の上 達 に つ な が り ま す の で 、 じ っ く り と 読み こ ん で から問題にあたってください。 何 事も 積み 重 ねが 大 切 で す 。 一 歩 一 歩 、 着 実 に 訓 練 を 重 ね て いきましょう。 - 1 - 第1課 ■ トレーニングA ■ (学習日 一、次のことばを使って短文を作りなさい。 ① たぶん……だろう ② もし……たら 月 日) 会する いちどう 一堂に さまざまな ことに 自信を 書く 答えが くやしい ことが 代表者が 二 、 次 の こ と ば を 意 味 が 通 る よ う に な ら べ か え て 文を 作 り な さ 国の い。 (文末に「。 」をつけること。 ) ① な 書いた 慣れる まずは 持って ちがい ② 大切だ ③ - 3 - ■ トレーニングB ■ 一、次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。 ふ ゆうやみ にか 紫 色の夕闇がたちこめている。 むらさき 、わ 、の 、れ 、ん 、のむこうには、いつのま 振り返ってみると、な ポイント 「じゃ、ぼく、帰る。おじいちゃんは?」 せいげん ★字数制限がある場合、句点(。 )もふくめて字数内におさめるの たなばた わり 「わしか。そうだな。わしもそろそろ帰るとしようか。あ ささ ぼう はら 「おや、妙子さんとこの坊やだね?」 たえ こ て、出てきたおかみさんに 勘 定 を払った。 かんじょう おく 寅吉じいさんは、みこしを上げると、店の奥に声をかけ とらきち らな」 んまり油を売ってると、おたねさんにまた小言を食らうか は当然だが、最低でも指定字数の八割以上、理想は指定字数マイナ 題 ス五字以内で書きたい。 例 たんざく カ ン タ の 家 で 開 か れ た 今 年 の 七夕 パ ー テ ィ で 、 ふ た り は 願 ばら いを書いた短冊をちいさな笹の枝にさげた。ヨウジはカンタ ぼう し おかみさんは、ぼくをみるとそういった。妙子さんとい ぬ うのは、ぼくのお母さんのことだ。それで、ぼくは帽子を [ ] 脱いでおじぎをしたが、食堂にはいって、なんにも注文し 5 - 4 - の わ き 腹 を つ つ く 。な に を 書 い た の か 、 無 言 で き い て き た の である。カンタは短冊を返して見せた。 新しいマウンテンバイクがほしい ないで帰ってしまうのは悪いと思って、 「ぼく、おじいちゃんを捜してたんです。そしたら、ここ さが だが、カンタは自転車などはほんとうはどうでもよかった。 心 か ら の 願 い は 、 ヨ ウ ジみ た いに で は な く 、 ヨ ウ ジそ の も の にいたもんですから」 なが ぼくの顔をつくづくと眺めて、 (三浦哲郎『ユタとふしぎな仲間たち』 ) み うらてつ お も、東京育ちは色が白いんで、すぐわかったよ」 「そういえば、目のあたりが妙子さんに似てるかなあ。で に おかみさんは、べつにいやな顔もしないで、うなずくと、 「そうかい。それはよかったねえ」 と弁解した。 べんかい に な る こ と だ っ た 。 い く ら 親 友 で も そ ん な こ とを 書 い た ら 、 が まん 気もち悪いといわれるだろうと我慢していたのだ。 い ら (石田衣良『約束』 ) ( 問 い ) カ ン タが 短 冊 に 本心 の 願 いを 書か な か った のは な ぜ で すか 。二十字以内で答えなさい。 (解答例)ヨウジから気もち悪いといわれるから。 (十八字) といった。 10 15 20 問い しょうこ 5 線「ぼく は 帽 子を脱 い でおじぎを した 」 のは 、な ぜ せ なか 問い 線 「 ぼく は 、 が っか り し た 」 の は 、 な ぜ で す か 。 二 十五字以内で答えなさい。 - 5 - ですか。二十五字以内で答えなさい。 い ざ か や 二、次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。 ぼくは、がっかりした。初めて会った居酒屋のおかみさ みと んに、ひと目でぼくのことがわかったのは、ぼくもやっと ぎゃく 村の子どもの一人として認められてきた証拠だと思ってい たのに、これでは逆に、自分が相変わらずよそ者だと思わ ぼう れている証拠にしかならない。 とらきち 「なあに、そのうちに坊も黒うなるさ」 寅吉じいさんは、ぼくの背中にてのひらを当てて、そう いった。 「一年もすれば、きっと村の子どもたちと見分けがつかな くな るじゃろうよ」 (三浦哲郎『ユタとふしぎな仲間たち』 ) 10 第2課 ■ トレーニングA ■ (学習日 一、次のことばを使って短文を作りなさい。 ① まるで ② たとえ 月 日) ことに 森の 回った むかえが 歩き 店の 待つ 道に 食事で 二 、 次 の こ と ば を 意 味 が 通 る よ う に な ら べ か え て 文を 作 り な さ い。 (文末に「。 」をつけること。 ) 中で まよった 来るまで 中を ① ないので かんたんな すませた 時間が ② 花子は ③ した - 6 - ■ トレーニングB ■ 一、次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。 じいさんといっしょに、ヒョウタン屋を出たとたん、ぼ くはびっくりして、思わず立ち止まりそうになった。 やぐら まんまるで、赤くにごって、信じられないほどに大きな ぶ たい いっしゅん ぼくは 一 瞬 、 月が、道の行く手の、火の見櫓の横のところに、のっと出 ている。 うたが あれが月なのか? 本物の満月なのか? そう疑った。けれども、ここは学芸会の舞台ではない。自 てっとう とちゅう 5 問い 線「ここは学芸会の舞台ではない」という表現には、 たよ さ きゅうしき 5 「ぼく」 のどんな気 持ちが こめら れています か 。二十字 以 内で答えなさい。 二、次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。 じゅく 東京の月がゴルフボールだとすれば、この村の月は、ま るでよく熟した夏ミカンだと、ぼくは思った。みずみずし はし くて、てのひらにずっしりと重たい夏ミカンのようだ。じ かたむ っさい、その月の重みで、箸を二本立てたような旧式の火 やぐら はんしょう の見櫓が、いまにも 傾 きそうに頼りなくみえ、そのてっぺ んにぶらさがっている半鐘は、たった一つだけ咲き残った す スズランの花のように、ちっぽけにみえた。そうして、こ - 7 - 分の目がどうかしちゃったんじゃないかと思ったが、そん なこともない。 ぼくは、こんなに赤くて、大きな月をみるのは初めてだ こうあつせん った。東京の家の、ぼくの部屋の窓からみえた満月は、い つも高圧線の高い鉄塔の途中に、使い古したゴルフボール まど みたいに引っかかっていた。そうして、窓を開けてその月 なが み うらてつ お を眺めていると、きっと遠くから救急車のサイレンがきこ えてきたものであった。 (三浦哲郎『ユタとふしぎな仲間たち』 ) ひび こではいくら耳を澄ましたところで、救急車のサイレンな かえる んかきこえやしない。きこえるのは、遠い谷川の響きと、 蛙の合唱だけである。 ぼくは、東京の満月しかみたことがなかったから、満月 の夜に、といわれても、なにほどのことがあろうかと思っ 10 10 15 ていたが、この月をみて、自分の考えを改めないわけには (三浦哲郎『ユタとふしぎな仲間たち』 ) ── 線「自分の考えを改めないわけに はいかなか った」 いかなかった。 問い とあ りま す が 、 ど ん な 考えに 変 わ った ので す か 。 二十 五 字 以内で答えなさい。 - 8 -
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