記述完成 Ⅰ はじめに── 本書は、小学生の記述力、ひいては国語力を伸ばすために書 かれたものです。 記述力をつけるためには、書く「こつ」を習得し、トレーニ ングを重ねることが必要です。 「芸術は模倣から始まる」という 言葉があるように、正しく美しい日本語を書くためには、お手 本となる文(文章)を筆写することから始め、文を作る上での さまざまなきまりを学びつつ、自分なりの文を書いていく訓練 をしていかなければなりません。 本書では、トレーニングAで、日本語の文を構築するための 基礎訓練を行い、トレーニングBで、読解をまじえながら自ら が文を作り、書く訓練を行います。トレーニングBでは、すぐ れた作家の名文を数多くのせており、そうした文章にふれるこ とも、記述の上達につながりますので、じっくりと読みこんで から問題にあたってください。 何事も積み重ねが大切です。一歩一歩、着実に訓練を重ねて いきましょう。 - 1 - トレーニングA 第1課 ■ ■ (学習日 月 あらわ 日) 世の中とはよくしたもので、助けてくれる人が現れた。 太郎は、母の心配をよそに、毎日野球に明けくれている。 た ろう 一、次の文を筆写しなさい。(ますの一文字目から書くこと。) ① ② 太陽が 泣いた な わたしの 二、次のことばを意味が通るようにならべかえて文を作りなさ 雨が 父に ゆめは い。(文末に「。」をつけること。) なることだ 顔を 悲しくて 画家に ① 出した おこられたので やんで ② ③ - 3 - ■ トレーニングB ポイント ■ ★「どんなこと?」ときかれたら、 「……こと。 」と答える。 題 ★「……こと。」にうまくつながるよう、日本語に注意する。 例 きのう、私は母にしかられた。しかし、次の日の朝、私 は、そんなこともわすれて、元気に学校に行った。 問い 線「へんなこと」とは、どんなことですか。 二、次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。 や すけ いわし売りは、いわしのかごをつんだ車を道ばたにおい て、ぴかぴか光るいわしを、両手でつかんで、弥助の家の 中へもってはいりました。ごんは、そのすきに、かごの中 から五、六ぴきのいわしをつかみ出して、もときたほうへ 5 - 4 - 線「そんなこと」とは、どんなことですか。 (問い) 線「いいこと」とは、どんなことですか。 思いました。 問い (新美南吉『ごんぎつね』) は、うなぎのつぐないに、まずひとつ、いいことをしたと 戸のところで麦をといでいるのが小さく見えました。ごん ちゅうの坂の上でふりかえってみますと、兵十がまだ、井 わしをなげこんで、あなへむかってかけもどりました。と かけだしました。そして兵十の家のうら口から家の中へい 5 (解答例)きのう、母にしかられたこと。 一、次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。 つぎの日には、ごんは山で、くりをどっさりひろって、 へいじゅう それをかかえて、兵十の家へいきました。 うら口からのぞいてみますと、兵十は、昼めしをたべか けて、ちゃわんをもったまま、ぼんやりと考えこんでいま にい み なんきち した。へんなことには、兵十のほっぺたに、かすりきずが ついています。 (新美南吉『ごんぎつね』) 10 トレーニングA 第2課 ■ ■ (学習日 月 日) 日曜日の午後、私は一人、部屋でひまを持てあましていた。 母は、ことあるたびに、私が幼いころの話をする。 おさな 一、次の文を筆写しなさい。(ますの一文字目から書くこと。) ① ② 少なかった べんとう お弁当を 一通の 手紙が かべに 北海道に 時計は 人は 二、次のことばを意味が通るようにならべかえて文を作りなさ 持ってきた い。(文末に「。」をつけること。) ① 来た 二時を かけた 住む 指していた おじから ② ③ - 5 - ■ トレーニングB ■ 二、次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。 たく ゆめ ぼくは急に頭の中が氷のように冷たくなるのを気味悪く 思いながら、ふらふらとジムの卓の所に行って、半分夢の ようにそこのふたをあげて見ました。そこにはぼくが考え 一、次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。 天気は冬が来る前の秋によくあるように、空のおくのお ていたとおり、雑記帳やえんぴつ箱とまじって、見覚えの ざっきちょう くまで見すかされそうに晴れわたった日でした。ぼくたち ある絵の具箱がしまってありました。なんのためだか知ら ようこう は先生といっしょに弁当をたべましたが、その楽しみな弁 あい ないがぼくはあっちこっちをむやみに見回してから、手早 くその箱のふたをあけて藍と洋紅の二色を取り上げるが早 いか、ポケットの中におしこみました。そして急いでいつ 日の空とはうらはらに暗かったのです。ぼくは自分一人考 えこんでいました。だれかが気がついて見たら、顔もきっ も整列して先生を待っている所に走っていきました。 5 線「ぼくのしたこと」とは、どんなことですか。 (有島武郎『一房の葡萄』) ような安心したような心持ちでいました。 したことをだれも気のついた様子がないので、気味が悪い っちの方をふり向くことができませんでした。でもぼくの いるか見たくってたまらなかったけれども、どうしてもそ いめいの席にすわりました。ぼくはジムがどんな顔をして ぼくたちはわかい女の先生に連れられて教場にはいりめ と青かったかもしれません。ぼくはジムの絵の具がほしく むね ぶどう 問い - 6 - ってほしくってたまらなくなってしまったのです。胸がい たむほどほしくなってしまったのです。ジムはぼくの胸の 中で考えていることを知っているにちがいないと思って、 せい と そっとその顔を見ると、ジムはなんにも知らないように、 わら ひとふさ おもしろそうに笑ったりして、わきにすわっている生徒と ありしまたけ お (有島武郎『一房の葡萄』) 線「ぼくの胸の中で考えていること」とは、どんな 話をしているのです。 問い ことですか。 10 15 当の最中でも、ぼくの心はなんだか落ち着かないで、その 5 10
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