持続性心室頻拍:sustained ventricular tachycardia(130718)

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持続性心室頻拍:sustained ventricular tachycardia(130718)
研修医が持続性 VT の患者のコンサルトを依頼したら、血行動態が安定しているなら、そんなに
急いでコンサルトしなくてもよいと言われたことがあるとのこと。どんな VT なら重要度が増すのか。
これを機会に、VT の基本的な部分を復習してみようと思う。
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ヒス束の分岐部以下を起源とする wide QRS 頻拍で、30 秒以上持続するか、それ以内でも停
止処置を必要とする心室頻拍と定義される。1)

持続性心室頻拍は不整脈による突然死の主因で、突然出現する。頻拍レートが 200 拍/分を
超えると高率に失神を来たす。1)

持続性心室頻拍の基礎疾患は心筋梗塞、心筋症、催不整脈性右室心筋症、心臓手術後(フ
ァロー四徴症、大血管転位など)、原因不明のものなど多彩である。抗不整脈薬の催不整脈
作用による例もある。1)
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このタイプ(持続性単形性心室頻拍)に属する代表的な心室頻拍は、①瘢痕関連性心室頻
拍、②特発性持続性心室頻拍、③脚間リエントリー性頻拍、である。瘢痕関連性心室頻拍を
起こす原因心疾患としては、陳旧性心筋梗塞(慢性虚血性心疾患、拡張型心筋症、不整脈
源性右室心筋症(不整脈源性右室異形成)、二次性心筋症(サルコイドーシスなど)、弁膜症、
先天性心疾患、心臓手術後等がある。このうち欧米では陳旧性心筋梗塞に伴う場合が 90%
以上と最も多い。特発性持続性心室頻拍は明らかな心疾患を認めない患者で起こる心室頻
拍で、日本や東南アジア諸国に多い。特発性のうち自然停止しない持続性心室頻拍は左室
起源のベラバミル感受性心室頻拍が多い。2)

ほとんどの心室頻拍患者は深刻な心疾患、特に心筋梗塞の既往または心筋症を有する。電
解質異常(特に低カリウム血症または低マグネシウム血症)、酸血症、低酸素血症、および
薬物の副作用が一因となる。QT 延長症候群(先天性または後天性)は、心室頻拍の特殊型
であるトルサードドポアンツと関連している。3)
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Ca チャネル遮断薬のベラパミル( 静注) が奏功することが多い。Na チャネル遮断薬(プロカ
インアミドなど)で徐拍化または停止が得られる例もある。ただし、特発性と診断できない場
合はベラパミルは禁忌である。1)

持続性心室頻拍は院外で突然発症し、救急外来に到着時に診断されるものがほとんどを占
める。治療はまず停止を行う。意識障害のある例や血行動態の不安定な例では、直流通電
(DC ショック)を行う。直流通電後も単形性心室頻拍が再発する場合は、アミオダロン、ニフェ
カラントまたはリドカインの静注後、再度 DC ショックを行う。1)
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血行動態がある程度安定している場合には薬物治療を行う。心電図のモニターを行いなが
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ら静脈内投与し、投与中は頻拍が停止するまで血圧、徐拍効果および QRS 幅の延長などに
注意する。薬剤投与で血行動態が悪化した場合は直流通電を行う。1)

頻拍の停止:血行動態が不安定な場合は直流通電が第一選択となる。また、頻回に再発す
る心室頻拍に対しては有効薬剤が決まるまで心室ペーシングを用いて停止させる方法も有
用である。一方、心室頻拍の停止薬としては、Vaughan-Williams 分類のⅠ群薬またはⅢ群
薬が有効である。Ⅰ群の中では、Ⅰa 群の薬剤(プロカインアミド、ジソピラミドなど)がⅠb 群
のリドカインに比べて有効の場合が多い。また、特発性心室頻拍の場合はⅣ群のベラバミル
が著効する。なお、Ⅲ群薬では、アミオダロンが最も有効であるが、本邦ではニフェカラントの
静注も使用される。2)
(参考文献 2 より引用)

頻拍の停止:基礎心疾患がある場合(不明の場合も含む):第一選択薬としてアミオダロンま
たはニフェカラントを静注する。プロカインアミドの静注も有効である。アミオダロン、ニフェカ
ラント、プロカインアミドが使えない場合や心筋梗塞急性期の心室頻拍ではリドカインも選択
される。1)
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(参考文献 1 より引用)
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急性期:治療は心室頻拍の症状および持続時間によって異なる。低血圧性心室頻拍には、
100 ジュール以上の同期式直流カルジオバージョンが必要である。安定した持続性心室頻拍
は静注薬物で治療でき、通常はリドカインが使用されるが、リドカインは迅速に作用するもの
のしばしば無効である。もしリドカインが無効であればプロカインアミドを静注するが、これは
作用発現までに最大 1 時間を要する。プロカインアミド静注が無効であれば、カルジオバージ
ョンの適応となる。3)

再発予防:基礎心疾患がある場合(不明の場合も含む):血行動態が不安定な持続性心室頻
拍では ICD が選択される。血行動態の安定した心室頻拍であっても、基礎心疾患がある場
合には長期予後は不良であることから ICD が勧められる。薬物治療は、何らかの理由で ICD
の植込みできない場合と、ICD 植込み例で心室頻拍の再発と作動を減少させるために行わ
れる。心室頻拍の停止効果を示しても、その薬剤が再発予防効果を有するとは限らない。薬
物としては、アミオダロンまたはソタロールが多く用いられる。ベプリジルや、β遮断薬が選
択されることもある。アミオダロンは電気生理学的検査の評価なしで用いられることが多い。
1)
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(参考文献 1 より引用)
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再発予防:薬物治療:瘢痕関連性の場合は、薬剤が長期的に有効である患者の割合は 3~
4 割前後である。2)

心室頻拍の不整脈基質(伝導遅延部位、チャネル)を破壊する手術療法は根治的治療法、
頻拍性不整脈の治療法として確立しているが、最近はカテーテルアブレーションが施行され
るようになった。2)

長期:主要な目標は、単なる不整脈の抑制よりはむしろ突然死の予防にある。これを達成す
るためには、植え込み型除細動器(ICD)の使用が最適である。しかしながら、どの患者を治
療するかという決定は複雑で、生命を脅かす心室頻拍が発生すると推定される可能性およ
び基礎心疾患の重症度に基づいて行われる。心室頻拍の初発エピソードが一過性の原因
(例、MI の発症から 48 時間以内)または可逆的な原因(酸-塩基障害、電解質異常、薬物の
催不整脈作用)に起因するときは長期治療は必要ない。一過性の原因も可逆的な原因も認
められない場合、持続性心室頻拍のエピソードを経験した患者には通常 ICD が必要である。
持続性心室頻拍および深刻な構造的心疾患を有する患者のほとんどは、β遮断薬の投与も
受けるべきである。もし ICD を使用できなければ、アミオダロンが突然死予防の目的で抗不
整脈薬として選択される場合がある。構造的心疾患患者では非持続性心室頻拍は突然死の
リスク上昇の指標であるため、このような患者(特に、駆出率 0.35 未満の患者)ではさらに評
価が必要である。新たなデータは、このような患者には ICD を使用するべきであると示唆して
いる。心室頻拍の予防が重要であるとき(通常、ICD を使用しており頻回の心室頻拍エピソー
ドを呈している患者において)は、抗不整脈薬、または不整脈源性基質の経カテーテル高周
波アブレーションや外科的アブレーションが必要である。Ⅰa、Ⅰb、Ⅰc、Ⅱ、またはⅢ群の薬
物のいずれもが用いられる。β遮断薬は安全なので、禁忌でなければこれが第 1 選択である。
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もし薬物を追加する必要があれば、ソタロール、次いでアミオダロンが一般的に用いられる。
3)
多くの医療機関では、人手不足なのにもかかわらず、数多くの緊急の対応をこなしている。血行
動態に問題が無い VT 患者の緊急度も相対的に決まるわけで、その場の対応が良いとか悪いと
かの判断は難しい。VT の患者を診察して、指導医に相談するのも別に間違った判断ともいえない
し、指導医はより深刻な患者の問題に対応していた可能性だってある。個人的な経験から考える
と、トラブルと感じた時には患者の緊急度の問題というより、コミュニケーションの問題であったり、
自分の勉強不足による問題の部分の方が大きかったような気がする。
日本の医療問題はすぐには変えられないが、自分の医療については、日々の勉強ですぐに変
えられるところは多い。普段のコミュニケーションも、頑張ればそれなりに何とかなる可能性が高
い(と信じたい)。できるところからコツコツ積み上げていきたい。
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参考文献
1.
児玉逸雄ら. 不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009 年改訂版).日本循環器学会ホーム
ページ. http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf
2.
大江透, 伴場主一, 大河啓介, 佐野文彦, 大原美奈子, 外山裕子.専門医から学ぶ不整脈
の臨床 心室頻拍の診断と治療.日本臨床麻酔学会誌 32(1): 8-17, 2012.
3.
心室頻拍.メルクマニュアル
http://merckmanual.jp/mmpej/sec07/ch075/ch075k.html?qt=%E5%BF%83%E5%AE%A4 %E9%A
0%BB %E6%8B%8D %E5%BF%83%E5%AE%A4 %E9%A0%BB %E6%8B%8D &alt=sh
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