水素フリーDLC 膜の膜密度の評価

水素フリーDLC 膜の膜密度の評価
石川県工業試験場 安井治之,鷹合滋樹
自動車部品,工具部品等には低摩擦係数,耐
剥離性,表面平滑性,高寿命化が要求されます.
また,低摩擦によるエネルギーの低減を考慮し
たモノづくりが不可欠です.これらに対応する
ためには,これまでの DLC 膜のさらなる高密度
化と高硬度化を追求した膜の開発が要求されま
す.我々は,このような課題に対して,アーク
イオンプレーティング装置による高密度 DLC 膜
の試作を行ってきました.そこで,中性子反射
法を用いて DLC 表面の密度の評価を行いました.
DLC 皮膜(Diamond-Like-Carbon)とはダイヤモ
ンド構造(SP3 結合)とグラファイト構造(SP2 結
合)が混在した結晶粒界のないアモルファス(非
晶質)構造の膜のことを指します.
JRR-3 の中性子反射率計「SUIREN」を利用して薄
膜の構造解析(臨界角度,密度等)を行いました.
図 1 に反射率法により DLC 膜構造を測定すると
きの中性子光学系を示します.図 2 には DLC フ
リー膜構造における反射率の測定結果を示しま
す.また,表 1 には全反射の膜密度の評価結果
を示します.これらの結果,一般に多く利用さ
れている DLC 膜に対して水素フリーDLC 膜は密度
が高いことが明らかとなりました.また,中性
子反射率測定が薄膜密度評価に非常に有効であ
ることも分かりました.
試料膜
θin
θout
Qz
基板(シリコン)
図 1 DLC 膜の中性子経路
(a)水素フリーDLC 膜 2 (b)水素フリーDLC 膜 3
図 2 DLC 膜における反射率の測定結果
(縦軸:反射率、横軸:走査角度[Q]
表 1 中性子反射率法による DLC 膜の全反射
密度測定結果
試 料
膜密度(g/cm3)
DLC膜
1.95
水素フリーDLC膜1
2.85
水素フリーDLC膜2
2.45
水素フリーDLC膜3
3.19