室温硬化インプリントによる DLC ナノエミッタの作製

室温硬化インプリントによる DLC ナノエミッタの作製
吉田 捷吾(7420)
指導教員:清原 修二 准教授
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はじめに
こ れ ま で に 本 研 究 で 開 発 し た PDMS
(Polydimethylsiloxane)[SIM-360,信越化学工業㈱]を材料
とした凹形状 PDMS モールドを用いた室温硬化ナノイン
プ リ ン ト リ ソ グ ラ フ ィ ( Room-temperature
Curing-Nanoimprint Lithography:RTC-NIL)では高精度に
DLC のナノパターンを形成できることがわかっている 1)。
しかし,SIM-360 を材料とした PDMS モールドは高価であ
り,PDMS モールドとしての寿命が短いという欠点があっ
た。そこで,安価で同様の性質を持つ KE-106 をモールド
の材料として提案した。本研究では KE-106 で SIM-360 と
同様の高精度な転写パターンを得られるか検討し,DLC
の超微細加工を行った。この手法を用いてフラットパネル
ディスプレイ用ナノエミッタの作製を目指す。
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図2
実験方法および装置
RTC-NIL によるポリシロキサンの転写パターン
本研究で開発したポリシロキサン[HSG-R7-13,日立化成
工 業 ㈱ ] を 転 写 材 料 に 用 い た 凹 形 状 PDMS モ ー ル ド
RTC-NIL による凸形状 DLC ドットアレイの作製プロセス
を図 1 に示す.シリコンウエハ(10 mm 角,0.5 mm 厚)
上に T 字状フィルタードアーク蒸着法で作製した DLC 膜
(ta-C,10 mm 角,500 nm 厚,表面粗さ Ra 2 nm)上に,
膜厚 500 nm が得られるように,ポリシロキサンを回転塗
布し,本研究で作製した凹形状 5 µm 径ドットの PDMS[主
剤:KE-106,硬化剤:CAT-RG,信越化学工業㈱]モールドを
押しつけ,ポリシロキサン膜上にモールドパターンを転写
した。次に,モールドを離型し ECR CHF3 イオンシャワー
加工で残膜層を除去後,ECR O2 イオンシャワー加工する
ことで DLC ドットアレイパターンを形成した。
図 3 作製した凸形状 DLC ドットアレイパターン
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おわりに
本研究で作製した KE-106 を材料とした PDMS モールド
を用い,高精度なポリシロキサンの転写パターンを得るこ
とができた。これを ECR イオンシャワー加工することで
高精度な凸形状の DLC ドットアレイパターンを形成でき
た。今後はナノサイズの凸形状で先鋭化した DLC ドット
アレイパターンの作製を目指す。
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図1
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凸形状 DLC ドットアレイの作製プロセス
新規性・特許性
PDMS モールドを用いた RTC-NIL 法による DLC 微細加
工プロセスに新規性があり,PDMS モールドを用いた
RTC-NIL 法による機能性マイクロ・ナノデバイスの作製に
特許性がある。
実験結果
本研究で作製した KE-106 を材料とした PDMS モールド
によるポリシロキサンの転写パターンを図 2(a)に示し ,
SIM-360 のそれを図 2(b)に示す。KE-106 で同様の高精度
な転写パターンを得ることができた。この結果から作製し
たポリシロキサンの凸形状ドットアレイを ECR CHF3 イ
オンシャワー加工(3 min,300 eV)で残膜層を除去後,ECR
O2 イオンシャワー加工(12 min,400 eV)することで作製し
た DLC 微細パターンを図 3 に示す。
高精度な凸形状の DLC
ドットアレイパターンを得ることができた。
参考文献
1)
吉田捷吾,清原修二,石川一平,他:2014 年度精密
工学会関西地方定期学術講演会,pp.46-47 (2014)
謝辞
本研究の一部は,日本学術振興会 科学研究費 基盤研究
(A)および豊橋技術科学大学高専連携教育研究プロジェ
クトにより行われたことを付記する。