CONTENTS (概要)

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FRONTIER
NO.86 2015 WINTER
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レート依存シームカービングを用いた content-aware 画像符号化
田中 雄一 東京農工大学大学院 生物システム応用科学府 准教授
本研究では、ビットレート依存シームカービングを用いた content-aware 画像符号化
を提案する。Content-aware 画像符号化とは、コンテンツ考慮型画像拡縮、もしくはリ
ターゲティングと呼ばれる画像サイズ変更手法を画像符号化(圧縮)と統合する試みで
ある。本研究では特に、シームカービングと呼ばれるコンテンツ考慮型画像拡縮手法に
着目し、復号側へ伝送するサイド情報の削減およびウェーブレット変換に基づく画像符
号化手法との融合を図った。結果として、従来符号化手法と比較し、ビットレート増加
を 10%程度に抑制しながら、コンテンツ考慮型画像拡縮が実現可能となった。
光カー効果によるオンチップ型光スイッチの開発
田邉 孝純 慶應義塾大学 理工学部電子工学科 准教授
本研究では、全光信号処理回路の究極的な低電力化と高速化を実現するための基礎検
討として、シリカ材料による微小光共振器を用いて光カー効果を利用した光スイッチ及
び光双安定素子の実現を目指した。シリカはバンドギャップが広いので、従来の半導体
材料では利用が難しかった光カー効果を利用できる。光カー効果は光子の吸収を伴わな
いので、低挿入損失素子の実現が期待される。また、シリカは良好な光学材料であるこ
とも、低挿入損失素子の実現に貢献する。我々は、光スイッチにおいて理想とされる、
光カー効果を用いたときに、どこまで低エネルギー化できるかという課題に取り組み、
シリカ微小光共振器を用いて、オンチップで動作する光変調器としては世界最小パワー
である、36 μW を実現できることを示した。さらに、同じ素子を用いて、光論理回路
との基本構成素子として知られる光双安定素子も実現できることを理論的に示した。光
信号処理が実現すれば、一度電気に変換してから処理していた信号処理を、全光で行え
るようになり、光伝送・光信号処理システムの低エネルギー化につながることが期待さ
れる。
ヒストグラム特徴量を用いた類似画像検索手法の開発
陳 キュウ 工学院大学 准教授
大量の画像を蓄積した画像データベースからいかに効率的に画像を検索、管理するこ
とが画像処理研究分野にて最も解決すべき課題になっている。内容に基づく画像検索
(Content-based Image retrieval)が最も注目されている技術であるが、特徴量の抽出、
検索精度、検索効率の向上などが課題となっているため、まだ実用化に至っていない。
本研究では、実空間及び周波数空間におけるロバスト性の高い画像ヒストグラム特徴量
を抽出し、組み合わせることにより特徴ベクトルを生成し、データベースの画像中から、
「似ている画像」を的確に検索できる画像検索手法を提案し、従来手法より高い検索精
度を実現した。
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NO.86 2015 WINTER
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シリコンナノ粒子を分散させた炭素系新規半導体薄膜の作製と評価
中澤 日出樹 弘前大学大学院 理工学研究科 准教授
本研究では、プラズマ化学気相成長(CVD)法およびレーザーアブレーション法を用
いて、シリコン(Si)ナノ粒子の粒径制御技術の開発を行った。また、プラズマ CVD
法を用いて作製した窒素添加ダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜の電気的特性
を調べた。Si 源ガスの間欠供給のパラメータ等を制御することで Si 微粒子の粒径や密
度を制御することを目的とした。Si 源ガスを間欠供給することで微粒子の粒径は減少
し、DLC 薄膜中に粒径が約 30 nm の球状微粒子が形成されることがわかった。Si 源ガ
スおよび水素ガスを交互に間欠供給して作製した DLC 薄膜上には高さが約 24 nm のナ
ノ粒子が形成された。また、Si ターゲットのレーザーアブレーションにより DLC 薄膜
上に高さ約 2 nm のナノ粒子が形成されることがわかった。DLC 薄膜の伝導型を制御
するために DLC 薄膜への窒素ドーピングを行った結果、窒素ドーピングにより比抵抗
が大幅に減少することがわかった。
非磁性体を用いた強磁性体細線中の磁壁移動の検出
守谷 頼 東京大学 生産技術研究所 助教
強磁性体内には異なる磁気モーメントの方向を持った磁気ドメインが存在する。この
磁気ドメイン間の境界面は磁壁と呼ばれる。磁壁の幅は、材料にもよるが 10〜100 ナ
ノメートル程度であり非常に小さい。最近この様な磁壁を情報の記憶素子として活用し、
不揮発メモリとして用いる研究が注目を集めている。磁性体は情報の保持期間が非常に
長いという特徴を持ち、さらに上述のように磁壁は非常に小さいため高密度の情報記録
に適している。このような磁壁を用いた不揮発メモリへの実現のためには、磁壁への情
報の書き込み、読み出し方法の確立が重要である。本研究では、磁壁の読み出す方法の
確立を目指し、その手法として磁性体を一切使わない非磁性体を用いた磁壁の検出に関
しての実験を行った。異方性磁気抵抗効果を用いることにより、非磁性電極を用いてナ
ノ秒の時間分解能で磁壁の運動を観測することに成功した。
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